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マルコ×連載ヒロイン 犯人は誰?*
「あ゛〜〜〜〜!!!!!マルコのバカッ!」

明日は11月1日。わんわんわんで犬の日。

なので、今日犬達のためにおからで作った犬用クッキーを作った。
こちらの世界でおからは無く、大豆を水で戻す所から作り、結構手間のかかる作業だった。
一から作ったため結構時間が掛かり、作り終わった時には今夜のハロウィンの宴の準備を始めなければならない時間になっていた。そのため、私は急いで焼き上がったクッキーを部屋に置いてから食堂へ戻り、キッチンを貸して貰ったお礼にサッチ達のお手伝いをしていた。

もうすぐ宴が始まるから菜真絵ちゃんも着替て来なというサッチの言葉に甘えて、部屋に戻った。
ドアを開けるとマルコが居て、クッキーが乗っていたお皿は空になっていた。

それで、さっきの叫びに戻る。

「何の事だよい?」

「お皿の上のクッキー食べた?」

「ああ、さっき来たらいい匂いがしたから1枚貰ったよい。甘さ控えめで美味かったよい。」

犬用と言っても砂糖が入ってないだけなので、人が食べても身体にいい。

「一枚って?他のは?」

「俺が食べた時はたくさん残ってたよい。」

「マルコ、本読みながら無意識で摘んじゃったんじゃないの?エースみたいな事しないで。」

豆を水で戻してから茹でて、すり鉢で潰した苦労から、食べられてしまった悔しさがじわりじわりと怒りに変わる。

「エースと一緒にすんじゃねぇよい!オレは1つ味見しただけだよい。今日のハロウィンの菓子だろい?一つ食ったくらいで怒るなよい。」

「なんで一つしか食べてないのに全部なくなってるの!私の部屋に勝手に入るのってマルコくらいじゃん!」

「俺は知らねぇよい!」

「もういい!着替えるから出てって!」

「話聞けよい!オレとエースを一緒にすんじゃねぇよい!」

バシッ!っとマルコ用に今日のために用意しておいた衣装を投げつけて、部屋からマルコを追い出した。

(はぁ………、犬用クッキー……。)

ちゃんと骨の形にしたり、名前の焦げ目をつけたり、犬達が褒めてくれるわけじゃないけど、美味しそうに食べてくれる姿を想像しながら一生懸命作ったものだった。

ハロウィンの衣装はマルコはドラキュラ風のタキシードとマント。私はそれに合わせて黒猫とも狼とも取れる衣装を用意していた。

でも、どうしても着る気になれなくて…。
コスプレなら何でも有りという条件だったので、自分の持っている服を引っ張り出し、某シリーズRPGのヒロインに似た、普段の自分では絶対にしない服装、白の短いタンクトップに黒のミニスカート、それをサスペンダーで吊り、黒のベルトを付けた。靴はスニーカーを履き、手甲は無いのでそこは省略。髪を毛先で縛れば、まあ、似合ってないけど出来上がり。

(ここが寒くない海域でよかった…。)

今はマルコの顔を見たくなかったので、避けるように部屋を出て、甲板へ走った。

甲板へ出ると、クルー達の目が一斉に私を見る。

(えっ?やっぱり変だった?)

「菜真絵ちゃん!?すげぇな…その格好…。」

いち早く私を見つけたサッチが近づいてきて、私の姿を頭から足まで見渡す。サッチはハルタくんみたいな王子ルックだ。

「あはは…。似合ってないよね。」

「いやいやいや!すげぇ〜かわいいっ!!」

手をぶんぶんと振って否定し、満面の笑みで褒めてくれるサッチ。

「けど、よくマルコがその格好を許したな?」

「え?マルコなんて知らない!」

「は?……マルコへのサプライズってことか?」

私とマルコが喧嘩をした事を知らないサッチは意味の分からない事を聞いて来た。

「違うよ。本当はマルコの衣装と合う衣装を用意したんだけど、さっき喧嘩になって…、それで…。」

「…そっか。菜真絵ちゃんとマルコが喧嘩なんて珍しいな?なんかあったのか?」

さっきまでの笑顔が消え、心配そうな顔をするサッチ。
せっかく楽しい宴が始まるのに、そんな顔をさせてしまって申し訳なくなってくる。

「そんな大したことじゃないから心配しないで。たぶん、マルコやサッチからすれば、何でそんなことで?って思う内容だから。」

「それでも話してみれば菜真絵ちゃんが楽になれるかもしれねぇじゃねぇか。サッチお兄さんに話してみなさい!」

ニカッ!っと笑って話を促す。

「……今日、キッチンを借りて犬用クッキーを作ったでしょ?それを部屋に置いておいたらマルコに食べられちゃって。マルコは一枚しか食べてないって言ってるんだけど、私の部屋に勝手に入るのはマルコくらいだし…。それにマルコって本を読み始めると無意識でお酒のおつまみ完食したりするから、今回もマルコが全部食べちゃったんだと思う。たぶん。それでも、いつもの普通のお菓子なら許せるんだけど、おから作るのにすり鉢で擂ったり結構手間が掛かったから、なんかイラっとしちゃって……。」

理由を一気に話せば、サッチはうんうんと頷いて聞いてくれていた。

「分かるぜ、俺も。手間暇かけて作った物をつまみ食いされるとすげぇ〜ムカつくよな!それも、勝手に完食されれば、怒って当たり前だぜ。俺だって、いつもエースと戦ってるからな!」

思ったよりも親身に話を聞いてくれるサッチに驚く。

「よぉ!二人ともスゲェ格好してるな!」

サッチと話していれば、エースが手を振りながらやってきた。エースの格好は、いつものハーフパンツに黒の犬耳と尻尾を付けただけ。それでも充分に犬に見えてしまうのは、エースの人懐こさが成せる業か。

「エースは似合ってるね?」

「サンキュ。菜真絵も似合ってっけど、よくマルコが許したな?それ。」

(またマルコ……。)

「まぁ、うん。マルコは関係ないけどね。」

「エースはまんま犬だな。どうせなら明日もその格好しとけ。明日は犬の日だからいい事あるかも知れねぇぜ?」

サッチがマルコの話題から変えようとしてくれる。

「へぇ〜。そういやさっき、菜真絵の部屋にあったクッキーも骨の形してたな。」

「……え?」

なぜエースがクッキーのことを知ってるのか?

「いや、菜真絵の部屋の前通ったらすげぇいい匂いがしてよ。腹減ってたから食っちまった。悪ぃ。でも、菜真絵砂糖忘れてたぞ?」

「……は?…エース食べたの?」

「ああ、甘くねぇから失敗作だと思って、全部食っておいてやったぜ!」

ニカッ!っとまるでいいことをしてやっただろ?と言わんばかりの笑顔を見せるエース。

「お前の所為かよいっ!」

―――――ゲシッ!

「ぐぇっ!!」

どこで聞いていたのか、いきなりマルコが現れ、エースがお尻から蹴り倒された。
マルコはエースの背中は蹴らない。オヤジ様が“居る”から。
甲板に沈んだエースとまだエースに足を乗せたままのマルコ。

「エース!お前の所為で菜真絵としなくていい喧嘩をして、楽しいはずのハロウィンを楽しめてねぇんだよい!つまみ食いをした罰として今日これから明後日の朝までメシ抜きだよい!サッチ!エースの部屋から今日貰った菓子類を全部没収しておけよい!」

マルコから蒼い炎と黒いオーラが膨れ上がり、ドラキュラの衣装も相まって、迫力はいつも以上だ。

「は?マルコ、つまみ食いは悪かったって!でもそれ以外意味が分からねぇよ!」

「していいつまみ食いと、してはいけないつまみ食いがあるってことだよいっ!」

不死鳥化した右手で倒れたままのエースの頭をベシッ!っと叩く。

「いや、つまみ食いはどんなのでもダメだけどな……。」

激昂して言ってる事が少々ずれてるマルコに、そっとツッコミを入れるサッチ。

「サッチ!」

「はいっ!」

マルコの勢いにピシッ!と姿勢を正して返事をする。

「エースをマストにでも吊る下げとけよい。エース、タロットの『吊るされる男』の仮装だとでも思って大人しく吊るされろい!」

マルコに言われるままエースを引き摺っていくサッチ。

(触らぬマルコに祟りなし?)



その場には私とマルコだけが残され、非常に気まずい。

「あの、マルコ……ごめんなさい!」

謝って思いっきり頭を下げる。

「それはどれに対する“ごめんなさい”だよい?疑った事かい?エースと同列にした事かい?俺に見せねぇでそんな格好してることかい?」

「それは…「ごめんなさい一つじゃ許せないよい。俺に内緒でそんな格好して、クルー達の目が釘付けになってるじゃねぇかよい。俺以外を誘惑して、浮気でもするつもりだったのかい?」」

私の言葉を遮って話し出し、私を横抱きにして船内へずんずんと進むマルコ。

「浮気なんて考えてないよ!ただ、…喧嘩して、マルコの服と合うものを着たくなくて、適当にしたコスプレだし。似合ってないのは自分でもよく分かってるよ。」

「菜真絵は本当に自分の事を分かってないねい。だから俺は菜真絵から目が離せないんだよい。」

「マルコだって自分のこと分かって無いじゃん。私が浮気なんて考えられない程かっこいいのに、過保護だし。」

いつの間に部屋に戻ったのか、ベッドにトサッっと寝かせられ、すぐにマルコが圧し掛かってくる。


「何で俺達は喧嘩腰で愛を語ってるんだい?」

きっちりと締めてあった黒のネクタイを片手で緩めるように外し、マントとスーツの上着をベッド下へ脱ぎ棄てるマルコ。

「俺以外を誘惑する様な格好をした罰だよい。今夜は泣いても寝ても止めないよい。」

覚悟しろい。と言って唇を合わせてきて、マルコの手は私の身体をまさぐリ始めた。

「…んっ……はぁ…、だから、誤解して怒ったのはごめんって……んんっ…!」

「俺も、一つつまみ食いした事は悪かったよい。でも、この服装は許さないよい。あいつ等が菜真絵のこの胸をどんな目で見てたか知ってるのかい?この肌を触りたそうにしてたのは分かってるのかい?」

胸を鷲掴み、脇腹を撫で、足へ伸びるマルコの温かくて大きな手。




私は朝までその手に翻弄され続けた。






翌朝、寝不足でふらつく頭を起こそうと甲板へ出れば、マストに逆さに吊るされたまま気持ちよさそうに寝こけるエース。

(………………。)

「海炎!」


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紫乃様

リクエストありがとうございました!
連載ヒロインとマルコが喧嘩し仲直りするということでしたが、気に入って頂けたでしょうか?
この二人、何をしてもなかなか喧嘩にならなそうだったので、喧嘩させることが大変でした。
甘さ控えめですみません。

瑛冬


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