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マルコ×連載ヒロイン 花火大会
今回着いた島はワノ国と交易があるらしく、和風の服や小物を売るお店が多かった。
今日は上陸して2日目。
モビーの買い出し当番になっていなかった私とマルコ、サッチ、イゾウさん、ビスタさんが一緒に散策をしている。
なぜこんなに集団で動いているかと言うと、この島では『誘拐婚』なる風習があって、独身の男性は普通に街を歩いている女性を誘拐して自分と結婚させてしまうらしい。
元々男性の出生率が高かったらしいこの島特有の風習で、それが罷り通ってしまうのだそうだ。
なので、今日はガードが堅く、船を出る時もマルコと散々「(街へ)行きたい!」「ダメだよい」の問答をした。
エースは昨日、早速食い逃げをやらかした所為で今日はマストに吊るされている。
「へぇ〜、ヒバナ島で半月後に花火大会があるらしいねぇ。」
着物や反物を売る店の店先に張られたポスターを見て、イゾウさんがつぶやいた。
「ヒバナ島って言ったらここの近くだったよな?」
「ははっ!そこに永久指針まで売ってら。」
ビスタさんが思い出す様に髭を撫でれば、サッチが指差した先には確かにヒバナ島と書かれた永久指針。
「花火大会か。オヤジも喜びそうだねい?」
「菜真絵が前に話してたように、浴衣も風流でいいんじゃないかい?」
「みんなで浴衣着て花火見たいね!」
まだモビーに来た頃に、向こうでマルコと花火を見た話と、いつかみんなと花火を見たいと言ったことを覚えていてくれたらしいイゾウさん。
「イゾウ、半月で全員分の浴衣は作れるかよい?」
「ああ、縫うのに各隊から手先の器用な奴20人くらい集められれば作れねぇこともねぇな。」
マルコが確認すれば即答する。
それを聞いたマルコは顎に手を当てて暫し考え、決めた様に顔を上げる。
「よし!この辺の店の反物と必要な小物を買い占めて行くよい!」
その一言でヒバナ島行きがほぼ決まり、ヒバナ島の永久指針を買い、数軒の店で買い占め、モビーへ届けて貰った。
モビーへ反物の山が運び込まれると、クルー達は大騒ぎになっていたけれど、オヤジ様の愉しそうな笑い声一つで、次の行き先はヒバナ島、それまでに全員分の浴衣を作ることが確定した。
マルコも私も浴衣を新調することになって、マルコの生地は白地に空色の絣縞(かすりじま)を基調に、天色の不死鳥の燃える羽根を思わせる波模様が入っている。
私の生地はマルコが選び、白地に雪花絞りの雪とも花とも取れる藍色から薄藍色までのグラデーションのかかった模様が散っている。
ちなみに、エースが選んだのは黒地に炎の様な赤の波模様のある生地で、着こなすのは難しそうだ。
サッチのは黒地に昇り竜が描かれ、リーゼントでそれを着たら…まぁ、カタギの人には見えないだろう。海賊だから問題ないのか?
オヤジ様のは白地に矢絣模様が入っている生地をナースさん達が選んだ。
ジョズさんのは深緑地に細い金字で描かれた麒麟の模様があり、ビスタさんのは黒地に白と灰の生成り縞で渋い。
イゾウさんのは女性ものの生地で白地露芝にぼかしのある紫色と黄色の艶やかな蝶が舞っていた。
ハルタくんのは白地にトンボ柄で、浴衣ではなく甚平をクルーに強請ってた。
ナースさん達はそれぞれ艶やかな生地を選び、イゾウさんに聞きながら自分たちで作るらしい。
オヤジ様のをナースさん達とイゾウさん、どっちが作るかで揉めたとか揉めなかったとか。そこは恐いので敢えて聞かなかった。
イゾウさんを始め、私と各隊から集められた人達は広いテーブルのある食堂を作業場として選び、浴衣が出来上がるまではおにぎりやサンドイッチなど甲板でも食べられるものをコックさん達は作ることになったらしい。
サッチが、「食べ易さと栄養を兼ね備えたものを作るコックの腕の見せ所だ」と笑っていた。
モビーにミシンはイゾウさん個人のとナースさん達の2台しかなかったのだけれど、オヤジ様が私のためにとポンっとあっけなく買ってくれた。この世界のミシンは電気を使わず足で踏むミシンで、まだそんなに普及していないらしく、すごく高いものらしい。
そんなものを私なんかに買ってくれちゃうとは、オヤジ様も私に甘いと恐縮するしかなかった。
しかし、使いなれないミシン。手を動かしながら足も動かすのは慣れるまで大変だった。
私のノルマは4着。マルコ・エース・サッチ、そして私の分。
それが終わったらクルー達のお手伝い。
まずはそれぞれの寸法を測ることから始まり、食堂には各隊の列が出来上がった。
1,2,4,16以外の隊は自分たちの隊長の分も作るので、3番隊や9番隊はサイズが大きくて大変だと騒いでいた。
型紙作りはイゾウさんが中心になって行い、みんなでわいわいと楽しく生地を裁断して行く。
―――――――――――――――――
そして当日。
モビーと黒鯨は昨日ヒバナ島海域に到着し、島には海軍も旅客船も海賊船も仲良く停まっていて、白ひげとしては花火見物を邪魔されたくなかったので、島には上陸せずに海から見物することになった。
イゾウさんは「男の着付けなんかやりたくもねぇ。」と、自分たちで着れるように、浴衣制作班だったクルーに着付けを教えた。
私はマルコ・エース・サッチに着せて、サッチには浴衣にリーゼントは合わないと力説をしたら、リーゼントじゃないカッコよく浴衣を着こなすサッチが出来上がった。
マルコもエースもサッチもしなやかな筋肉の付いたモデルの様な体形なので、とてもかっこよく浴衣を着こなし、もし島に上陸していたら女の人が黙っていなかったに違いない。
今夜のコックさん達はサッチ以外全員甚平で、私が教えた焼きそばやお好み焼き、綿あめにチョコバナナ、りんご飴、焼き鳥、焼きイカなど屋台“らしい”料理を作っていた。
お酒も今日は清酒とビールが中心で、花火大会が始まる前には、まさに蝶よ花よの浴衣を艶やかに着飾ったナースさん達が出てきて、クルー達はどよめき歓声を上げていた。
サッチは何処かのコックさんと同じように“愛の奴隷”となり、お酒や食べ物をせっせとナースさん達の所へ運んでいた。
「バカだよい……。」
「あはは…私も似たような事考えちゃった。」
「ん?サッチはいつも“ああ”だろ?」
私達三人は欄干に背中を預けながら、私とマルコは飲み物を持って、エースは串焼きの肉を食べながら、花火が始まるのを待っているところだ。
日が落ち、空が暗くなると、島から開会宣言の様なものが聞こえてきた。
そして、
――――――――――ヒュ〜〜、ドォォン!
始まった花火大会。
次々に打ち上げられて、色取り取りの花が空に輝く。
「……きれい……。」
「……ああ、懐かしいねい。あの時は、また菜真絵と一緒に花火が見られるとは思わなかったよい。」
「私も…。マルコと一緒に、そしてエースやオヤジ様も一緒に花火を見られるなんて、想像もつかなかったよ…。」
「すげぇ……………。」
左隣に居るエースを見上げれば、串焼きの肉も忘れて呆けたように花火に見入っていた。
エースに気を取られていたら、そっと右手が繋がれ、右を見上げればマルコが私を見ている。
「菜真絵…綺麗だよい。」
優しく瞳を細めて囁くマルコ。
「うん。花火綺麗だね…。」
「違うよい。浴衣姿の菜真絵が綺麗なんだよい。ナース達よりも誰よりも似合ってるよい。」
まさかこのタイミングでそんなことを言われると思ってなかったので、ボッ!っと顔が熱くなる。
「マルコも浴衣姿かっこいいよ…。…………エースもサッチも、他の隊長さん達も、もちろんオヤジ様もみんなよく似合っててカッコイイ。」
私は恥ずかしさを紛らわすためにマルコ以外も褒めれば、片眉を上げて不服そうな顔をするマルコ。
「菜真絵は俺だけ見てればいいよい。……俺だけ見てろい。」
ちゅっ…っと降ってきた優しいキスに、くすぐったさと共に愛しさが込み上げ、また一緒に花火が見れた奇跡に涙が出そうだった。
「ああーーーー!!!マルコずりぃ!今夜は菜真絵ちゃんとらぶらぶ禁止っ!!」
「煩いよいサッチ!」
「うるせぇな、サッチ!花火くらい静かに見ろよ!」
「エースまでひでぇ…!」
<おまけ:side Marco>
その後、花火大会が終わった時、菜真絵が砲弾より少し大きい玉を持って来た。
「マルコ、火を点けるからこれ、空高くぶん投げて?ガープさんのげんこつ流星群みたいに。」
「は?」
「グラララ、俺が投げてやろう。菜真絵。」
「オヤジ!?」
そうして打ち上げられた玉は、空に大きな花火の白ひげマークを描いた。
「菜真絵よいっ!?」
「「「「「菜真絵すげ〜〜〜!!!!!」」」」」
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紗絢様
リクエストありがとうございました!
花火大会の話は今連載中の3人旅が終わった後に書こうと思っていた内容なので、時期的にはその辺りだと見て頂けると嬉しいです。
短編が全然短編ではない長さになってしまいましたが、いかがでしたでしょうか?
気に入って頂けると幸いです。
瑛冬
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