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マルコ×連載ヒロイン 病と看護
「マルコ〜、5番隊に書類届けて来たよ。」

「ああ、お疲れさん。…ん?菜真絵、ちょっとこっちへ来てみろい。」

「なぁに?」

今日は月末なので、各隊への書類の提出督促や記入漏れのチェックなど、私はマルコの部屋と各隊の隊長さん達の部屋を行ったり来たりしていた。

マルコの傍へ行けば、グイッと腰を引かれ、マルコが座っている上に乗る形で座らせられた。

「菜真絵、顔が赤いねい?」

「えっ!?それは、マルコが急にこんなことするから…。」

もじもじと目をそらせば、「そうじゃないよい」と両手で顔を包まれ、マルコの額と私の額がくっ付けられる。
その距離の近さに、恥ずかしくてぎゅっっと目を瞑った。

「……やっぱり、熱があるみたいだよい。菜真絵の今日の仕事はもう終わりだよい。」

そう言うなり抱き抱え上げられ、反論する間もなくベッドへ寝かされる。

「今、船医を呼んで来るから大人しく寝てろい。」

「えっ?ただの熱なんだし、そんなに暑いとか気分が悪いとか無いから大丈夫だよ。」

私が起き上がろうとすれば、肩を掴まれまたベッドへ戻された。

「何言ってるんだよい。菜真絵がこっちに来て熱を出すのなんか初めてだろい?こっちに来てからすぐに、大体の予防接種はしたが、それに漏れた感染症や伝染病かも知れないだろよい。たかが熱だと侮ってはダメだよい。」

分かったら寝てろいと言ってマルコは出て行き、パタンと扉が閉まる。


ふぅっと息を吐き、目を閉じれば、いつの間にか意識が飛んでいた。








「……菜真絵……菜真絵よい…。」

「ぅん……?」

目が覚めれば、額にマルコの大きな手が乗せられていて、いつもは温かいはずのその手が、ひんやりとして気持ちよかった。

「…マルコ……?」

「船医の話では、ただの風邪だとよい。しっかり寝て安静にしとけとよい。」

「ん……。」

優しく頬を撫でられ、くすぐったい。

「何か欲しいものはあるかい?」

マルコの手が離れて行き、額に濡れたタオルが乗せられる。

「マルコ……手…。」

掛けられいている毛布の中から手を差しだせば、ぎゅっっと繋いでくれるマルコ。

「ククッ……今は甘えん坊だねい。次に起きるまでこうしててやるから、安心して寝ろい。」

マルコに言われるまま目を閉じると、意識が無くなる寸前に「もっと早く気付いてやれなくてごめんよい……。」という声が聞こえてきて…。


―――――マルコの所為じゃないよ。


ちゃんとそう言えたのかどうか、眠りの深淵に片足を入れた状態の私には分からなかった。




――――――――――――――



ほわほわといい匂いに誘われて目が覚める。
マルコは私が眠りに着く前に言っていた通り、ずっと手を繋いでくれたようだった。

「目が覚めたかい?今、サッチが飯を持って来てくれたよい。食べられるかい?」

私が返事をする前にクゥ〜っと私のお腹が返事をした。

「……………………。」

「ククッ……食欲があって何よりだよい。」

ニヤッっと笑われるならまだしも、優しい顔で笑われると恥ずかしさで居た堪れない。

マルコに肩を支えられて身体を起こしても、顔を真っ赤にしたまま俯いているしかできなくて、その間にマルコはサッチが持って来てくれたチキンスープを取り皿に用意してくれた。

「ほら、菜真絵。ア〜ンよい。」

「自分で食べる。」

いくらなんでもア〜ンは恥ずかしいのでお皿を受け取ろうと手を伸ばせば、私の手が届かない所へお皿を引っ込めるマルコ。

「いいから、ア〜ンよい。」

「……………。」

マルコをじぃ〜っと見つめて無言の問答をしても、マルコは頑として引かず、結局もう一度「ア〜ンよい。」と言われて、食べさせて貰うことになった。



「そういや、菜真絵の世界では病気の時はスープじゃなくて粥だって言ってたねい。」

スープを飲み終わり、薬を私に手渡しながら思い出したようにつぶやいた。

「うん。各家庭でそれぞれの味があるんだけれど、基本はごはんをひたひたの水で煮て、塩味だけつけるんだよ。それに梅干しを添えたり、卵を入れて混ぜたり、それは病人の体調次第で調整するの。」

「梅干しねい…。向こうで菜真絵に騙されて食わされたのを思い出したよい…。」

目が半眼になり、げんなりとした顔で「あの時はヤラレたよい」ととても苦々しげだ。

「でも梅干しはすごく体にいいんだよ?ウチのは母直伝の私の手作りだったし、下手に甘くしたり余計なもの入れなかったんだから。あ〜…話してたら食べたくなっちゃった…。」

身体が弱っている所為か、向こうの事を思い出し、無性に和の物が恋しくなる。

「粥はサッチに作らせるが、梅干しは菜真絵が元気になってから梅を買いに行くなり、取り寄せるなりしてモビーで作ればいいよい。……サッチとエースにもあの味をお見舞いしてやるよいっ!」

余程梅干しの味が強烈だったのか、サッチとエースにも食わせるんだと鼻息荒く宣言するマルコ。

「ふふっ。そうだね。私も二人の大騒ぎする姿が見たいかも。」

「そうとなったら、菜真絵は大人しく寝るんだよい。」

そう言って私を再びベッドへ寝かせ、なぜかマルコももぞもぞとベッドの中へ潜ってきた。

「マルコ?」

私が首を傾げても何も答えず、ボボゥっと腕を不死鳥化し、その腕で私を包むように腕枕をしてくれる。

「おやすみよい、菜真絵……。」

耳元で優しく囁かれれば、頬や肌に当たるふかふかの羽根の感触にほんわりと包まれ、あたたかい夢の世界へ誘(いざな)われていった。








数ヶ月後、梅干しを口いっぱいに入れ飛び上がるエースとサッチの姿。それと、一つ口に入れて目を輝かすイゾウさんの姿がモビーにあったとか……。



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昴流様

リクエストありがとうございました!
連載ヒロインが病気or怪我をするお話という事でしたが、如何でしたでしょうか?
連載ヒロインは基本、怪我は直ぐに治ってしまう方なので病気という設定にさせていただきました。
時期的にはマルコとくっつくか、くっつかないかくらいの辺りです。
気に入って頂けたら幸いです。

瑛冬


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