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マルコ×ネガティブヒロイン 初めての感情
今日島に着いた。
島に着いた初日の夜は宴で、その島の女の人が商売に来るのはいつものことだった。
でも、いつものマルコさんだったら、目もくれずにお酒を飲んで、私と一緒にモビーへ戻るか島の宿をとるかだったのに…。
今日は違った――――。
一人の女の人が入ってきたと思ったら、クルーのみんなが騒ぎ出した。その人は赤いドレスに赤いルージュ、なのに化粧は濃くなく艶やかだけどけばけばしくはない。
ゆっくりとした動作で色香を振り撒くように歩き、こちらへやってきた。
「隣、いいかしら?」
「構わねぇよい。」
マルコさんに話しかけ、私と反対側のマルコの隣に座る。
すぐにサッチ隊長が話しかけていたけど、軽くあしらわれてリーゼントが悄気ていた。
元々私は長閑(のどか)な島で暮らしていて、滅多に来ないはずの海賊が来て襲われていた所を、偶々偵察で飛んでいたマルコさんが助けてくれたのが白ひげ海賊団へ入るきっかけだった。
島の人達は殆ど殺され、私は家族もいなかったこともあって、助けて貰った恩返しのために雑用として船に乗せてもらえるようオヤジ様に懇願して乗せて貰った。
それから数ヶ月がして、私はマルコさんに一目惚れしていたことに気付き、ダメ元で告白したら付き合って貰えることになり、今に至る。
付き合って3ヶ月、マルコさんがすごくモテることが分かった。島に着けば、必ず美人な娼婦が何人も声をかけて来るし、普通のお店でも女性は海賊への恐れを含みながらも近寄ってくる。
そういえば、私と付き合う前に島で買っていた女の人もそういう感じの人ばかりだったと思いだす。
皆、自分に自信を持っていそうな、セクシーで美人な人達ばかりで、自分とは似ても似つかない。
(なんでマルコさんは私を選んだのだろう?)
私なんか、特に突出した女性の魅力は持っていないし、顔も普通、身体も寸胴。
一人落ち込んでいたらマルコさんとその女の人は話がはずんでいるらしく、楽しそうにお酒を交わしていた。
女の人がマルコさんにしな垂れかかり、彼女の胸に埋まるマルコさんの腕。
いつもならやんわりと振り払うのに、今日はそのままで―――。
女の人がマルコさんの耳元で何か囁くと、くつくつと楽しそうに笑って、何か囁き返していた。
周りは宴で騒がしいはずなのに、自分の周りだけは静かに感じて、マルコさんと女の人のクスクスと笑う声だけが頭に響く――――。
マルコさんと付き合ってからこんな事は初めてでどうしたらいいのか分からず、ここに居るのが居た堪れなくなって、店を飛び出しモビーへ戻った。
店の外には怪しい男達がいたけど、足の速さだけは自信があったので何事も無く返ってこれた。
恋人同士になって、深い関係になってからマルコさんの部屋に移された私の居場所。部屋に一つだけある大きなベッドに上り、シーツに顔を埋めれば、今は考えたくない彼の匂いが微かにして…。
(……今夜、帰ってくるのかな?)
本当は女の人とお酒を飲まないで!傍に侍らさないで!私だけを見て!浮気しないで!と言いたい。言えたらいいのにと思う。今まではどんな女に人が寄ってきても、マルコさんが毅然としていてくれたから大して嫉妬せずにいられた。
でも今回、目の前で繰り広げられている光景を見ても、束縛したら面倒くさいと言われそうで、嫉妬したら重いと思われそうで、嫌われるのが怖くて何も言えなかった。
「…うぅっ……ぐすっ……。」
考えれば考えるほど頭の中がぐちゃぐちゃになって涙が出てきた。
「泣くくらいなら思ってることちゃんと言えよい。」
誰もいないはずの部屋から声が聴こえて、扉の方を振り向けば、そこにはマルコさんがいた。
扉に寄り掛かって腕を組み、呆れたような顔で私を見ている。
「………マルコ…さん?」
「菜真絵、一人で帰ったら危ないだろい。」
「な、なんでいるんですか?あの女の人は?」
「お前が店を飛び出したからだろい。女は店で待たせてるよい。」
「じゃあ、…私のことはほっといてお店に戻ってください。」
“待たせている”と聞いて、私はマルコさんが帰って来てくれたんだと糠喜びしていたことに気付き、俯いたまま泣かないように唇を噛みしめた。
「本当に戻っていいのかい?」
「……………………。」
「菜真絵の俺に対する気持ちは、俺が浮気しても何とも思わないくらい軽いものなのかよい?」
「違います!………ほ、本当はずっと一緒に居て欲しいです。他の人なんて見て欲しくありません。……他の女の人と…お゛酒゛を゛飲゛ん゛だ゛り゛……うぅっ…。」
涙があふれてきて言葉が詰まる。
「飲んだり?」
マルコさんはベッドまでやって来て端に座り、優しく私の頭を撫でる。
「侍゛ら゛せ゛て゛欲゛し゛く゛な゛い゛…で゛す゛。」
「はべっ!?菜真絵、どこでそんな言葉覚えたんだよい。」
「……ぐすっ…私だけを見てください…!…浮気……し゛な゛い゛で゛…!」
ぐずぐずで自分でも何を言っているのか分からないけど、最後は「うわぁ〜ん」とマルコさんに抱きつき、大泣きしてしまった。
「やっと本音を言ったねい?よしよし、よいよい。」
頭をぽんぽんと撫でながら背中を摩ってくれるマルコさん。
「菜真絵はいつも控えめで、それはそれで可愛いが、もっと自分に自信を持てよい。俺のことが好きならもっと束縛しろい。」
嫉妬もされないのかと俺も不安になるんだよいと自嘲気味に笑って、慰めてくれる手はとても優しかった。
私が落ち着いてから、あの女の人は私を嫉妬させるために協力してもらっただけだとネタばらしをしたマルコさん。偵察に来た時に既に計画を立てていたらしい。
「さて、菜真絵の機嫌も直ったことだし、俺が菜真絵だけのものだってことをたっぷりと教えてやるかねい?」
「いや、あの、もう大丈夫です。なぜマルコさんが私みたいな寸胴体形が好きなのかはよく分からないですけど、愛されてることは良く分かったので、もう十分です。」
こういう時のマルコさんに捕まったら2、3日動けなくなるのは分かっているので、後ずされば、じりじりとにじり寄られる。
「##name_1##は本当に自分のことが分かってないねい。いつもだぼっとしたワンピースやらシャツやパンツを着ているから、そう思いこんでるだけだよい。ちゃんと胸も尻も出るところは出てるよい。」
それでも気に入らないなら俺がもっとでかくしてやるよいと言いながらベッドの中央へ引き戻され、その後は散々泣かされ、宥(なだ)め賺(すか)された。
それからは、マルコさんが私を傍に置いておくことが増え、私の仕事も甲板掃除や洗濯の雑用からマルコさんの書類整理の手伝いやお茶くみ、マルコさんの身の回りの世話が仕事になった。
(なんか、前よりべったりになったけど、もっとクールな人じゃなかったっけ?マルコさんて…。)
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沙羅様
リクエストありがとうございます。
マルコと自信のない彼女の前に美女が!というのでしたが、いかがでしたでしょうか?気に入っていただけたら幸いです。
初めてのマルコのよそ見に戸惑うヒロインを、もうちょっと上手く表現できなかったのかと悔やまれます。
連載の方でマルコがこんな仕掛けをしていたら、ネタバレした時ヒロインは大暴れするだろうなぁと思いながら書いてました。
これからも精進致しますので、今後もよろしくお願いします。
瑛冬
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