Baby Phoenix Another Story
The Day 6
モビーディック号6日目早朝。
「マル!また遊ぼうな!」
「うん!またあそぶよい!」
「海に落ちるなよ?」
「マル、おちないよい!」
家畜の世話などで島の人達は全体的に早起きなため、マルちゃんと遊んだりしてくれていた子達が数人モビーの近くまで見送りに来てくれていた。
キィさんが白ひげ海賊団は危険な海賊ではないと島民皆に言ってくれたため、白ひげクルーを表立って怖がったりする人は無く、サッチ達コックさんがたくさんの食材を比較的高値で買い付けたこともあって、友好的な人もいた。
マルちゃんはこれが島の皆との今の“時”での別れになるとは分かってないらしく、「またくるよい!」「おみやげもってくるよい!」と楽しそうに話し、少し離れて見ていたマルコは無表情を通しているものの、少しだけ複雑そうな顔になっていた。
「それじゃあ、キィさん。また1ヶ月くらいしたら戻りますので、その時はよろしくお願いします。」
「家の方は管理しててあげるから、マルコ…マルとたくさんの思い出を作ってやってちょうだい。菜真絵ちゃんとの出会いと生活が今のマルコの根幹に大きく良い影響を与えてるのは確かだから。」
「私なんて、大したことできないですけどね。」
「“なんて”なんて言っちゃ駄目だよ。それに…、まぁ、後は……この島は菜真絵ちゃんにとってもう故郷なんだから、たまには手紙でも書いておくれ。」
「??…はい。マルちゃんの近況とか必ず手紙を書きますね!」
キィさんは何かを言おうとして無理に話を変えた様な気がした。
「はぁ…。マルコ!!しっかりやりなっ!」
私の返事に疲れたようにため息を吐き、遠くに居たマルコに声を張り上げたキィさん。
私も振り返ってマルコを見ると、叱られた時のマルちゃんと同じようにビクッ!と肩を跳ねらかせたマルコが、それを取り繕うように睥睨して「分かってるよい!」と返す。
「まったく、肝心な所がダメじゃないか。マルのように真っ直ぐぶつかる勇気もないのかねぇ?」
ぶつぶつと文句を言いながらキィさんは私の傍を離れて白ひげさんの居る方へ向かった。
キィさんと白ひげさんは何か言葉を交わしていたけれど、二人の間に入れる者は誰も居らず、島では皆の母で長(おさ)なキィさんが白ひげさんの前だけではしっかりした只の“白ひげの娘”に見えた。
(離れても“家族”なんだ……。なんか、いいなぁ…。)
「マルちゃん、そろそろモビーへ乗ろうか?」
「よ〜い!」
島のお友達と一通り別れを済ませたマルちゃんを連れて一緒に岸へ下りていたマルコやエースとモビーに乗り込む。
白ひげさんもキィさんを一度抱きしめてから悠然とモビーへ戻り、マルコへ目で合図を出すと、マルコの指揮の元モビーディック号は出港した。
(一月の航海か…。)
「菜真絵〜!おにわよい!菜真絵のおにわあるよ〜い!」
航路が定まり、クルーがそれぞれの持ち場を離れると、サッチが私の家から移植した上甲板の畑へ案内してくれた。
「マルちゃん!船の上だから走ると危ないよ!」
「マル、うみのこよ〜い!へいきよ〜い!」
「ははっ!菜真絵ちゃん心配性だな〜。マルはずっと船で生活してたんだから大丈夫だぞ?」
「あ、そっか。」
「いちごよ〜い!」「おはなよ〜い!」と喜ぶマルちゃんを見守りながらサッチが畑のこれからの管理について話してくれた。
実を付ける野菜の受粉や水やりなどは植物学者のクルーが手伝ってくれるらしい。それでも、島と違って気候が安定しないため、中には枯れてしまうものもあるだろうという事だった。
(気候……鬼道使えるかな?)
どうにかして鬼道を応用できないものかと考えていたら、マルちゃんがイチゴに向かって「はやくあかくなるよい!」と仁王立ちになって急き立てていた。
「マルちゃん、イチゴ責めちゃだめだよ?あかくなぁれ〜って見守ってあげようね?」
「みまもる……よい?」
「ククッ…、理不尽に責めるのはこの頃から変わってねぇな〜。マルコは。」
「え?今も無茶言ったりするの?」
「ああ。天気が悪くなったのは俺のリーゼントの所為だとか、お前の暑苦しい顔の所為で着地失敗したとか、な。着地失敗したのは自分がよそ見してたからだろっての!」
「余計な事菜真絵に吹き込んでんじゃねぇよい!」
「痛゛っ!?」
「マル、サッチがリーゼント潰してくれとよい。」
「よい?よ〜いっ!つぶしてあげるよい!へんなあたまよい!」
「ちょっ!?マル!手に土付けたまま来るな!」
「マルコ…いつの間にマルちゃんと仲良くなったの?」
「利害の一致だよい。」
「??」
「サッチ、まつよ〜い!へんなあたまやめるよい!」
「変な頭じゃねぇ!俺のは立派なリーゼントだ!」
「変な頭だよい。」
「ああ、なるほど。」
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