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Baby Phoenix Another Story
The Day 5
モビーディック号5日目。


本当は今日島を出港する予定だったけれど、白ひげさんの計らいで出港は明日の朝に延び、今日一日はマルちゃんのために島での最後の日を過ごす事になった。


「菜真絵ちゃん、モビーに持ってく荷物はこれで最後か?」

「うん、マルちゃんの服とおもちゃと…絵本…。それで全部だよ。ありがとう、サッチ。」

「後は庭で育ってる野菜を少しモビーへ移植するか?オヤジが上甲板に畑作っていいってよ。」

「本当に?マルちゃん、育つの楽しみにしていたからそれはすごく有難いよ。」

「それじゃあ、後は俺らで植替えしとくから菜真絵ちゃんはマルとゆっくりしてやってくれ。」


そう言ってウチを後にしたサッチ。
ドアを閉めて室内を見ると、マルちゃんが相手をしていてくれたマルコに噛みついていた。


「なんでいるよい!モビーもどれよい!」

「俺は菜真絵の護衛だよい。」

「菜真絵はマルがまもるよいっ!」

「ちいせぇのに何言ってるんだよい。」


マルコは護衛なんて言っているけれど、白ひげさんが「菜真絵さえ良ければお前ェも世話になって来い。お前ェの原点みてェな処だろ?」と言われたらしい。
確かに、マルちゃんが元の時代に帰ってしまえば私は島へ帰って来るし、マルコはモビーで航海を続けるので、マルコが此処へ来る事も無いだろう。


「菜真絵はマルのよい!」

「うるせぇよい。」


マルちゃんが飛び掛かろうとしたのをマルコが手を伸ばして頭を抑えることで阻止したため、マルちゃんのぱんちもきっくも全くマルコには届いてない。


「マルちゃん、マルコに遊んでもらえてよかったね?」

「マル、こんなやつとあそんでないよい!菜真絵とあそぶよい!」


マルコの手から自分の頭をベリッと剥がし、トテトテと私の方へ来るとぎゅっと抱きついたマルちゃん。
それを抱き上げて頭を撫でてあげると嬉しそうに顔を綻ばせた。


「マルちゃんは何して遊びたい?」

「菜真絵のおひざでえほんよい!」

「う〜ん。絵本は1冊しか残してないからそれでいい?」


何したい?とマルちゃんに訊いたものの、マルちゃんの遊具は今夜寝る時に読み聞かせする本以外全てモビーへ運んで貰ったため何も残って無かった。


「じゃあ、おりがみよい!あと、おやつはいっしょにおかしつくるよい!」

「紙ならたくさんあるし、いろんなものを折ろうか?マルちゃん。」

「よ〜い!」


元気よく手を上げて返事したマルちゃんをマルコの傍へ下ろして、書斎へ紙を取りに行く。
書斎は何かあった時のために出かけるときは極力鬼道で結界を張ってから出掛けるようにしていたため、エースとサッチに荒らされないで済んでいた。


(おやつか…。クッキーとホットケーキどっちがいいかな?)


昨日、後片付けをした後にサッチが小麦粉や卵、牛乳、ハムなど2日分の食料を調達してくれたので、その中で簡単に出来そうなものを考えながら戻ると、またマルちゃんとマルコがじゃれ合っていた。


「マル、おまえきらいよい!」

「だからなんだよい。」

「モビーかえれよい!」

「ふんっ、お前が決める事じゃねぇだろい。」


「なんでマルちゃんはマルコに飛び掛かって行くんだろうね?同族嫌悪とか?」

「同族って…菜真絵。同一人物だろい?」

「あはは…そっか。はい、マルコ。紙を正方形に切るの手伝ってくれる?」


マルちゃん用の先の丸いハサミは持って行ってしまったため、マルちゃんが居る方の逆隣に座りながらマルコに普通のハサミを渡す。

すると、頬をぷくっ!と膨らませたマルちゃんが私とマルコの間に割り入って来て黙って陣取った。


「……(邪魔だよい。)」

「マルコ、何か言った?」

「何でもないよい。菜真絵、大きさはどうするんだい?小さくするかい?」

「大きい方が折り易いと思うから大きいままでいいよ。」

「分かったよい。」


長方形の紙を三角に折って余った部分を切り落として行く。その間マルちゃんはじぃ〜〜っと私の手元を見ていた。


「マルちゃん、ハサミは危ないから触っちゃダメだよ?」

「よ〜い!菜真絵、とりさんおってほしいよい!」

「鳥さん?前に折った鶴かな?」

「つるよい!」

「マルちゃんもまた挑戦してみようか?」

「よい!」


嬉しそうに返事をしたマルちゃんを膝に乗せ、後ろから手を添える様にして鶴を折り始める。


「鶴…懐かしいよい。」

「マルコ、覚えてるの?」

「ああ、たぶん今でも折れるよい。菜真絵に教わっただろい?向こうに帰ってからも忘れない様に何度も折ったものだよい。」

「そっか〜。マルちゃん、記憶力いいもんね〜。」

「ククッ…、なんか変な感じだよい。」

「ん?……ああ、確かにマルちゃんだけどマルコだもんね?あははっ。」

「菜真絵!つぎよい!」

「はいはい。マルちゃん、ここはぴっちりと合わせて……じゃないと嘴があひるさんになっちゃうからね?」

「よい!」


マルコと話していたら見上げて来たマルちゃんに急かされる。


「何度もアヒルになって、いや、鳥に見えなくてサッチや隊長達によく笑われてたよい。」

「そうだったの?でも、戻ってからも折り紙で遊んでてくれたんだね。」

「一度、新聞に入ってた手配書で折っちまった事があってねい。バレた時には隊長にモビー中を追い掛け回されたよい。」


懐かしそうに話しながら、正方形に切った紙から1枚取って、何気ない手付きで折り始めるマルコ。
その手は大人の男の人の骨ばった大きな手なのに指先はキレイに手入れされていて、とても器用だった。



「菜真絵、できたよい!…ムッ…マルのほうがじょうずよい!」

「ハッ!羽が曲がってるじゃねぇかよい。」

「むぅ〜…もういっかいおるよい!!」





――――――――――――――




「わ〜い!ほっとけーきよ〜いっ!」

「マルちゃんのは鳥さんの形にしてみたんだけど分かるかな?」

「ふちちょーよい!」

「……(どう見てもひよこだよい。)」

「マルコ、何か言った?」

「菜真絵のホットケーキ懐かしいよい。」




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