[携帯モード] [URL送信]

Baby Phoenix Another Story
The Day 4.5(大人達の時間)

深夜まで宴が続いたので途中でマルちゃんはウトウトし始め、私の膝に乗せていたらそのままねてしまったので、一旦マルちゃんを私の家へ寝かせてからお酒出しや宴が終わってからの後片付けを手伝いに戻って来ようと立ち上がった。

―――が、しかし


マルちゃんを抱え直そうとしたらしっかりと着ていたTシャツを掴まれていて、剥がそうとしてもTシャツが伸びるだけで剥がれず、指一本一本を開かせても無意識なのか眉間にシワを寄せてすぐにハシッ!っとシャツを握り締められた。



その様子を傍で見ていたサッチとエースは大笑いし、キィさんは苦笑い、マルコは恥ずかしそうにプイッ!と顔を背けられた。



「ふふっ、菜真絵ちゃんももう少し此処に居ておくれ。マルコなら1度寝たら起きないし、あまり愚図らない子だったから大丈夫だよ。」


キィさんにそう言われて再び席に着き、あやす様にマルちゃんの背中をポンポンと撫でると寝顔がふにゃりと蕩けたため、私は温かい気持ちになり笑みが洩れた。


「ははっ!マルコはいいな〜。あん時、マルコが船から居なくなって大騒ぎしてたが、どうせならマルコじゃなくて俺が菜真絵ちゃんのとこに来たかったぜ。」

「バカ言ってんじゃねぇよい。お前じゃ菜真絵に叩き出されただけだよい。」

「そうだねぇ。マルコよりサッチの方が悪ガキだったからねぇ。」


マルコとサッチのやり取りにしみじみと頷くキィさん。
エースは料理を食べ始めたと思ったら寝ていた。


「はあ?俺よりマルコの方がずる賢かっただろうが!」

「俺は分別のある子供だったよい。」


(……いや…、けっこうやんちゃだと思うよ…。)


フフンッとサッチを小馬鹿にするように鼻を鳴らしたマルコに内心でツッコミを入れる。


「確かにマルコはサッチの様にナース達のスカート覗いたり、下心丸出しで飛び付いて来るような子じゃなかったけどねぇ。気に入らないクルーに対しては完全無視したり、隊長の部屋に忍び込んでは勝手に本を読んだり、羽ペン使って壊したり、証拠隠滅のためにそれをサッチやクルーの荷物に紛れ込ませたり、マルコも大概だったよ。ふふっ。」


キィさんの話を聞いて、マルちゃんの行動が目に浮かぶ。


確かに島でも卵を持って来てくれたアシュさんとの邂逅後、マルちゃんから陥落させようと会う度にマルちゃんに媚を売り始めたアシュさんを徹底的に無視していたマルちゃん。
そのそっぽを向いてツン!としている顔は傍で見ていて思わず笑ってしまうような可愛らしさがあった。
それに、私が洗濯をしていた時、慌てたように家の中から出て来たマルちゃんが庭に何かを埋めて「はやくつちにかえるよい!」と呪文のように繰り返していると思ったら、埋められていたのは陶器の置物だったり。

その時は、壊した事よりもそれを謝らない事への説教と、庭に埋めたら危ないという説教を一時間くらいした事を覚えている。


「ふふっ、マルちゃんの行動って結構ちゃんとした理由がある悪戯が多いですよね。」

「菜真絵までキィの話に乗るなよい。」

「いいじゃないか、マルコ。お前が全くの警戒心無しに懐いた人間なんてモビーでも数少なかったんだから。ここで菜真絵ちゃんに思いっきり甘えられたことはいい思い出だろう?」

「……っ…。」


優しい母親の様な眼をしてマルコに話しかけるキィさん。
マルコは言葉を詰まらせていたようだったけれど、私からは顔を背けられていたためその表情は見えなかった。


「ふふっ…。――――それにしても、マルコもサッチもよく成長したねぇ。あの手の掛かった子供達が今では立派にオヤジ様を支えてるんだから、私も、きっとあの人も嬉しいよ。」

「キィ……。」

「キィ…。」


「それに、あんた達にも守りたいやんちゃな弟が出来たみたいだしね。ははっ!この子はあの頃のあんた達をそのまま大人にした様な良い子じゃないか。」


キィさんが少し強めに寝たままのエースの頭をポンポンと撫でると、ふがっ!と変な寝言を言ってそのまま起き無いエース。


「わっはっはっ!つまみ食いしたり、海へ落ちたり、騒がしい弟だ!」

「サッチと一緒んなると必ず面倒臭いことを起こしてくれるよい。」


口では悪態を吐きつつも兄の顔で嬉しそうに話す二人。

それから二人はエースが白ひげさんに戦いを挑み、どう白ひげクルーになったのか楽しそうにキィさんと私に語ってくれた。




――――――――――



宴が終わった後。

この島には宿屋というものが無いため、白ひげのクルーは皆モビーへ帰ったり、潰れた人はキィさんの酒場の床でそのまま寝させて貰ったりしていた。

後片付けを手伝おうとしたらマルちゃんがくっ付いていたため、大丈夫だからマルコと寝ておやりと断られてしまい、サッチが「たまには俺が“親”孝行するぜ!」とキィさんを手伝っていた。



なので私は邪魔しても悪いと思い、久しぶりに我が家で寝ようと、昼間の内にサッチ、エース、マルコの手によってキレイに片付いた家へマルちゃんを抱いたまま向かおうとしたらマルコが話しかけて来た。


「菜真絵は家に戻るのかい?」

「うん。久しぶりの我が家だし、きっとマルちゃんにとっては最後になるかもしれないから。」

「……俺も行ってもいいかい?」

「え?でも、寝る所、ソファしかないよ?ベッドは3人じゃ狭くて寝れないし。」

「寝るのは床でもどこでもいいよい。俺にとっても菜真絵の家は懐かしいんだよい。」


少し照れたように話すマルコに、「ああ、そうか。」と思った。
マルコにもマルちゃんだった時に過ごした思い出や記憶があの家にはあるのだ。憶測でしかないけれど、きっとモビー以外で一番長く暮らした場所。


「それじゃあ、帰ろうか!マルコはどんな事覚えてる?」

「俺は―――――――。」




―――――――――――



「菜真絵、おはよい!」

「おはよう、マルちゃん。」

「起きたかよい?マル。」

「ああーーー!!なんでおまえがいるよいっ!!」

「朝から煩いよい。」

「ここ、マルと菜真絵のいえよいっ!」

「だから俺の家なんだろい?」

「?????…わからないこというなよい!」

「はいはい。マルちゃん、起きたら顔を洗って来ようね?」

「……かお…あらうよい…。」

「朝ご飯はオムライスにしたよ?」

「おむらいすよ〜い!マル、かおあらってくるよいっ!」



「……マルコ。マルコもまだ水が怖かったりする?」

「俺はもう普通に顔洗えるよい。バカにすんない。」

「ふふっ。でも、今もオムライスは好きでしょ?サッチに聞いたよ。」

「菜真絵のオムライス、楽しみだよい。」




[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!