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Baby Phoenix Another Story
The Day 3
モビーディック号3日目。



マルはマルよい―――――。


昨日からマルちゃんが子(小)マルと呼ばれる度に呼んだ相手に向かってそう噛みついたため、今日は朝食後に白ひげさんと隊長さん達の隊長会議が開かれ、そこに私とマルちゃんも呼ばれた。


会議室にはとても大きな円卓があり、そこに白ひげさんと16人の隊長さん達が隊の順番に座ると壮観で、部屋に招き入れられた瞬間に「かっこいい…」とつい言葉を漏らしてしまうほどだった。




―――――それなのに、



議題は『小さいマルコの呼び方はどうするか?』。



何とも平和な議題だと思いながら案内されたマルコとエースの間の席に座る。

マルちゃんの事は膝に座らせようとしたら、マルコがわざわざ食堂からマルちゃん用の椅子を持って来てくれていたらしく、私とエースの間にその椅子が置かれた。

マルちゃんは何故かマルコの事をひと睨みしてからその椅子に座り、既に円卓に伏して寝ていたエースに「エースよ〜い!」と言いながら腕をぺちぺちと叩いている。



「それじゃ、会議を始めるよい。お前ら適当に案を出せよい。」


何とも投げやりなマルコの進行で始まった隊長会議。
白ひげさんはお酒を片手に愉しそうにそれを眺めている。


「マルコと区別すんだろ?“子マル”でいいじゃねぇか。」

「やぁよい!」


サッチがニヤニヤとからかうようにマルちゃんを見ながらそう言うとすかさず反論するマルちゃん。


「んじゃ、マルコJr.でどうだ?」

「俺の子供じゃねぇよい。」


ピンクのシャツに迷彩パンツの―――クリエルさんが発言すると、今度はマルコが不機嫌そうに睥睨する。


「同じ“マルコ”じゃあ、不便だしな。まぁ、マルコ!って呼んで2人同時に振り返ったらそれはそれで笑えるかも知れねぇが。」

「笑えねぇよい。」

「俺達が菜真絵みてぇに“マルちゃん”って呼ぶのも…なぁ?」

「やぁよい!」

「気持ち悪いな。それ。」


「「「「「う〜〜〜ん…………。」」」」」


皆して腕を組みながら唸るその姿に、本当に白ひげ海賊団は良い人達で平和なのだと思わされた。

マルちゃんの訴えを適当に流さなかった白ひげさん。
マルちゃんのためにわざわざこの場を作り心を砕く隊長さん達。

大げさかもしれないけれど、本当の生きる時代は違っててもマルちゃんはこの大海賊団の家族なんだなぁと感じる事が出来た。



「マルコはなんて呼ばれてたか覚えてねぇのかい?」

「俺は菜真絵に呼ばれてたことしか覚えてねぇよい。」

「ああ、マルコの奴、還って来てからも菜真絵ちゃんの事忘れねぇようにってミミズみてぇな覚えたての字で菜真絵ちゃんの名前紙に書いたり似顔絵だって言って下手な絵描いてたもんな〜。あん時は誰の事か分からなかったが、今思えば菜真絵ちゃんのことだったんだな。マルコは暫く菜真絵〜菜真絵〜って夜泣きしてたしな。」

「余計な事言うんじゃねぇよい!サッチ!」

「「「「「わっはっはっはっはっはっ!!!!!」」」」」


イゾウさんの問い掛けを元に、サッチが大きく話を脱線させ、室内が笑いに包まれる。
そんな中でマルちゃんは訳が分からない様にきょとんとし、マルコは顔は素面でも耳をほんのりと朱に染めていた。






「ふわぁ〜っ、ん?まだやってたのか?」

「エース、やっと起きたか。お前からも何か良い案無いか?」

「エース、おねぼうよい!」

「そうだな〜…ちびなマルコなんだからそのまま“ちびマ…「わーー!!それはダメ!」……なんでだよ?」


エースがマルちゃんの頭をポフポフと撫でながら言い掛けた言葉に、私がいきなり大きな声を出して遮ったため、皆が吃驚したように目を見開いて固まった。


「どこまで言おうとしてたか分からないけれど、それは私が他の者を彷彿とさせられるからダメ!それに、それだと“コマル”と変わらないでしょ?マルちゃんも嫌なんじゃないかな?」

「マル、ちびじゃないよい!」


慌てて否定する理由を述べれば、マルちゃんも私に同意してくれたのでホッと胸を撫で下ろす事が出来た。


(だって…ちびマル○…は、ねぇ?)


元居た世界のアニメで可愛い女の子だったとは思うけれど、マルちゃんの可愛さの方が上だ。
同じ名で呼んで欲しくは無い。


(一緒に暮らした欲目かもしれないけど…。)



「マルはマルよい!」

「んじゃ、いっそのことマルコとマルでいいんじゃない?マルコはそれくらい聞き別けること出来るだろうし、ボクはもうそうするよ。」


会議楽しいけど飽きちゃった!と笑いながら話したハルタくん。
初日に他の人と同じように“ハルタさん”と呼んだら「オジサンっぽいから“くん”にして?」と言われたのでハルタくんと呼ぶようにしている。


「そうだな。ここは無難に“マル”でいいんじゃね?」

「マルコもマルもそれなら納得だろ?」

「いいよい!マルはマルよい!」

「やれやれだよい。」



2時間以上も掛けた会議の割に、最後はあっさりと決まり、ぞろぞろと会議室を出て行く隊長さん達に続いてマルちゃんもご機嫌な顔でエースと甲板へ出て行った。







「白ひげさん、楽しそうでしたね?」

「グラララ!マルコのああいう頑固な所は昔から変わらねェからなァ。」

「オヤジ!?」

「ふふっ、私も一緒に暮らしてて毎日『ひよこさんぱじゃまよい!』と言われたのには困りました。他にも色々あるのに、マルちゃんの目に入ると必ず『ひよこさんよい!』って頑として聞いてくれなくて。」

「菜真絵よいっ!?」

「グラララ!」

「あ!そういえば、マルちゃんが字を覚えて白ひげさんへって手紙書いていたんです。島へ着いたらお渡ししますね。」

「グラララ!そりゃァ楽しみだなァ!」

「菜真絵!そんなもの捨てろよい!」

「マルちゃんから白ひげさんへの手紙なんだから、私がそんなこと出来る訳ないでしょ?マルコ。」

「〜〜〜〜〜〜っ!菜真絵は融通が効かねぇよい!」

「グララララ!菜真絵の前ではタジタジだなァ?マルコ。」



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