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伸びたラーメンは不味い(sn←サイ)

「よく食べられるね……。」
「んーおいひいってばよ!」

毎日ハードな任務に就き、過密スケジュールをこなすナルト。そんなナルトは木ノ葉に帰ってくると必ず一楽のラーメンを食べに行く。

(ボクにはこんな濃いもの食べられないな。)

隣ではこってりとした背脂の浮いた大盛チャーシュー麺が息つく暇もなくなくなっていく。すごい。あんな激しい任務の後にこれだけ重たい食事をとることができるだなんて……胃の中を見てみたいよ。
そんなことを考えていたら、

「へいらっしゃい!」

威勢の良い店主の掛け声と爽やかな笑顔、そして、一瞬にして輝くナルトの顔。それを受けて暖簾をくぐってきたのは、ぼくらがよく知る人物だった。

「久しぶりじゃねぇか、坊っちゃん!」
「……坊っちゃんはやめてくれ。」

しかし、それに無愛想に返事を返す「坊っちゃん」は、なんのためらいもなしにナルトの脇へと腰を落ち着けた。そんな彼にナルトはまだ口の中にあるラーメンを呑み切る前に声をかける。

「ヒャフケェ!」

だからもちろん名前を正しく呼べなくて、彼は密かに眉をよせた。けれども、

「食うか話すかのどっちかにしろ。」

と冷静なツッコミをしながらも、確かにその表情が緩んだのをボクは見逃したりなんかしないよ。

ナルトは口の中のモノがなくなると再び「サスケ」と彼の名を呼び、笑顔で彼の帰還を迎えた。

「おかえり。」
「ただいま。」

たった二言の言葉のやり取り。けれどそこには、暖かい何かがあって、それが目に見える類いのモノではないけれど、確かにそこにあるんだってわかる。

わかるんだ。今のボクには。それは他でもないナルトのおかげで、おかげだからこそ、今この状況で、ボクがどうした方がより良いのか、なんとなくわかる。

けれど、より良い選択が分かっているだけで、どちらを選択するかなんて言うは、個人の自由だ。だから、

「オヤジ、ラーメン一丁。」
「ハイよ!」
「味噌チャーシュー大盛りでなッ!」
「勝手に足すなウスラ。」

なんてやり取りもボクは笑顔でやり過ごす。

「なぁなぁサスケ、今度いつ休み?」

少し修行に付き合って欲しいと頼むナルトに今日のラーメン代と引き換えだと嫌みに笑う彼。そんな彼にナルトはふくれて、「坊っちゃん」の癖にお金とるのかよと言った。

そんなことをしているうちに、いつの間にか時間は過ぎていった。置きっぱなしのナルトの箸は既に乾いてしまい、残ったラーメンはすっかり伸びてどんぶりの底を漂っていた。

そんな哀れな麺たちを救おうと、ナルトたちに気づかれないように、スープをれんげでそっと掬った。すると、白く浮いた脂がついてきて、口を付けた途端喉に冷たくねっとりと張りつくような感覚が広がった。

冷めて果てしなく不味いラーメンは結局食べ切ることが出来なくて、

「ご馳走様。」

仕方ないから席を立った。
立つとようやく、ふたりつの視線がコチラを向いた。

「サイ、もう帰んのか。」
「ああ。明日も早いしね。」
「そっか、気をつけてな。」
「おじさん、お勘定。」
「ハイよ!」

相変わらず威勢のいい店主と笑顔で見送るナルト。それから、こちらも相変わらずな無表情の彼。ボクはいつものように笑い暖簾をくぐろうとした。すると、

「おい、兄ちゃん釣り忘れてんぞ!」

店主に引き留められたからこう言ってやった。

「奥の彼にツケといて。」



嘘の笑いって、こう言う時に使うんだね。
















fin.

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