たったひとつの弱さ(兄弟/兄誕)
『兄さん、待ってよ。』
『兄さん、昨日テストで100点取ったんだ!』
『兄さん、お団子買って帰ろうよ。』
『兄さん』。いつもサスケはおれのことをそう呼んだ。その日常に潜む何気ない呼び掛けが、おれの顔を自然と綻ばせた。
それだけで、十分だった。
ある日のことだった。
『兄さん、見て!仔猫がいるよ。』
『兄さん、捨てられてるの?』
『兄さん、可哀想だよ。』
『兄さんのバカァ……ッ!』
その日、サスケは泣いて、なかなか家に帰ろうとしなかった。道端に仔猫が段ボールに入れられて、捨てられていたのだった。
仕方ないだろう、サスケ。
家ではネコを飼えないんだ。
そう言っても全く耳を貸してくれない。
なんで?
どうして?
おれちゃんと世話するから……!
そう必死にねだるサスケ。けれど、おれはそれを叶えてやれない。
どうせ両親は反対する。父には逆らえない。直ぐに返してこいと言われるのが目に見えている。目に見えているからこそ、できればそう言う悲しい思いはさせたくない。
妥協案だった。この仔猫達を飼ってくれる人を探そう、と言った。そうすれば、仔猫も安全だし、サスケだって会いに行けるだろうと。
サスケは一瞬残念そうな顔をしたが、仔猫のためだもんね。と言って仔猫が入っていた段ボールごと抱えて、飼い主になってくれる人を探した。
一件一件家を周りお願いし、ようやく引き取り先が決まると、サスケは名残惜しそうにその段ボールを離した。
そして、すぐオレの後ろに隠れて、何か言いたそうにしていたので、背中を押してやると、時々会いに来てもいいですかとその人に尋ねたのだった。
結局オレは、サスケの涙に弱いのだ。どんなにバカにされても、罵られても、その状況が困難で解決の兆しが一向に見えないとしても、その雫ひとつで、どうにかしてやりたいと思ってしまうのだ。
甘やかしてるなと反省する。
けれど、
『兄さん、ありがとう。』
その笑顔が心に染み渡ったのは言うまでもない。
「どうされたんです、イタチさん。」
「……なんでもない。行くぞ、鬼鮫。もうすぐ――木ノ葉だ。」
逢いたい。
夜を超えて。
時を超えて。
今、逢いたい。
fin.
‐‐‐‐‐
「お/ま/えだったんだ」氣/志DAN
一回このEDパロやりたかったんだ。原型一切止めてないけどね。ちくしょー!
内容はさておき、心はお祝いしています。兄さんおめでとう☆
【100609】
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