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えいぷりるふーる

「ナ、ナルト……、」
「何?サクラちゃん。」
「アンタの後ろに幽霊が…。」



ギャ―――――ッ!!



「フフフ。ウソよウソ。」
「はひ……?」
「今日は4月1日よ。」





えいぷりるふーる

















「今日何の日か知ってるか?」

春おだやかな日。
第7班としての任務を終えてからの話しです。

なぁなぁ、と話しかけたのはナルト。眉をよせて、面倒臭そうに振り返ったのがサスケ。

「今日は何でもウソをついていい日なんだってさ。」

にこやかに話すナルトは、まるで、自分だけしか知らない秘密を教えてあげるかのようです。

「今日は……4月1日か。」
「なんだ。サスケ知ってたのかよ。」

サスケが知っているとわかると、ナルトは残念そうな顔をして、少し口を尖らせました。
けれどもナルトは気をとりなおし、話しを続けました。

「つまりさ、今日言ったことは全部ホントにならないんだろ?」
「まぁ、取りようによっては可能だろうな。」

サスケは、ナルトがどうせまた下らないイタズラでも思いついたのだろうなと思っていました。


「じゃさ、オレがこれから言うことは全部、ウソ、だからな。」

けれど、そうではない様子に、サスケはナルトがそうまでしてつきたいウソが気になって、大人しく聞いてみることにしました。



「あのな、まず、サスケは木ノ葉を抜けて音へ行こうとするんだ。」

ピクリ
サスケはかすかに動きます。

ナルトは静かに続けました。

















オレはサスケの里抜けを止めようとして、シカマルを隊長に班を編成して、追いかける。
だけど、音忍の連中に邪魔されてなかなか追いつけない。

ようやく見つけたと思ったら、サスケは一人言を呟いて、どこかへ行ってしまう。

オレは、必死になって説得するんだけど、聞きいれちゃくれねぇ。

サスケは、復讐で頭がいっぱいなんだ……。

それで、戦うことになって、螺旋丸と千鳥がぶつかって……サスケはオレを殺す気だったんだって、わかった。

本気の、千鳥だった。

それでもサスケは、オレを認めてくれた、大切な友達だ。仲間だ。

だから見捨てるわけにはいかねぇ。

手放すわけにはいかねぇんだ。

いかなかったのに……。

止められ、なかった。

サスケは、力を求めて、行ってしまったんだ。


残ったのはオレと傷の着いたサスケの額当てだけだった。サスケは気配も臭いもどしゃ降りの雨がさらって行ってしまったんだ……。
















ナルトが話し終わった後、二人とも、何も話そうとはしません。

サスケは、ナルトの話を、ただただ黙って聞いていました。

黙って聞くことしかできませんでした。

ザワザワと木を揺らす音だけが響きました。

もともとじっとしていることが苦手なナルトはこの沈黙には堪えられませんでした。体をもぞもぞさせて落ち着かず、ふいに顔を歪め、ニシシと笑って言いました。

「まぁ、これってばぜーんぶ、ウソ、だし。ホントのことじゃ……」

「下らねぇな。」

ようやく生まれた新たな音をすっかり断ち切ってしまうかのように、サスケは、ナルトの言葉を止めました。

「そんな昔話…ウソにしようとしたって、ただの現実逃避じゃねぇか。」

低音が、響きます。

ナルトはハッとしました。

そして同時に、
チクリ
胸の奥でそんな音が聞こえました。

サスケは、里抜け以来ずっと会えなかった日々が辛くなかったのだろうか。

寂しくて仕方のない毎日を送っていたのは自分だけだったのだろうか。

ナルトは思いました。

サスケと離れた分だけの心の距離がまだ埋まってないということなのでしょうか。

「過去は、変えられねぇんだよ。……何が、あっても。」

サスケはどこか、切なそうでした。

ナルトはそれ以上何も言えませんでした。


「どうせつくなら、これから先のウソだろ。」

サスケが話し始めます。


「これから、サキ……?」
「そうだ……。」


どこか遠くを見つめ、ゆっくりと――。

















夜だ。
昼間あんなに照らしていたの光を、全て吸い尽すような、夜。

闇だ。

その闇に紛れるような黒髪に黒の目をした忍がいた。







「……それってオマエじゃん。」
「…黙って聞いとけ。」







追っ手が数十名。多勢に不勢。敵うわけもなく、あっというまに捕えられた。

身体や顔に殴打を繰り返されたのち、殺傷。

至る所に残る痣、うっ血。切り傷、刺し傷。流れ出る液体。

赤い…紅い鮮血を地面に吸い込ませ、肉を引き裂くような音が闇に響く。

既に息絶えたにも関わらず、内臓をえぐるようなその音は止むことが――





「……ッそんなのないってば!!」





突然ナルトが叫びました。

















「サスケがそんな、そんなことになるなんてッ、ありえねぇってばよ!!何が殴打だ。何が殺傷だ。そんなんサスケじゃ……ッ。」

半泣きになりながら言葉に詰まるナルト。そんなナルトに、サスケはフンと鼻を鳴らして言いました。

「……このオレがみすみす死んでたまるかよ。」
「……え?」
「今日は何の日だウスラトンカチ。」
「あ。」




「全部ウソだ。あり得ねぇ。このうちはの名にかけてそんな犬死にはしやない。」
「……。」
「第一、追っ手が数十名程度で捕まえられるかよ。」
「…アハッ。」

一度笑ったらとまりませんでした。周りに響くのはナルトの声。あまりのサスケの高慢っぷりに、耐えられませんでした。





ナルトは、サスケがいなくなったあの時を思い出したくありませんでした。

サスケが好きで好きでしかたなかったのに、
何があっても、なくしたくなかったのに、


なくしてしまった。


その切なさ、絶望、虚無感。後に残された苦痛の日々。

だから、その日々をなくしてしまえば、ウソにしてしまえば、あの時味わった苦しみも全部無かったことにできるんじゃないかって。

そう願って吐いたウソ。

だけど、
だけど本当は無くしてしまうことなんか出来なくて、サスケがいなかった現実はキチンと受け止めなければならなかったのです。

過去にあった事実は変えられません。サスケがいなかったことも本当で、苦しかったことも本当で、ウソになんかなりはしません。

けれども、これから先の未来を変えることなんていくらだってできます。

サスケがいない間、苦しいこともありました。泣きたい時もありました。

だとしても、こうして今、サスケが目の前にいてくれます。そのことが、本当に、幸せだと心底思えるです。

苦しかった頃の自分がいたからこそ、今が幸せだと感じる自分がいるのです。

サスケは、そのことを気づかせてくれました。

「ハハッ…サスケのせいで腹が壊れるってばッ。」
「知るか。」

ナルトの笑いがようやく収まってきたころ、

「サスケってば、なんで…」
「…なんだ。」

ふっと笑顔になったナルトは、

「大好きだってばよ。」

そうとだけ言いました。

すると、少し照れてばつの悪そうな顔をしたサスケと、

そんなサスケをみてますます幸せそうにするナルトと、

そのふたりを包むかのように、暖かい風がさぁっと吹き抜けていったのでした。



サスケが木ノ葉を出たことは変えられない事実。

過去の事実を変えることなど、今を生きる人にとって、到底かなわない願い。

けれども、その過去の苦しみを乗り越えて、人は、強くなっていくのです。

そのための、未来なのです。















fin.
‐‐‐‐‐
高校時代に書いてたのを無理やり完成させたのだからこっぱずかしくて見返せない←

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