永久笑顔(※血) にこにこにこにこ。 君はいつも笑っているから。だから、大丈夫だって安心してた。 日に当たらない真っ白な腕には複数の切り傷があって、床には血塗られた苦無が一本。 治癒力の早いキミだから、幾つかの傷はもう治りかけているけれど、それでも完全には癒えることなく、痕に残って消えないだろう。 初めて見たのは、商店街で。 一緒に買い物をした。 その時に向けられた異様な圧力。オレがヒトリになった時に浴びせられた好奇の目とはまた違う、それは憎悪に満ちた、視線。 何故。大人達が彼を嫌っているのは知っていた。けれども、どうしてそこまで彼にそんな視線が向けられるかは知らなかった。彼に浴びせられる嫌悪感に、オレはいつかの嘔吐感を彷彿させた。 けれどもキミは、そんな視線を余所に、こっちを向いて笑っていた。真っ白い綺麗な歯並びをチラつかせ、オレの手をとり笑っていた。 その笑顔には、全く屈託がなかったんだ。 何故。そんなことはどうでもよくなった。ただキミが笑っていたから、それだけで安心した。 それからも、度々、一緒に出かけたが、いつもナルトは笑っていて、そんな視線など気にならなくなっていったんだ。 コイツはすごい。 どんな嫌悪感も、たった、そのひとつの笑みでうち壊してしまうのだから。 その時オレはそう感じていた。 コイツといれば、嫌なことなどどうでもいいような気持ちになって、痛みなどこの世に存在しないのではと思えてきたんだ。 でも、それは違ったみたいだ。 持ち主をなくした紅い苦無は、独り虚しく転がっていた。 オレは、それを拾い上げることすらできずに、ただ見つめることしかできなかった。 そんな顔して笑わなきゃいいのにね。 誰かが呟いた。 嫌なことに顔を背けてばかりでは、何も解決しないよ。 それは、絞首台の笑顔。 fin. [*前へ][次へ#] [戻る] |