よく星の見える月(シリアス?) 新月。太陽の光が照らさせていない月の裏側。 眩しい輝きもない、暗黒の空がただただ広がっていた。 家に帰れば無灯。遠慮気味に玄関の所だけともしてある。只今と誰も迎えてくれるはずのない家に挨拶し入ると、そこには見覚えのある靴。その置き方といったらそれは酷いもんで。誰がいるか一発で分かった。 こんな暗い中電気も付けずにどこにいるんだと探してみると、縁側で空を見つめる姿があった。 外は暗い。辺りを照らす光もない。それでも分かる。金色の髪、以前よりも少し広くなった背中。やっぱり猫背。 「……何見てんだってばよ。」 後ろ姿にみ惚れていると、気配に気付いたのだろう、声をかけられた。振り向くことはなかったけれど。 「用があんなら言えってば。」 ……そんなもの、あるわけない。ただただ、姿を見ていたいだけだった。金色の髪が、少し広くなった背中が、猫背が、愛しくて。愛しくて。 だから、 「別に……。」 思ったままを言って沈黙。 瞬くのさえ惜しいくらい。 その姿をずっとこの目に焼き付けてしまいたかった。 見失ってしまわないように。 なくしてしまわないように。 ずっと、ずっと、見つめていたい。 「……何も用がないなら見てんじゃねぇってばよ気持ちワリー。」 そうやってじっと動かずにいれば悪態。しかしそんな言葉だって、こんなにも愛しく思えて。そんな自分はもはや病気なのかもしれない。 けれども、病気だと自覚しても、コイツにかけられた病気なら、いっそ病に倒れてしまっても構わない。 それだけ、愛しくて。 随分骨抜きになったなと、自分でも呆れるくらい……。 「だからッ、」 相変わらず何も言わずに見ていたオレに、ナルトはついに怒りだし、ぐるりと振り向きじと目で睨む。 「見てんなッて!」 それでも黙って見つめていると、ふと視線を下にして、金色の髪で表情を隠し、 「せっ……」 聞こえるか聞こえないかの微妙な声で呟くから自然と耳を傾けて。すると、 「せっかくいるんだからこっちにこいよなッ!!」 と、顔を真っ赤にして言うもんだから、思わず口の端が上がってしまう。 「……そんなに寂しいなら言えよな。」 声は努めて冷静に。しかし、内心嬉しくて堪らない。 「寂…ッ!?違うってばよ!!」 好きだと思うのはオレだけじゃなくて。 「ハイハイ、わかったわかった。」 「なんだってばその上からの態度〜ッ!」 怒って頬をふくらませ、ぷぃっと向こうを向いてしまえばおかしくて、 「悪りぃナルト、機嫌治せよ。」 隣に座り肩を抱く。 最初はちょっと嫌がるも、段々と重みを掛けられるのを感じれば、やはり愛しさが込みあげてきて。 髪にそっと唇を落とす。 愛してる。 その想いをのせてみれば。 スッとひとつ、 「サスケ!今、見たッ!?」 星が、流れた。 今日は新月。太陽に照らされることない月の裏側。 けれども、 星たちはキラキラ瞬いて、 その輝きを放っている。 Fin. [*前へ][次へ#] [戻る] |