非理性的衝動/典/裏 あの薄いレンズの向こうの鋭い眼差しは、きっと何があっても揺るがないものと思っていた。 「え…と…?」 だから、ベールヴェルトに急に腕を掴まれ、そしてその高い鼻がぶつかりそうなくらい顔を近付けられると、どうして良いか分からなくなっちゃうんだよ。 「…名前がわりぃ。」 「え、え…?ちょっ、まっ…ん…!」 そのまま唇を塞がれ、とっさに身体が強張って瞼をキツく閉じた。 「やっ、ん…ぅ…!」 一瞬唇が離れたと思ったら下唇を軽く噛まれて、またすぐに角度を変えて押し付けられた。 逃げようにも後頭部に手が添えられてて、身動きがとれない。口の中に舌が入ってきた。 「ん、む…ちゅ…、」 上あごを撫ぜられ、舌を絡められる。チュ、クチュと音まで漏れて、背筋がゾクゾクした。ちょっと荒々しく深い口付け。 「はぁっ…あっ…、」 軽く吸われながら唇を離されると、舌と舌が糸を引いた。 「や、待って…!ヴェール…!」 腕を掴まれたまま服の中に大きな手が入ってくる。腹部を撫でられ、とっさに懇願した。 「も待てね…、おめがあんな誘うのがいけねぇんだ…。」 「ま、やあ…っ!」 確かに普段から私はベールヴェルトに対して悪ふざけが過ぎていたかもしれない。この人の少し困ったようなしかめっ面が好きだったのだ。 |