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エックスデー
※沖土 パラレル



 「土方先生、今日誕生日
 なんですかぁ?」


 クラスの女子が唐突にそ
 んな質問をした。土方さ
 んはそっけなく、おう、
 と返事をしてすぐに教室
 から出て行った。そうだ
 よあの怖そうに見えて実
 は優しい土方センセーは
 こどもの日生まれなんだ
 よ、何か笑えるだろ、可
 愛いだろ、俺はてめぇら
 が土方センセーの誕生日
 を知るずーっと前から知
 ってんだ、どうだすげぇ
 だろ、なんて頭の中で考
 えてたのが誰かに知られ
 たら多分俺は死ぬと思う
 。



 「土方センセーこんにち
 わー」



 放課後、数学科準備室と
 いう名の俺の溜まり場に
 足を運んだ。部活のない
 水曜日は大体ここにいる
 。この学校に数学を教え
 る奴は土方さんとよぼよ
 ぼのじーさんしかいなく
 て、殆どじーさんはこの
 教室にいない。つまりこ
 こは土方さん専用の教室
 と言っても過言ではない
 わけだ。即ちそれは俺専
 用ということにもなる。



 「おう、総悟」

 「土方センセー今日誕生
 日なんですかぁ?」

 「……聞いてたのか」

 「別にー。聞きたくもね
 ぇのに耳に入ってきただ
 けでさァ」

 「そんな言い方ないだろ
 うが」

 「だってあんたが俺以外
 の奴と話してんの見るの
 嫌だ」

 「んな事言ったって…て
 めぇ以外の人間と話さな
 いで生きるのなんて無理
 だろ」

 「いっそのこと家からで
 ないでくだせェよ」

 「俺を無職にする気か」

 「無職のあんたも俺は愛
 せますぜィ」

 「…俺は無職の自分は嫌
 いだ」

 「流石ナルシスト、いつ
 でも自分のことを好きで
 いたいって訳ですかィ」

 「ナルシストじゃねぇよ
 !変な解釈すんな!」

 「あーあ、土方さんが俺
 だけの先生だったらよか
 ったのに」



 我ながら餓鬼臭いとは思
 う。それでも嫉妬心は沸
 き出るように生まれるし
 、押さえる事などできな
 い。俺はまだ高校生で、
 社会人になってしまった
 土方さんに追いつくこと
 はできない。もどかしい
 。絶対に近付かない年齢
 。一年近付いたと思えば
 また誕生日が来てしまう
 。幼い頃は多少の年齢差
 なんて気にならなかった
 が、今は違う。高校生と
 社会人、ましてや生徒と
 先生なのだ。差は開ける
 一方である。



 「…誕生日おめでとう、
 なんて言いませんよ」

 「別に頼んでねぇよ」

 「とか言っちゃって、何
 か悲しそうな顔してます
 ぜィ」

 「してねぇし」

 「素直じゃないねィ」

 「別に言葉で言われなく
 たって、てめぇがいりゃ
 それでいいよ」

 「…何ですかィソレ、殺
 し文句?」



 たまに土方さんは可愛い
 ことを言う。自分では恥
 ずかしい事を言っている
 という自覚がないから、
 さらりとそういった発言
 をするが俺にとっちゃ大
 変ドキドキするわけで。
 他の奴にもこんな事言っ
 てるんじゃないか、って
 余計な心配までしてしま
 う。



 「ま、年とってまたおっ
 さんへの階段を一歩上っ
 たってとこですかねィ」

 「うるせぇ、大人の男に
 なったと言え」

 「……死んでも言いやせ
 ん」



 確かにあんたは年を追う
 ごとにどんどん逞しく色
 っぽくなっていくよ。俺
 には一生追いつけない、
 数年先を着実に歩んでく
 。その度に俺は置いてか
 れた虚無感とかに襲われ
 るけど、あんたには知っ
 たこっちゃないんだろう
 ね。だから俺は絶対に誕
 生日を祝ったりしない。
 あぁ、どうかカミサマお
 願いします。来年は土方
 さんの誕生日が来ません
 ように!!











あきゅろす。
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