08、 かっこ悪いから見ないで
※銀土 原作
銀時はよく泣いている。情事を終えた後眠りに落ちようとする時が一番多いが、こないだなんかヤってる最中に泣いていた。
でも何となく涙の理由聞けなくて。踏み込んで来るな、と銀時が無言で訴えて来る。だったら俺の前で泣くんじゃねぇ、と言ってやりたいが、それすらも口に出せない程銀時の表情は哀しげだった。
俺じゃその哀しみを拭い去る事は出来ないんだな。相談をしようと思える相手でもねぇんだ。俺はお前に何でも話せちまうのに。組の事から自分の事まで全部全部。
それが一番ショックだった。
今夜もまた銀時は泣く。泣くと言っても涙が一筋流れて、それを銀時が俺に気付かれないように拭き取るだけなのだが。
だけど今日は違った。
その涙を隠そうともしない、いやに真面目な顔した銀時が俺の前にいる。
暫くの沈黙の後銀時は呟いた。
「なぁ土方くん。永遠ってあると思う?」
「………さぁ。」
そんな曖昧なもん、信じるのは難しい。適当に返事をする。
「俺な、未来が見えないのが怖いんだ。ずっと先もこの場で生きて行く未来が、土方との未来があるのかもすらも分からない。またあん時みたいに、全部おっことしちまうんじゃないかって思うと居ても立ってもいられない。」
あん時って何時だろうか。きっと俺に会う前、攘夷時代のことだろう。銀時は続けた。
「俺は今幸せすぎて、失っちまった時が怖い。もうあんな思いは嫌なんだ…」
「……銀時」
「知っちゃったから、人間がこんなに暖けぇって知っちまったから…戻れねぇんだよ」
「銀時…もう、戻らないから」
「え」
「もう戻らないから。絶対俺が戻らせたりなんかしねぇ。それにな、お前は前とは違うんだ。白夜叉って呼ばれてて、目の前の敵片っ端からぶった斬ってたあの頃とは。あの頃は与えたモノも与えられたモノもなかったろ?今はどうだ?俺はお前からいっぱい貰ってるぞ。例えば…ちょっと行き過ぎな、あ…ぁ愛情とか…」
ここで銀時は笑った。
失礼な野郎だ。俺が必死に慰めてやってるっつうのに。
「愛情かあ…。土方くん、可愛いね。……俺本当にあげられてるのかな。何か貰ってばっかな気ィするけど…」
「そ…そんな事ねぇよ。さっきから言ってるだろ。」
「……そーだね。うん…ごめんね土方くん。でも何かどーしよ…涙止まんねーわ」
「……別に泣いていいんだぞ」
「うん…ありがと。…あ〜…でもかっこ悪ぃから見ないで」
「お前がかっこ悪ぃだなんて何時もの事だろ」
二人一緒に笑った。
永遠なんて保証できない。人の感情は移ろい変わり行くモノだから、そこに不変の形が出来る事なんて滅多にない。
だからといって求められずには居られない。互いを思えば思う程、永遠は必要性を増す。それは相手をがんじがらめにする為?一生離さない為?どちらにせよ、永遠を欲する事が愛の証しになるだろう。
君の涙は手に入らない永遠を嘆いている。
だけど永遠なんて、一瞬が何個も積み重なって出来るもんだから。難しい事考えずに時を重ねるしかないのだ。
それに俺は永遠なんて無くたって構わない。お前のかっこ悪い姿見れればそれで結構人生満足なんだ。
そう言おうかと思ったが、こっ恥ずかしいのでやめる。
代わりに優しく頭を撫でてやったら調子に乗って抱き付いてきやがったから、今日だけだぞって優しく答えてやった。
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