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07、 俺なんかでいいんですか?
※山土 3Z









副長は朝から機嫌が悪かった。今思えば落ち込んでいたのかもしれない。こんな弱った副長は見た事がない。




「今日は委員会だからちゃんと出席しろよ〜。サボった奴はランニングホームラン打ちながら徒然草暗唱な」



銀八のやる気ない声が教室に響き、志村のランニングホームラン打つ事がそもそも難しいです!という適切な突っ込みが入る。


委員会は何時も副長が取り仕切る。なんてったって局長は役に立たないし。俺は補佐役。本来なら沖田さんだが、委員会に真面目に出席したのは数えられる程しかない。




「山崎…」



「副長。どうしました?」




「今日はさっさと済ませよう」


「……はあ。」



珍しい。普段なら細かい所まできっちりやって、他クラスの委員から苦情が出るくらないなのだ。



そしてその言葉通り委員会はさっさと終わってしまった。
勿論委員長と沖田さんはいない。委員長は志村姉の尻を追いかけていて昇天し、沖田さんは理由を訊くに訊けなかった。訊いたら訊いたで地味のくせに、などと難癖つけられるので訊きたくもない。



「お疲れ様です副長。じゃあ俺帰りますね」




「…………待てよ」




「へ?」




「行くなよ…」







思いがけない言葉に目を見開く。あのストイックでクールな副長が?俺の憧れで好きで好きで仕様がない副長が?



「……どうしたんですか?」




「わかんねぇ…とにかくまだ…行かないでくれ」




「…俺でいいんですか?」




「…お前がいいんだよ」




今この教室には俺と副長しかいない。だからお前とは俺の事で。何が起こっているのか理解出来なかった。


副長が俺を必要としている?




「…大丈夫ですからね」




「……うん。悪ぃな…」



何時になく弱々しい副長に言葉をかけると、こてん、と机に倒れこんだ。そしてぽつぽつと話し出す。




「俺な……何か気持ち悪ぃんだ。お前が俺に付いててくれんのは風紀委員だからで、特別な事なんて何一つないって分かってんのに…でもお前が俺を呼ぶ度に期待しちまう。……………なぁ、お前は俺の事どう思ってんだ?」




副長は顔を上げ、俺を見つめた。すごく、すごくすごく綺麗だった。あぁ、この美しい瞳が俺の事見てくれていたのだと胸が震える。


思い違いじゃない。目の前にいるこの人は俺の事がきっと好きなのだ。仲間とかそんな感情じゃなく、俺と同じ気持ち。




「…可愛くて仕方ないですよ」



そう答えると副長は複雑な顔をした。でも決して哀しそうじゃなくて、優しくて蕩けそうな微笑み。






これが俺のモノになるのはほんの数秒後の事だった。











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