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13、刹那感覚
※山→土 原作



 痛くはなかった。傷
 ついた局長を見る副
 長の顔を見る方がず
 っともっと痛いだろ
 う、って頭の奥で考
 えたら迷う必要なん
 てなかったし。それ
 より何より、真選組
 には局長がいなきゃ
 ならないから。俺は
 代わりが利く只の一
 隊員だ。だから別に
 、死んでも構わない
 。




「山崎ィイィ!!」




 局長、大丈夫ですか
 ?俺は大丈夫そうで
 す。死ななくて済む
 かもしれません。そ
 んなに泣きそうな面
 せんで下さい。あん
 たが泣くと副長がこ
 っちに気を取られち
 まうでしょ。だから
 早く戦いに戻って。
 副長を守って下さい
 。知ってますよ俺。
 あんたがさり気なく
 自分の戦いだけじゃ
 なく周りの隊員を守
 って戦ってること。
 俺も守られたことあ
 りますし。だからあ
 んたは慕われるんだ
 。ほら、お願いしま
 すよ。副長も、沖田
 隊長もみんなみんな
 あんたが心の支えな
 んです。俺は端っこ
 で待ってます。戦い
 が終わるまで死なな
 いように頑張ります
 から。


 そこまで考えたとこ
 ろで俺の記憶は途絶
 えた。局長が再び立
 ち上がり血眼になっ
 た攘夷志士と剣を交
 えた姿がやけに頭に
 こびりついている。




「山崎、」

「……副長?」


 副長がはあ、と溜め
 息をついた。目覚め
 が副長の前だなんて
 随分幸先がいい。



「……よくやった」

「え?」

「山崎、ありがとう」



 なんでだろう。何で
 俺は副長に感謝され
 ているのだろう。状
 況が掴めない。えー
 っと、俺は攘夷志士
 との戦いの最中に局
 長を庇って…で、今
 病院?って感じのは
 ず。何で副長が?



「お前が居なかったら…近藤さんは死んでたってさ」



 お前が近藤さんの盾
 になってくれたお陰
 で、近藤さんはもろ
 に刀を受けないで済
 んだ、と副長は泣き
 そうな声で言った。



「でも俺、背中に傷つくっちまいました…切腹ですか?」

「逃げを打った訳じゃねえ。んなことしなくていい」



 静かだった。副長が
 いるとそこの空間は
 穏やかに時間が進む
 気がする。



「……ありがとう」

「いや、そんな」

「俺は、もし刀を近藤さんが受けてたかと思うと情けねえけど…震えが止まらねえんだ。…怖いんだあの人が死んじまうのが」



 ありがとう、山崎、
 と副長が呟いた。そ
 の刹那に流れたなみ
 だがきれいで、おれ
 は、どうすればいい
 かわからなかった。
 ふくちょう、なかな
 いで。ああ、この瞬
 間が、この刹那がお
 れのすべてかもしれ
 ない。からだがふる
 えて、なみだがでそ
 うで、しにたくなっ
 た。あんたがないた
 らおれが局長をかば
 ったいみがなくなっ
 ちゃうよ。あんたを
 なかせたくなかった
 のに。でも、でも、
 ありがとうって。そ
 れだけで、おれは、




「…副長」

「…んだよ」

「泣かないで、下さい」

「……泣いてねえ」



 そう言い切って目許
 を袖でぐい、と拭っ
 た副長は何時も通り
 で、俺も何だか安心
 した。




 もういつ死んでも構
 わないなあ、と思っ
 た。あの人が俺の前
 で泣いたんだから。
 あの人のなみだを見
 れたんだから。それ
 だけが生きてきた証
 な気がする。あの刹
 那だけが、おれの。




刹那感覚
その瞬間が全てだった










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