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11、最終感覚
※山トッシー 原作
 
 
 
 
 
キスしてたらどっちがどっちでどれが誰だか分かんなくなっちゃって。でも気持ちいいからそれも有りかな、なんてぼーっとした頭で思った。





あんたと彼をてるもの




「つー訳で山崎、トッシーのお世話ヨロシク」
 
 
沖田隊長にそう告げられて早数時間、俺は既に疲れ果てていた。
 
 
「ねーねー山崎氏ー。一緒にトモエちゃんのアニメ見て欲しいでござるー」
 
 
さっきから副長もといトッシーはそればかり繰り返す。一人で見てればいいじゃないですか、と言えば、一人じゃつまんないでござる、と二十代男性とは思えない発言をぶちかますのであった。
 
 
何で副長はまたあの厄介なトッシーとやらのキモオタになってしまったのだろう。沖田隊長曰く理由はないらしいが、迷惑にも程がある。
 
 
 
「山崎氏は拙者の事嫌いでござるかあ……?」
 
 
そう、迷惑なのだ。その泣きそうで震えてる唇とか、揺れてる瞳とか、何時もと全く違うその仕草が。
 
可愛すぎて迷惑なんだよオォ!!
 
 
何なんだアレは。副長の姿をしてかわいこぶりっこをするアレは一体何なのだ。中身は確かに副長じゃない。副長はストイックで暴力的で、でも時たま可愛くて、っていうのを含めて副長なのだ。でもトッシーの顔はあくまでも副長。性格がどんなにヘタレでオタクで泣き虫でも俺の目に映るのは副長の顔なのだ。
 
 
可愛すぎんだよトッシー!!
 
 
あの庇護欲をそそる仕草。世話を焼くのが趣味のようなもんな俺にとってアレは最強の武器だ。普段だって十分天然で俺が色々してやらなきゃなんないのに、トッシーときたら自分では何一つ出来ない。なので俺が全てをしなきゃならない。しかしそれが嫌じゃないのだ。何故?…可愛いからである。
 
だからこそ困るのだ。こんなに可愛くては何も手に付かなくて、手に付かないどころかトッシーに手を出してしまいそうになる。
 
 
それはまずい。非常にまずい。トッシーは副長と変わらず俺の事を好いていてくれるけれど、やっぱり別の人格なのだ。
 
 
「ねぇ、山崎氏ったらー」
 
 
「あ〜もう!分かりました分かりました!見りゃいいんですね?」
 


遂に根負けして俺はテレビの前に腰を下ろした。幸い仕事は殆ど済ませていたし、ちょっとくらいいいか、と小さく溜め息をつく。
 
 
「ほら、新オープニングでござるよ!おぉ〜、トモエちゃんかわゆすなあ…」
 
 
かわゆすはお前だ!と突っ込みたくなる。何故かトッシーは俺にぴったりとくっついて座っていた。時折ちらりとこちらを見やる視線が堪らなく愛しくて、俺は逸る鼓動を押さえた。
 
 
「山崎氏、ちゃんと見てる?」
 
 
トッシーが俺の顔を覗き込んで来た。駄目だ。駄目。もう頭ん中真っ白。副長の、否、トッシーの肌理細かい肌がしっかり見えて。
 
 
もう、知らない。そのまま俺は顔を極限まで近付ける。
 
 
 
「山崎氏………?」
 
「あんたが悪いんですからね」
 
そう掃き捨てて、俺はゆっくりと唇を押しつけた。
 
 
「ぇ……ふぅ…」
 
 
最初は軽く口付けるだけだったけど、段々深く強くしていった。息も出来ないくらい、口ん中全部舐め上げて、歯列を綺麗になぞる。トッシーの舌を絡めとろうとしたら、ひょい、と逃げられたけど気にしないで追いかける。掴まえた、と言わんばかりに舌と舌をはわせると、トッシーはぶるりと震えた。トッシーから抵抗らしい抵抗は、ない。
 
 
 
「………は…っ」
 
「あー……」
 
 
流石に自分も辛くなったので、名残惜しかったがトッシーを離した。二人の間に糸が伝っているのが妙に卑猥で、恥ずかしい。
 
 
 
 
「…何盛ってんだよ」
 
「…え?副長…?」
 

その声は確かに副長だった。でも…。


「何でいきなり戻れたんすか?」

「…何時までもヘタレオタクに負けてられっかよ」


「…また随分とタイミング良く戻ったんですね」

「…あいつなんかに山崎がキ…キ…キスすんの嫌だったからな…」



そう呟いてから副長はボシュゥッと音がするかと思うくらい真っ赤になった。



「…そんな照れんなら言わなきゃいいじゃないですか」

とか言いながらも俺の顔のニヤけは止まらない。

「うっせ…」




副長は今だに赤い頬を手で覆い、暑ぃ、と言った。




あんたとトッシーを隔てるのは嫉妬心。大人だからこそ焼き餅を焼く。子供だからこそ無邪気で無関心。彼からあんたに戻る時、彼の最終感覚は、甘い甘い蜜の味。それより怖い、鬼の顔。









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