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ポニーテール
※銀土 原作




「え、何、土方って昔ポニーテールだったの?」




暇に任せて歌舞伎町をぶらぶらしていたら沖田に会った。別段用もないが団子を奢ってくれるというので付き合ってやることにした。何で奢りなんて粋な真似するのかは扨置き、衝撃の事実を耳にしたのは丁度二串目にとりかかった時だ。




「そうでさァ、うざったい長髪でねィ」

「へー……うっわーそれやべぇ心の底から見てみたいわ、何だ、コレか、コレが萌えという気持ちなんですか?」

「……気持ち悪ぃから死んで下せェ」

「死ぬ前にもっと詳しく土方のポニーテールについて話せ」

「いや死ぬのはあんたですし、ポニーテールでそんなに話は広がりやせんよ」

「写真とかねぇのか」

「屯所に行きゃぁあるんじゃねぇですか?」

「よし、屯所へ行こう」

「俺ァ今一応仕事中なんで戻る訳にはいかないんでさァ」

「ほら早く金払え総一郎君」

「おーい話し聞きなせェ死んだ目をした魚」

「いや違うからね、俺は魚じゃないからね、俺の目がしんだ魚みたいなだけだからね…ってそうじゃねぇよ」



もう仕事なんざ終わったことにしちまえばいいだろ、と半ば強引に沖田の腕を引き、屯所へと向かった。普通ならしょっぴかれる時以外は通らない屯所の門をくぐり沖田の部屋へと上がり込んだ。案外綺麗な部屋で、ドS王子の意外な几帳面さが窺える。

「えっと……野郎の写真なんか殆ど丑の刻参りに使っちまったからなァ」

「俺の土方にあんま変なことしないでくれる?」

「……スルーでいいですかね?」

「よくない。もう土方を呪わないと誓え」

「そんなこと誓うくらいなら鼻かみます」

「鼻?そこは舌噛めよ。ただ単に風邪気味の人じゃねぇか」

「俺花粉症なんでさァ」

「ふーん……で、写真は?」

「あぁ、ありやしたよ」



はい、コレ、と手渡されたのはくしゃくしゃになった古いモノだった。しかしそこには確かに若かりし頃の土方が写っている。ポニーテールの、土方が。その姿はまるで…何だろ、まるで……、いや、例えが思い付かない程他を逸した愛らしさだった。やべぇよコレ、銀さん限界突破しそうっつーか幼いな土方可愛いな土方。あぁ何で俺はこの頃の土方に会えなかったんだろう。本当に無念だ。沖田や近藤が心の底から羨ましい。いや憎たらしい。



「コレ貰っていい?つーか死んでも返さねぇ」

「別にいいですよ、あってもどうせ丑の刻参りに使うだけだし」

「だからその陰湿な儀式をやめろっつーの!」

「一向に効き目が現われないんでさァ、やり方間違えたのかねィ」



「効き目なら充分現れてるぞ、てめぇのお陰で俺の頭はかち割れそうだ」


マイスウィートハニー土方のお出ましだ。ごめん、今のは気持ち悪かったと自分でも思う。



「ひーじーかーたー!」

「うわ、てめぇいたのか」

「土方に会いに来たんだよ!」

「嘘言いなせェ、写真もらいに来たくせに」

「あぁ?写真?」

「えぇ、旦那があんたがポニーテールの頃の写真見たいってうるさいんで」

「……んなもん見せんな、没収だ」


そういうと土方は俺の手にしっかりと握られた写真を奪おうとした。させてなるものか。


「……離せよ坂田」

「嫌だ」

「もう見たんだろ」

「家でも見てェ」

「気色悪ぃから離せ」

「気色悪かろうが何だろうか絶対離さねぇ。ポニーテールは俺のモンだ」

「いやてめぇのモンじゃねぇし」

「土方イコール俺のもの、だったら土方のポニーテールイコール俺のもの、だろ?」

「だろ?じゃねぇよ変態野郎!!くそっ、総悟面倒なことしやがって」

「なんでィ、写真ぐらいやりゃぁいいじゃねぇですか、これだから心の狭い人間は嫌なんだ」

「うるせェ!!とにかく俺の写真が万事屋にあんのが嫌なんだよ!」

「万事屋なんかに置いとかねぇよ!常に俺の懐に入れとくもんね!!」

「おまっ……気持ち悪ぃよ!!まじで気持ち悪ぃ!お願いだからその手を離せ!」

「嫌だっつってんだろ!おいそんなに引っ張んなよ、破れるだろ!」

「いっそのこと破れちまえぇ!」

「あーもー煩ぇなァ」



たまに良いことしてやったら途端にコレなんだから、全く旦那もまだまだですねィ、と沖田は零しながら徐にライターの火を写真につけた。え?火を写真につけた?え?



「総悟ォオォ!!おまっ、あちっ、あっつ!!」

「ああぁぁあ俺のポニーテールがぁあぁ!!」




そう叫ぶと、二人同時に手を離した。畳に落ちた燃え盛る写真は燃焼範囲を畳に広げた。これ普通に火事じゃね?



「山崎ィィイィ!!水!消火器持ってこいぃいいぃ!」

「はいよー」



山崎はその場に似つかわしくない冷静さで消火器を手にして部屋に入ってきた。途端にソレが発射され、部屋中が一気に白く変わった。



「消火、完了です」

「……ごくろう」

「なんでィ、キャンプファイヤーやりたかったのに」

「んなもんはキャンプ行ってやれよ!何で室内で燃やさなきゃなんねんだ馬鹿総悟!」

「あんたらがギャーギャーうるさいからでしょう。お陰様で耳が痛いでさァ全く」

「死ねよ!てめぇは一遍死んでこい」

「それがうるさいっつってんでさァ」



二人の口喧嘩など耳に入ってこなかった。あぁ、さようなら俺のポニーテール。短い間だったけど素敵な夢をアリガトウ。君のことは一生忘れない。いや、忘れないどころか毎日思い出すよ。思い出しすぎて飽きるくらいに思い出すよ。だからいつかまた俺に会いに来て下さい。きっと、きっとだよ。いつまでも待ってます。



「何時まで悲しんでんだてめぇはァァアァ!」



別れの言葉は、部屋の隅で丸くなっていた俺を見兼ねた土方が俺に突っ込むまで続いた。しかし数日後、今だに落ち込んでいた俺をなぜか山崎が励ましてくれ、別のポニーテール土方の写真をくれたのは土方には内緒の話である。




ポニーテール(男のロマンなんだよ!)








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