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二話

はぁ……はぁ…

―まだ僕は覚めたくない―

真っ赤に染まる頬の色。少年は年相応ではない眼をして、凶器を振りかざす。
苦悶と悲鳴、やがて絶命と取れる声を聞いた時少年は落ち着くのであった。

―もっと。もっと!!…足りないんだ…―

少年の背後には「見えざる者」が憑いていた。


*****


「殺人三人目。警察は犯人を連続殺人犯として捜査中らしい」
俺は新聞を片手に恋人、イヴに話しかける。

「それってこの街で起きてる事件だよね。…頼むから変な事には関わらないでよね」
「……」
「…もう関わってる訳ね」

イヴの勘は恐ろしい位当たる。女の勘と言う奴なのかはわからないが、過去何度かの浮気がバレている。
因みにその度に生きていてごめんなさいと思う程の地獄を見ているのだが。

「まだ微妙なラインだけどね。頭の愉快な方か裏か。線引きが怪しい」

気になるのだ。…あの一言が。
「ま、気長に見ているさ。それよりも大事な事があるし」
「何?」
「イヴが関わって欲しくない事ではないよ」
「そう……」

俺は軽くイヴの頭に手を置き、挨拶をする。
―行かなくてはならない。四人目が出る前に。

机の片隅に置かれた新聞紙は強く握り締められた跡があった。


*****

夜中。一人街中に歩く男の背中はやけに寂しい。
くすんだ赤髪、表情が様々なライトに彩られる時間。この時ほど人を「他人」と思うことはない。
俺の足は止まることはなかった。
確実に一人。他人と思えない存在がいるからだ。
常に一定の距離を保つ足音。何度か道を変え同じ道を歩いてみたが、そいつの足音が止むことはなかった。

決定打となるのは勿論、全身にピリピリと感じる程殺気が放たれているからだ。

しかしここは中心部。所謂都心だ。流石に人目がつくのは避けたいであろうことから、お互い様子見と言う感じか。
…どうやら俺から動かないと駄目なのかな。

「さぁどうなるかな」
答えなんて解っているのに自分に問いかけてみる。
足は人波をを駆け抜けている。

「そいつ」も人波を駆け抜け、おぞましい殺気を溢れさせていた。


「よっ、と」
高層ビルを縦に走り、飛翔。反対側の地面に足から落下し、膝、腰、腕、肘、そして全身で転がり落下の衝撃を吸収する。
合成術式強化系第一[功躰コウジュ]により強化された体によりビルを駆けた訳だが、これについてこれたら「そいつ」もこっち側の人間って事だ。


上を見上げる。

「やっぱり」

降り注ぐ無数の針。何十?いや何百?細かすぎてわからない。多分千単位はあるのか判断しきれない程の針が俺を目掛け降ってきたのである。
いくら人がいなくなったからって、いきなりすぎだろ。道一本挟んだらあんなに賑わってるってのに。
「さてこいつを先ずはどうにかしないと」
呟きながら唱えていた魔法、[箜重ソラ]により余裕で針の群れを次元をねじ曲げ掻き消し、
其処に針を「無かった事」にした。


「さぁ出ておいで。連続殺人犯に公式に認定されちゃった愉快の人」
「お前、何」
どこからともなく聞こえた声に俺は特に戸惑う様子もなく振り向く。
しかし戸惑ってしまった。

目の前にいるのは殺気も同じであった、そして足音も同じであった確定人物なのだが、
視界に映る人物はまだ子供だった。
そこら辺で朝遊んでいる子達と同じだろうか。
15〜16歳くらいといった感じだろう。

見た目は完全に子供。唯一違うのはその目の色だった。
真っ黒な瞳の奥に宿る深紅の赤。

「〔見えざる者〕か」


俺はこの時思い出した。
あの全身桃色の依頼者を。
報酬は次第にわかってくると。
意外にもあっさりとその答えはわかりそうだ。
確実なのは一つ、あいつも裏の人間。と言う事だろう。




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