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一話
ごく何でもない日常。
講義にいかず俺はぷらぷらと外を歩いている。
決まって特に考えず歩いていると、俺は大体ここに来る。

ファント公園。…ここは人も少ないし、建物もあまりない。
草原に満ちているし、昔から何か落ち着きたい時はここにいた。

「よっと」
街が見渡せる場所に座る。
そう。遠いのだ。この公園は。
歩くのに結構時間かかるし、階段も昇る。それなりに疲れるから普段はこない…つもりだったのだが、やっぱりいつもいる。
それこそまるでここが家のように。
………街を見渡して、何も考えない。
多分落ち着くってのは歩いて疲れているからなのではないか?とも思う。
それでもこの自然の音は気持ちいい。
隣に女がいたら最高なのに。

「クロア」

そう。こんな風に名前を呼ばれたりさ…

「クロア」

無視すると反応するまで呼んでくれたり…

「おい薄赤異常性癖野郎」

「…え?」
いきなりの罵倒に俺は振り向く。

「お前か」
「僕は変態ロリコン野郎にお前と呼ばれる筋合いはない」
「だからそれ勘違いだって」
「ふん。夜中家に連れ込んで先お風呂入りなよって言っておいて寝具及び周りを整えていたのは誰だ。しかも孕ませたとか」
「孕ませていないっ!下心はないっ。あのコはただの後輩だよ。…てかなんで知ってるの?」
「お前の悪行など世界の女性に知られているわ」
「おーある意味有名人じゃん」
こいつはシャル。フルネームは糞長いから言わない。

「しかし何しに来たの?シャルが来るなんて珍しいじゃん」
「お前に用があってな」
「何?」
「ここなら人もいない、誰にも聞かれない」
「だから、なんだい?」
「………」

少し沈黙が流れる。何この空気。もしやっ!
あれか!?人に聞かれてはまずい、あの禁断の告白ってやつか!?
女性に飽きて遂に男にきたか…

「まぁ少なくともお前が今考えているような事ではないがな」
「また嘘いって。あれだろ?恥ずかしいんだろ?」
一閃。
何処に隠し持っているのか、小さなナイフが俺の頭上を舞う。
「あのさー、ちょっと速くない?いつもならもう一言二言遊ぶじゃん」
「わからないのか」
「わかるか」
何がだ、と思う。たまにこいつは伝わりにくい事がある。まぁ今のは言葉少なすぎだけど。

「依頼だ」
「仕事か」
「それもとびきりのな」

不敵な笑みを浮かべるシャルを見て、今回は面倒くさそうだ、と思った…



*

なんでも事務所。
俺達がこっそり密かにやっている仕事。
仕事こそは少ない物、俺達の情報力・行動力・権力を買って依頼をしてくる奴がいる。
大体表沙汰に出せないようなものばかりだが。
扉を開けると、依頼主は座って待っていた。

「こ〜んに〜ち〜は〜。貴方達が有名なシャル・モデュイルス・ム・ウァークウァイエンさんと……ディト…さん」

…異様だ。大体ここに来る奴はまともな世界にいるような奴らではない。けれどこいつはかなり異様。
頭から爪先まで桃色のフリルのついた服装であり、片手には熊とも兎ともとれない人形を抱いている。

「何で俺だけ正式名称じゃないんだよ」
「見た目的じゃないか?」
「俺は意外と格好いいぞっ」

自分で言って悲しくなりながらも、お客に依頼内容を確認した。

「で、貴方の依頼がまた激しくぶっ飛んでいるんですけど、これに間違いはありませんか?」
「……」

「依頼の内容がかなり非現実的なのだがこれに間違いはないか?」
「はい。間違いありません。シャルさん」

どうやら俺とは喋りたくないようだ。

「わかった。……報酬は」
「そうですねぇ。。この依頼をやっている内に…得ると思いますよー?」
「……」
「クロア」
「ん?」
「斬っていいかこいつ。いや。わかった。刺していいか。」
「駄目だっ。確かに気持ちは凄くわかるけど人間的にやっちゃ駄目っ」
「まぁ、これが私の連絡先。わかったら連絡をくださいね♪シャルさん」

電話番号のメモを置いてそそくさと帰ってしまった。
何だか全てが受け付けない。
容姿こそは可愛い女性だが、言動、そして何よりも変なオーラが気持ち悪かった。
シャルならいけるかな。

「無理だぞ」
「ねぇ前から思ってたけど君人の心が読めるの?」
「さぁな」
「ふう…しかしこの依頼。今まで危険なの多かったけどさ、今回はちょっとヤバくない?」
「そう弱音を吐くな。僕もさっぱりわからないが」
「だーよーね。どうする。まぁ半ば強制的に受けちゃったけど…どこから手をつけるか」
「とりあえず本人の日常を見てみよう」
「…そうするか」

俺達は雲を掴むような感じで動き出した。
彼女の依頼内容は、こうだ。

[私の忘れた夢を思い出させてください]



………無理だろ。

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あきゅろす。
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