それ以外、なんて言えば良い?
姿あらわしをしたのは、どこか分からない暗闇の中だった。
遠くにはうっすら光が差し込まれているけど、俺達のいるところには光が当たらなくて、何にも見えない。
「セイラ、無事か?ばらけてないな?」
「勿論!ヴォルこそ、怪我してないよな?」
「当たり前だ。心配など、しなくてよい。私はセイラが無事ならそれで良いのだから」
………あれ、なんだろう。なんか今ドキッて言うかキュンって言うか……萌えた。
にしても、今日のヴォルはなんか変だな。なんていうか、キャラ崩壊?
嫌、闇の帝王の癖に優しい時点でキャラ崩壊してたけどさ。(え、酷い?そうでもないさ)
そんなことを考えていると、バシンと乾いた音が暗闇に響いた。
「うわ、暗…。早く行こうよ」
「その声はリドルだな!ルッシー、いるよな」
「えぇ、いますよ」
「…この暗闇では、誰がどこにいるのか分からぬな。リドル、ルシウスに日記を渡せ」
「はいはい。ルシウス、落とさないでね」
「は、はいっ」
うわー、ルシウス可哀想。絶対今緊張してるよ。…リドルはヴォルの過去でもある訳なんだし、そのリドルの媒体の日記を手渡されたんだもんな…。
うん、ここから出たら俺がリドルの日記持ってやろう。
「持ったか?」
「はい」
「よし。セイラ、ルシウス、行くぞ」
コツコツと、足音が暗闇に響いて、ヴォルが光の方向に向かっているのが分かる。
後を追うように歩みを進めれば、後ろからついてくる足音が聞こえて、ルッシーもちゃんと来ているようだ。
暫くの間、俺達は無言で光に向かって歩いていた。
「お、やっと見えた!」
「本当ですね」
俺達の前を歩いていたヴォルの姿がはっきり見えるようになった。そして、ヴォルの先にはレンガ造りの街並みが微妙に見えてきている。
ざわざわと人の声も徐々に聞こえてきて、段々と胸が高鳴ってくる。
「早く行こうぜ!」
「分かったから、服を引っ張るな」
ヴォルの前に出て、服を引っ張って催促する。ヴォルもルッシーも苦笑いだけど、そんな事気にしてらんない。
早く行きたい、ずっとずっと憧れていたダイアゴン横丁に!
「…う……わぁ…!」
とうとう道に終わりが来て、急いで道から出ると、そこに広がるのは魔法の街並み。
怪しげなお店があったり、見たこともないお菓子が売っているお店もある。歩く人々は皆魔法使い。
「凄いものだろう?私も、初めて来たときには興奮したものだ」
「えっ、ヴォルも?」
「あぁ。ここに来て…、私はここの世界の人間だと、愚かなマグルの連中と同じでは無いと感じられたからな」
「………」
なんか……こういう事聞くと、本当にマグルが嫌いなんだなって実感する。
「セイラ、」
「……ん?」
ちょっと俯いていたら、ヴォルに名前を呼ばれて顔をあげた。そうしたら、帽子越しだけど、ヴォルに頭を撫でられた。
「わっ…ちょっ…、」
「私は、マグルが嫌いだ。だが……」
帽子の陰からチラリと見えたヴォルは、優しく微笑んでいた。
「お前の事は、嫌いではない」
…………やっぱり、闇の帝王なんて思えない。(そしてやっぱり、なんか今日のヴォルは萌える!)
「私も、セイラ様の事は好きですよ」
「俺、も。……ヴォルもルッシーもリドルも大好きだ!」
3人共、俺の大好きで大切な人達なんだ。そう、祐喜や透、拓真や兄貴と同じくらいに!
それ以外、なんて言えば良い?
(大好き、大好き、大好き)
(これ以外の言葉なんか、見つからない)
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