夢見心地
ダイアゴン横丁、魔法使いの街。
俺は前から行ってみたいと思ってたし、ダイアゴン横丁で自分の杖を手に入れる事が出来ると思うとドキドキする。
しかし、ヴォルも行くとなると話しは別だ。
「ヴォルはさ、自分が闇の帝王だってこと理解してる?」
「勿論だ。だからこうして、ダイアゴン横丁の地図を(記憶を手繰り寄せながら)作ってるのだ」
「分かって無いよな。だから地図作ってるっておかしいだろ、いろいろと」
「何を言っておるのだ?地図を作れば、もし見つかった場合にどこから逃げるか、確認出来るだろう」
「だったらヴォルは屋敷で待ってろよ。俺ルッシーと一緒に行くから」
「嫌だ」
「子供か」
こっちの方が嫌だよ。
なんで初めてのダイアゴン横丁で、闇祓いに脅えながら買い物しなきゃならないんだよ。違う意味でドキドキだよ。
「ヴォルと一緒にいるだけで、死喰い人だと思われるかもしれないだろ?濡れ衣なんてごめんだぞ」
「………大丈夫だ。なんとかなる」
「なんで変な所でアバウトなんだ!せめてそこはしっかり考えてくれ!」
***
「………もう良いデス。好きにして下サイ」
「うむ」
暫くの間は、ヴォルが行かなければ問題無いと主張していたが、ヴォルは"嫌だ""却下"としか言わなくて、流石に諦めてしまった。
深くため息を吐いて、ルッシーやリドルと一緒にダイアゴン横丁の地図を作成してるヴォルに視線を向ける。
真っ黒…だけど光を浴びればキラリと光る髪。全てを支配してしまうような深い紅の瞳。整っていて、ため息をつきたくなる程綺麗な顔立ち。
見ればみるほど、欠点など無いように完璧な容姿。
どうしてだろうか…。初めて出会った日から、俺は疑問を持ち続けている。
だけど、深く考えれば考えるほど分からなくなり、極力考え無いようにしている。
―――なぜ俺は、この人をヴォルデモートだと分かったのだろうか。
映画じゃ髪は無いし、目だって紅じゃ無かった。ついでに言えば蛇顔だったし。
なのに、なぜ自分はヴォルデモートだと思ったのだろうか。
夢小説を読んでいたから、ですませるのには少し無理がある。
一目見ただけで彼をヴォルデモートと認識するなんて、有り得ない話しだ。
最近人気の漫画、黒/執/事のセバスチャンも黒髪で紅目なんだし。探せば、他にも黒髪紅目なんてキャラ沢山いる。
なのに俺は、黒髪紅目だからヴォルデモートだと思った…なんて…。
本当に、どうしてだろうか。
「セイラ、終わったぞ」
「えっ…、あ…あぁ」
「取りあえず、出来上がったこの地図はセイラが持っておけ」
「ん、分かった」
頷いて、ヴォルから地図を受け取った。あ、意外と細かく書いてある。
「それで…もしはぐれたら、ここに集合だ。闇祓いに見つかった場合も、ここまで逃げ切れ」
地図を指差し、俺に説明してくれた。
「了解………。要するに、離れなければ問題無しと、」
「そういうことだ。なんなら、手を繋いで行くか?おんぶとかでも構わないぞ。むしろそうして行くか」
「ヴォル、なんだか俺の中でヴォルのイメージが阿呆になりそうだ。
外見良くても、中身が駄目だったらモテないぞ」
「外見良ければ、大抵女は寄ってくる」
「今確実に、世界中のモテない男子を敵にまわしたな」
………こんなのが闇の帝王で良いのだろうか。
だけど―――‥、
「よし、んじゃ行くか!」
「ああ」
「はい!」
「楽しみだね」
ヴォルに会えて、楽しい日々を送れている。今は、この事実だけで十分かな。
夢見心地
(しあわせ、)
(ああ、なんて穏やかな日常)
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