結局は俺の思い通りに
ここに来て結構経った。
屋敷を探検して迷子になったあの経験をいかして……と言って良いのかは良く分からないが、屋敷を歩く時には必ず地図を持ち、道順を忘れないように心掛けていた。
だが、大分この屋敷になれ、どこにどんな部屋があるのかを把握出来るようになってきた。(それでも、用心の為何時も地図を持っている)
そして今、ヴォルとルッシーが任務から帰ってくるらしく、(リドルがついさっき教えてくれた)2人を出迎えに行くことにした。
1人で行こうかと思ったが、リドルが一緒に行くと行ったので2人で話しをしつつ、歩みを進める。
「リドルさ…、もうちょっと手加減してくれよな…」
「あはは、だって追い詰められたセイラの顔がなんか可愛いんだもん」
「ひでぇ!」
このドSめ!!
先程まで部屋でやっていたチェス。俺は初心者だと告げたのに、リドルは手加減せず、俺はどんどん追い詰められていった。
勿論、結果は惨敗。……まずリドルとチェスをしたのが間違いだったな。
チクショー…今に見てろよ!絶対に勝ってやる!
「ヴォルから、セイラがルシウスに勝ったって聞いたから余り手加減しなかったんだ」
「初心者だって言ったろ。ルッシーに勝ったのは偶然――あ!」
ホールに降りる階段を降りきったとこ、そこにヴォルとルッシーがいた。話しを中断させて、思わず走り出す。
「ヴォル、ルッシー!」
「ん?セイラか」
「僕もいるよ」
2人に駆け寄ると、ヴォルはちょっと不思議そうな顔をしていた。リドルも、俺の後ろから不機嫌そうにヴォルに声をかけた。
ヴォルとリドルは軽く睨み合いを始める。なんだか、これが日常になりつつある。
……時々、杖を持ち出して呪文を唱えようとするのはやめてほしい。(リドルはそのたび、素早くルッシーから杖を借りている)
「2人共落ち着こうか」
「「………ちっ」」
「舌打ちすんな!!」
最悪だなこいつ等。溜め息を吐きたくなったが、こらえる。
「ヴォル、ルッシー」
名前を呼べば、どことなく嬉しそうな顔をして2人は振り向いた。俺は軽く微笑んで、大切な挨拶の言葉を紡ぐ。
「おかえり」
2人は目を見開く。少しの沈黙の後――‥、
「ただいま」
「ただいま帰りました、セイラ様」
にっこり笑って返してくれた彼らを見て、満足げに頷いた。
***
「あれ、ここってなんだ?」
ヴォル達と俺の部屋に向かっていたところ、1つの部屋の扉が開いていた。
中を見れば、大きなテーブルに真っ白なテーブルクロスがかけられていて、テーブルの上には小さな花瓶に薔薇が自分の存在を主張するかのように真っ赤に咲き誇っている。
そして大きなテーブルに合わせるかのように沢山の数のイス。
一見広間のようだが、広間にはすでに行ったことがあるため、ここが広間では無い事はすぐわかる。(ちなみにこの屋敷の広間はとてつもなく広くて、とても綺麗な飾り物とかがある)
「あぁ、ここは食堂だ」
「我が君は大抵お部屋で食事をなされるので、ここはあまり使われてないんです」
ヴォルの言葉にルッシーが補足する。食堂かー…こんなに綺麗なところなのに使って無いなんて勿体無いな…。
「そうだ!ヴォル今度からさ、一緒にここで飯食おうぜ!」
「ん?何故だ?」
「だって、そしたらルッシーとも一緒に食えるだろ?皆で一緒ってのは、飯が美味く感じるんだぞ」
悩み始めたヴォルに、嬉しそうに目をキラキラさせるルッシー、良い考えだと笑うリドル。
随分おかしな光景だ。そして、それに俺は何時の間にか慣れたみたいだ。
だって、自然と頬緩むんだ!
結局は俺の思い通りに
(…………ま、良いだろう)
(やった!ルッシー、これからは一緒に飯食おうな!)
(はい!)
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