認めてなんかやるもんか
今や3人は、俺にヴォルをなんて呼ばせるかで議論している。
俺がそんなくだらない議論に参加するわけが無く、3人から少し離れたところに椅子を置いて、読書をしてる。(勿論、アニメーガスの本)
「やっぱり、"ヴォルパパ"だよ。見た目的に、幼い呼び方が良いと思うよ」
「いや、流石に可哀想だろ。だったら、"お父様"の方が良いんじゃないか?」
「"父上"など良いのでは?確かに幼い呼び方だと可愛い思われますが、セイラ様は男に見えます。
ですから、我が君のような"お父様"や、"父上"の方がしっくりくるかと」
「あー、確かに」
「喋り方も男だしな」
悪かったな、男らしくて。
………あれか、あいつ等は俺を傷付かない人間だと思ってんのか、コノヤロー。
「じゃあ、"お父様"か"父上"だね」
え、俺絶対にヴォルをそのどちらかで呼ばないといけなくなるのか?え、ちょっ、マジで!?
「ちょっ、ストップ!俺はその家族設定オッケーしてないぞ!?」
「「「!」」」
「ちょっ……なんだよその反応!」
こっちが驚きだよ。ヴォルに関しては、驚き以上にショック。
ヴォルは絶対に反対すると思ってたから、家族設定を賛成した時点でショックだったのに、あんな驚いた顔するなんて…。
「………ん?」
そうだ。なんでヴォルが賛成してるんだ?
昨日までのヴォルは、確かにスッゴく優しくて本当に闇の帝王かって何度も疑ったよ。
でも少なくとも、こんな阿呆な事に参加する人では無かった。
「セイラ、どうかしたの?」
「………リドル、ヴォルになにか魔法でもかけた?もしくは魔法薬でも盛った?」
「…………オブリビ――」
「ちょっと待て」
こいつ俺の事を妹とかほざいてる癖に、その妹に忘却術かけようとしやがった!
間一髪のとこでリドルの杖を奪い取った。
「…今のは、図星ってことか?」
じろりとリドルを睨み付ける。
リドルは困ったような笑みを浮かべ、軽く頷いた。思わず溜め息がこぼれた。
***
「……つまり、リドルとルッシーが協力して、ヴォルの飲み物に魔法薬(無味無臭)を盛った、と」
「………はい」
「そうだよ」
ルッシーは俯いて、反省しているようだけど、リドルは全くといって良いほど反省していない。
因みに、ヴォルには仕事あるんじゃ無いかとか、いろいろ言って、部屋に戻って貰った。(ルッシーが怒られるかもしれないから、ヴォルに聞かれる訳にいかない)
「だいたい、気付かない方がいけないんだよ」
それも一理あるけど、無味無臭で気付けってほうが無理な気がする。
「仮にも、この僕の未来な訳なんだし、気付いて欲しいもんだよ」
頬杖をついて、足を組み悪態付くリドル。
普通の人がそんな事をしても殴りたくなるだけだが、リドルがやると凄く様になる。うん、顔が良いといろいろと得だな。
だけどね、スッゴく理不尽だから。
無味無臭の魔法薬を飲み物なんかに混ぜられたら、絶対に分かんないから。
「…なに、2人はそこまでして家族設定を定着させたかった訳?」
「「勿論 だよ/です」」
リドルとルッシーは見事に声そろえて肯定する。盛大に溜め息を付いて、2人を見た。
2人は冗談とかじゃ無いらしく、真剣な顔をしている。
「…………時々なら、"兄貴"って呼んでやる」
きっと真っ赤になっているだろう顔を見られないように、ふいっと2人から顔を逸らした。
ついでに、"だからヴォルを元に戻せよ"と言いながら。
2人は暫く沈黙していたが、いきなり飛び付いて来た。
「セイラ!本当は家族設定って嬉しかったんでしょ?」
「そっ…!そんなはず無いだろ!
俺はただ、2人があんまりにも真剣で、ちょっと可哀想になっただけで、別に家族設定が嬉しかった訳じゃないから!」
「これが噂のツンデレですね!」
「違っ……ツンデレじゃねえ!てか、なんでルッシーがツンデレなんて知ってるんだよ!?」
あぁ、新しい兄貴達はなんて騒がしいんだろう!
認めてなんかやるもんか
(本当は、ちょっと嬉しかった)
(なんて……認めない!)
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