君だけの僕でいたいから 「好きだ」 雑音に聞き流される君の声。 聞き返しても君はうるせえとはぐらかしてまともに答えてくれない。 「ねえさっき何て言ったの?」 「だから何も言ってねえよ」 「……嘘つき」 僕が何も知らないと思っているのか君は絶対ほんとの気持ちを言ってくれない。 それが僕の胸を強く強く締め付ける。まるで巨大な剣で心臓を貫かれたみたいな苦しさ。 どうしていいかわからずに立ち尽くし自然に流れる涙。 何でなにも言ってくれないの。悪いところがあったら謝るしなるべく直すからさ。だから僕を嫌いにならないで。 見かねた僕に差し出されたハンカチ。心配そうに見つめるアンジュに僕は慌てて涙を拭いた。 何かあったのかしら?と子供をあやすように優しくたずねるアンジュに僕はいつもの吃り声。仕方ないわねと背中をさすられてやっとまともに言葉が出てきた。 「僕嫌われてると思う」 「それって今更じゃないかしら」 「肯定しないでほしいよ。凄く傷付く……」 「先に言い出したのはルカ君よ。何か思い当たる節があるんじゃない」 なんだろう。沢山有りすぎてわからない。それこそ前世から恨まれてる気がする。 「理由がわからないのなら謝罪は逆効果だと思うわ」 「てかスパーダ兄ちゃんに直接聞いた方が早いんちゃう?ルカ兄ちゃんの事やから一人で悩んでるだけ違うん」 アンジュの腰辺りからひょっこり顔をだすエルマーナ。いつの間に居たのだろう。 「ルカ君のことだから何も聞いてないんでしょう。案外勘違いだったって事もあるんじゃないかしら」 「そうだよね。もう一回スパーダに聞いてみる。ありがとうアンジュ、エル」 いつもの情けない下がり眉は治らなかったが、少し笑顔が戻った気がした。 理由なんてくだらないものかも知れない。 足がいつもより軽い。胸も苦しくない。 スパーダはすぐに見付かった。 「ねえスパーダ、あのさ僕の事なんだけど 悪いところあったら言って、謝りたいし直したいんだ」 「んだよいきなり」 「ほら君ってあの時から態度おかしかったから僕何かしたんだと思って。君が何か呟いて僕が聞きそびれてさ」 「忘れろよそんなの」 「嫌だ。僕はスパーダに嫌われたくないし、……好きだしスパーダの事」 「今何て言った」 「ごめん僕変なこと言ったよね」 「良いから言えよ」 「……スパーダが好きだから嫌われたくない」 突然顔を押さえる。指の隙間から赤く染まった表情が見える。 「言うのが遅せえんだよ。どんだけ待たせるんだ」 「ごめん。だってスパーダが何て言ったか聞こえなかったから」 「お前にシカトされたと思ってすげえ辛かった」 「僕も嫌われたと思ってた。ごめんねスパーダ」 「もういい。もういいから」 それが答えでいい、と満足そうだった。 僕は嫌われてなかった、でもあの時言われたことは結局わからなかった。 「……好き」 「何か言ったか」 「ううん何も」 end |