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One million roses




「はぁ」
とめどなく漏れる溜め息。宿屋の一室で打ち拉がれていた。
伝えたい事は頭がパンクするほどあるはずなのにイリアの前だと一言も喋れなくなる。
どうして僕は駄目なんだ。机に突っ伏して溜め息吐いても何も変わらない。わかってはいるけど駄目な僕。


「はぁ……イリアぁ」
ガチャリとドアが開いた。

「辛気臭えなあ」
舌打ちをしてスパーダがズカズカと僕に詰め寄る。机を乱暴に叩いた。
僕は驚いて足をぶつけてしまった。涙目の僕を笑うスパーダ、酷いや。

「君は僕を笑いに来たの?」
「だったら笑われるよーなことすんな」
「酷いよ」

「またイリアの事考えてたんだろ」
「な、なんでわかったの」
「顔に書いてある」
「うぅ……」

恥ずかし過ぎる。確かに表情とか出やすいけどさ気持ちただ漏れって……しかもスパーダに。

「じゃあイリアに今の僕見られたら好きだってばれちゃうかな」
「かもな。ありえねーって一蹴されるだろーけど、でひゃひゃ」
「そうだよイリアみたいに可愛い子に僕は不釣り合いだ」
「あっそ」

途端不機嫌になるスパーダ。ベッドに腰を下ろして足を組んだ。
僕は何か気に障る事を言ってしまったのだろうか。不安が頭をグルグル回る。

謝らなきゃ、でもなんて?すみませんとかごめんなさいとか、あっ外の屋台でホットドックでも買ってこよう。お腹が膨れればスパーダだってきっと機嫌を直してくれる。

「ぷっ、ヒャーハハハ何ビビってんだよルカちゃま」
「えっスパーダ?」
「冗談だっつーの。全くからかいがいがあるぜ、そんなしがないルカちゃまに俺が恋の秘訣伝授してやるよ」
「本当?」
「女を何人も落としてきたスパーダ様だぞ有り難く聞きやがれ」













「イリア!」
「何よ」

面倒そうに振り返るイリアの視界を真っ赤な花束が遮った。
「イリアの髪みたいで綺麗だったから、似合うと思って」
「あんたねこんな花より食べれる物寄越しなさいよ肉とか肉とか」
「肉ばっかりじゃないか」
「何か言った」
「ううん」
「わかったなら宿屋の外の屋台で何か買って来なさいよ」
「そんなあ」


とぼとぼ歩くルカと入れ替わりにイリアに近付くスパーダ。

「これあんたの入れ知恵でしょ」
「バレたか」
「おたんこルカが薔薇みたいなキザなプレゼントするわけないじゃない」
「それもそうか。まあ要らないなら俺が貰うぜ」
「そう」

花束から二本取り出しスパーダに渡した。

「あんたに渡す気はないから」




「残念」

二本の薔薇の良い香りはルカの買ってきたホットドックに掻き消された。










end
歳の数だけの薔薇を。
ヤンデレ気味のスパーダと独占欲の塊のイリアと見えてないルカ。


あきゅろす。
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