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liar girl
Plausible lie

あのあと何曲か吹いてパソコンに向き直った。

にしても、久しぶりでもあんまり口はバテへんねんな。

キーボードの上で指を踊らせて、ふと顔を上げる。

…晩御飯何が良いやろ?

季節はずれやけど鍋でいいか。

結局、葱がない鍋になってしまったけどまぁ大丈夫やろう。

母からのメールでは(一部に)好評やったらしいし、良しとしよう。

それにさっき



“今からストバスに行ってくるヾ(*´∀`*)
留守番頼んだで(`・ω・´)”



って来たし、飲み物を取りに今の内に下よっかな…

やけど、毎回思うけど顔文字ェ…。





Plausible lie





うん、思い出そう。

まず、うちは飲み物を取りにリビングへ向かった。

そしたら電気が点いていたから、またかとか思いながらドアを開けた。

そしたら、うちと同じハーフアップにしている宮地が赤本と睨みあってた。

……なんで宮地が居るん!?

なんてプチパニックになりながらも表情筋は動かさない。

次からはちゃんと一緒に行った人数も確認せなあかんな…。つい小さく溜め息をついてしまうと、此方に顔を向けられた。


「道子さんが行ってたとおりだな」

『母さんが…?』


……嫌な予感しかしない。


「多分出て少ししたら下りてくるから“ドッキリ大成功”とでも言っといてだとよ」

やっぱし。

しかも、ある意味ドッキリの域を越えとるやん。


「あと、赤本ありがとな」


そう言い宮地が持ち上げたのはto大の赤本。

…母にいきなり貸してって言われたから何やと思っとったけど、そういうことかいな。


『受験勉強か…ならセンターのヤツも使う?』

「貸してもらえると有り難い。それにしても、志望校と同じ問題のがあって助かった」


確かに高3のWCの時期なんて受験勉強真っ盛りだろう。

お役に立ててなりより。

とだけ声を掛け目的のペットボトルを取ろうとした。

そしたら何故か服の襟を引っ張られる。


『うぐっ…』

「“うぐっ…”ってもう少し色気ある声出せよ。“キャッ”とかさ」


喉元をさすりながら振り返ると口をでて押さえて、肩をプルプルさせている宮地がいた。


『うちに色気を求めるな。つか、やるなら後輩のカチューシャ君や電波メガネ君とかにしろや』

「カチューシャ……電波メガネ……プッ」


遂に耐えられなくなった宮地がお腹を抱えた隙にペットボトルを取り、ダッシュでドアへと逃げる。


「っと、現役バスケ部舐めんなよ?」

『っ…』


後一歩でドアにもかかわらず、手を引っ張られて尻餅をつく。


『痛った…』

「わりぃ…背負い投げされる覚悟はしてたけど、まさか尻餅するとは思わなかった」

とりあえず、背負い投げされた過去を詳しく聞きたいけど、謝るならやんな。

仕返しと下から睨みつけるも首が痛い…。

「ほら」


差し伸べられた手を掴み立ち上がるも、こう至近距離やとまだ首が痛くなる。

えっと…うちが166やから、


『25p差…』

「はぁ…?」

『いや、気にしんといて』


身長差ヤバい…。

けど黒子と紫原の方がヤバいか。

なんてつい考えていると上から声がふってきた。


「なぁ…何で逃げるんだよ。さっきも昼間も昨日も」

『余り話したくないからやけど?』

「んじゃ無視したら終わりじゃねーか。実際黄瀬は廊下で会ったとき無視されたって嘆いてたし」

『………』


確かにそうやけど、さっきのは首を絞められたから話は別やろ。

けど、その言葉が口からでず唇を少し噛む。


「……あと、俺と似たような匂いがするんだよ」

『匂い…?』


黙っているうちを見て何を思ったのか、唐突に言ってくる。

残念なイケメン臭なんてうちからはしてないと思うけど…。

まず第一うち女やし。


「何つーか…その……」


“じとー”と手を離してくれないかなと期待を込めて見ていると何を思ったのか、いきなり掛けっぱなしだったうちのメガネを取る宮地。


『ちょっと…!?』

「ほら、コレとか何かのグッズだろ?お前から世に言うオタク臭ってのがするし…………はぁ!!?」


メガネを見ながら話してた宮地がある一点を見て止まる。

真面目にこれアカン状況…。


「SHUTOKU…しゅうとく…秀徳。しかも校章までちゃっかりある」


両手でメガネを観察する宮地をよそに、もう逃げられないかと思い腹を括る。

…ロゴとか小さいし、ましてやメガネを盗られるとは思わんかった。

そしてまだ二日目やねんけど。

まだ情報集まってないんやけど。


「これって…」

『えぇそうやで。お察しの通り“黒子のバスケの秀徳高校”をモデルとしたメガネ』

「デスヨネー」


少し苦笑いを浮かべるのを見ながら、赤本が置いてある向かい側に座る。


「何となく避けられていた理由は分かったけど…何で嫌いって言ったんだよ?」

『………一言で言うとうちのエゴ』

「いやいや、余計に分かんない」


椅子に座った宮地が眉をしかめる。

普段からしてるからいつか型がつくで…。


『えっと…例えば、宮地はいきなり推しメンが家に来たらどうする?』

「……パニックになりつつ精一杯おもてなしをする」

『じゃあその推しメンが捜索願を出されてたら?』

「…警察に連れて行く」


何でこんな事聞くんか分からんって顔をされても…。

今は少しだけ我慢してほしい。


『もし、警察に行けない理由があったら?』

「…しっかり話を聞いてから、俺の出来る事を精一杯する」

『これでラスト。その推しメンを家に匿っていて、ある日警察に行けない理由がなくなった。そしたらどうする?』

「…警察に連れて行くって言いたいけど、多分以上に何とか理由を付けて留まらすな」

『つまりはそういう事』

「……俺がお前で、みゆみゆが俺たちってわけか」


理解が早くで助かるわ。


「で、お前はどうしてほしいんだよ」

『……?』

「同情してほしいのか?キレて怒鳴ってほしいのか?」


余りの直球に言葉が消える。

けど、ここで黙る訳にはいかない。



『…するならしてくれたらえぇ』

「…はっ?」

『だから、同情でも怒鳴ってくれてもえぇ。
ほら、声とか会った感じじゃ何も分かんなかったけど、
違う環境へいきなり放り込まれたのに
ストレスが溜まってないわけないやろ?
だからうちを捌け口にしたらいい。
大体その時、一番嫌っている人にストレスぶつけるやんか。
そう思っとったのになー。
冷静に聞き返されるとは思わんかった』


最後は自虐的に笑いならが言う。

てっきり、生轢くぞが聞けるかと期待してたりしとったのになー。


「…俺だって逆ギレされるだろうなって思ったのに、そう切り返されるとは思わなかった」

『えっ…逆ギレされると思ってなお言ったん?』

「ちげー。先に口がでたんだよ」

『あぁ、いつも轢くぞとかパイナポーで殴るぞとか言ってるもんな。確か治そうとしても無理で高尾に大爆笑されたし』


宮地らしいっちゃらしい理由にニヤニヤしながら言う。


「げっ…なんで、プレオープンセレモニーの話知ってんだよ。確か道子さんは言ってなかったぞ」

『ゲームにあった話だからね。母さんはゲームしないから』

「ゲームまでやってるのかよ。コレだからアニオタは…」


あっ…また眉をしかめとる。

っか、いくら何でもさ…


『ドルオタに言われたくないんやけど』


アニオタもドルオタもオタクには変わらんやろ。


「ドルオタ舐めるなよ?みゆみゆへの愛は誰にも負けない…!!」


……ダメだ。

さっきより残念なイケメン臭が強くなったきがする。


『取りあえず分かったから画像見せようとすんな。…ってスマホ持っとったん?』

「おぅ。電波は繋がっているが、大坪達には繋がらない。勿論あの3人や道子さんには繋がったけどな」

『ふーん…』


と言うことは、携帯を全員持ってるわけか。

スマホ代は必要無くなったっと。


『…で、その手はなんや?』

「メアドかli_neID」

『断る』

「断ることを断る。と言いたいところだけど、道子さんから聞いてるからいい」

『…!?』


ちょっと、なに勝手にメアドかID教えてんの!?

慌ててスマホを取り出しli_neのロックを解除したところで前から伸びてきた腕に盗られる。

『返してや!!』

「安心しろ。ID見たら返すから」


安心できひん!!

人のものを奪ってばっかりってどこぞのコーンロウ君だよ!?

立ち上がって取ろうとするも何せ身長差25p。

結局返してもらえたのは、宮地のli_neが登録された後だった。


『妖怪腹黒糸目サトリめ…』

「…どう考えてもそれ俺じゃないよな」

『違った。童顔ドルオタツンギレのっぽめ…』

「ほのかって結構口悪いよな」

『生まれつきやから気にしんといて』


言われなくても嫌ほどわかってるから。


『必要以上にしてきたら即ブロックやからな』

「分かってるって…そういやお前の推しメン誰?」


話無理やり変えよった。

それに推しメンってうちドルオタじゃないんやけど。


「黒子のバスケの推しメン」


なる程。

……言いたくないんやけど。

つい黙っていると、うちが掛け直したメガネを指差して言った。


「秀徳の誰かなんだろ?」


うっ…。

確かにそこまではバレるよな…。

けど、言いたくはない


『…………………秘密なのだよ』

なーんてな☆


小さく言い捨てて、次こそはとドアから逃げる。

…後ろから何かに躓いた音がしたけど気のせいだろう。


〜もっともらしい嘘〜



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