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空を見上げて
標的19 その3

黙秘権が通じる相手ではないので、解決策を頭の片隅で必死に考えながら睨みあうこと十数分ぐらいだろうか。

いきなり殺気が消え、いつかのようにバランスを崩して今回はその場に座り込む。

その様子を見て口のはしを上げ笑う恭弥。


「ん……合格」


…………………何が?

そう尋ねようにも、口の中はカラカラで声が出ない。

近づいてくる恭弥を見ながら肩で呼吸していると某スポドリを渡され、手に取り口に含んで喉を潤す。


『っ…ハァ。ハァ…………。なにが…ごうかく…』

「…“来訪者”として合格。ほら、ここに座りなよ」


己が座った向いを指さし、促してくるので軽くフラフラしながら座りにいく。

…来訪者としてか。


「よかったよ。思ったより殺気に慣れてきてるみたいだし」

『えっと…とりあえず、来訪者としての合格について知りたいんだけど』

「あぁ」


私の質問に頷き、足を組み直した恭弥がゆっくり口を開く。


「気づいているかも知れないが、僕は南国果実や跳ね馬、猿山のボスと同じ“伝達者”だ。…ホントはまだ言うつもりではなかったんだけど、そう言うわけにもいかなくなったからね」

『どういうこと?』

「…あの3人がこの段階で“来訪者”を認めるのが珍しい。元々僕は君と会った時から身体能力はいい方だとは思ってたし、何よりまだ周りを見ているほうだ。終わらせれる可能性がある。だからこそこの先、生きていけるかを軽く試させてもらった」


それがさっきの…って事か。


「もし、あれで一言でも話そうとしたり気絶してたら見込みがなかったとして、僕の手で殺っていたんだけどね」


…今有り得ないほどさらっと危ない単語が聞こえたよね。

まぁ、確かにあれで自分に負けていたら先では生きていけない。


『けど、それをしたら…』


また繰り返す事になってたよ…?とは口には出せずに飲み込む。


「言いたいことは分かるよ。でも、もう何百回繰り返してきたから言えるけど、ここで倒れるやつは悪いけど終わらせてくれない。強くて、尚且つ…終わらせてくれる人だけ僕達には必要なんだよ。その人を見つけたり助ける暇は惜しまない。…今回もその一環なんだ。いきなりごめん」

『いや…そう言う事だろうかなってちょっとは予測はついてたし大丈夫だよ。恭弥達伝達者がどんだけ真剣かも知ってるつもり。…だからさ、謝らないで』


頭を軽く下げてきた恭弥に笑いかける。

私も真剣に受け止めているつもりだけど、伝達者達は無限ループをずっと見てきてるんだよね…。

それがどれだけしんどい事かは体験してないから分からないけど、想像することは出来る。

なら、私が出来ることは一つ。

来訪者としてこのループを終わらせる事だけ。


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あきゅろす。
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