空を見上げて 標的16 その1 『…うん。もう一回言って』 「一回と言わず何回でもいいぞ」 『いいから』 「今日一日山本の道場で一緒に修行してこい」 ……解せぬ。 マジで解せぬ。 『藪から棒に…何で?』 「昨日の話は憶えてるか?」 『あぁ、あれ』 1人では危ないから、単独行動にならないように(雲と雷と霧を除いた)守護者、もしくはツナと行動するって話。 一日中風紀委員の書類をする予定だったし、何かあったら草壁がいるし大丈夫って言ったんだけどな…。 「それだけ心配されてるってことだ。それに雨だからツナに着いてこいとは言えないしな」 まぁ、道場か。 もう半年ほど行けてない。 …よし。 京子と草壁に今日休むとメールしよ。 これから数日ぐらい休んだって支障は何も無いだろうし。 そう思い、連絡を済ませ山本の家にいくと道着が一式用意してあった。 サイズが又してもピッタリとか、まさかこれも風紀委員クオリティ…? これまた貸してもらった防具一式も身にまとい、一礼して道場にはいる。 うん…この空気。 よかった、これは何処も変わらないんだ。 「よろしくな、柚!似合ってるぜ」 『ありがとう。山本も似合ってるよ』 「サンキューなのな」 なんですか。 イケメンは何を着ても似合うんですか。 野球のユニフォームほどがしっくりくるし。 けど、やっぱり身長高い。 177だっけ? 兄貴は高すぎたから別として、これくらいの高さなら何とか普通に面へ竹刀が届きそうだ。 というか、兄貴は可笑しいぐらい高すぎる。 妹が150あたりを彷徨っているのに、約40も違うとかもはや血が繋がってるか疑いたくなる。 いや、ちゃんと繋がってるけどさ。 『けど、練習相手が私なんかで大丈夫?』 「唯一の女性風紀委員がそれ言うか!?」 『いやだって…』 人殺しの剣とはやったことある訳ないし…と言いかけて慌てて口を閉じる。 「どうした?」 『いや、私ブランク結構あるよ』 「大丈夫だって。俺なんか初心者だぜ」 そう親指立てて言われても、あなたは元々運動神経いいからなー…。 「柚こそ学校はいいのか?」 『中2は既に一回してるから気にしないで。それに行っても書類整理してるだけだから』 「なら良かった。それじゃあ頼むわ」 『うん。まずは体操と素振りから始めよっか』 Θ [次へ#] [戻る] |