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空を見上げて
標的11 その1

“ズガンッ!!”

…目覚まし代わりに銃声って、流石と言うべきかどうか。

取りあえず苦笑いしかうかばない。

トリップしてきて一週間がたった今朝、人生初の銃声を聞きました。

あっ、修行はno countで。

まぁ、おかげで目がはっきり覚めたよ。

けど、日曜日だからもう少しゆっくり寝たかった…とつくづく思う。

ウォークinクローゼットの中で着替えて、不意におそってきた小さな欠伸を噛み殺しながら部屋を出ると、ちょうどフゥ太とビアンキが階段を降りているところだった。


『おはよー』

「おはよう、柚」

「おはよう!…あれ、ツナ兄達は?」

『あー…補修の準備が出来てないって慌てた。もう降りてくると思うよ』


リボーンは降りてきたみたい。

そう階段を指差しながらリビングのドアを開けると、リズミカルにキャベツを切っている奈々さんとチキンを取り合いしているチビ2人が視界に入る。


「スゴい量のご飯…」

「これだけの量を作るのにどのくらいの時間が掛かったのかしら…」


そう呟く2人をよそに、1人考える。

短い期間だとはいえ、出来ることはしたつもりだ。

最低限、自分を守れる力をつける。

それが自分の中でツナ達と関わる際に決めた最低ラインだ。

今はまだまだと言われるかもしれないけど、それでもって少しは戦える。

それも元々良かった運動神経がコッチに来てから『チートかよ!?』と言いたいぐらい向上が早い。

これが世に言うトリップ効果なのか…?


「柚姉、眉間にシワがよってるよ」

『っ…!…ゴメン、少し顔を洗ってくる』


顔をのぞき込んでくるフゥ太から逃げるように洗面所へと移動する。

中に誰も居ないのを一応確認してからドアを閉め鍵もかけた。


『…無力だな』


思わず口から出た言葉は宙へと消えていく。

当たり前なのかもしれないが、私という小さな存在で今のところ原作が変わる様子はない。

今だって原作と一文字一句違わない会話が聞こえてくる。

唯一違うのは、いつの間にか降りてきたツナの口から私の名前が出たくらいだ。

トリップ=その世界で何か重要な役割がある。

というのが当たり前だと思ってた。

よくあるパターンの“あなたは〇〇の守護者です”ということもあり得なくはないが、多分それはない。

はっきりしたことは言えないが、己の勘がそういっている。

そしてこの勘はよく当たるのだ。


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