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空を見上げて
標的19 その4
優しく笑い返してくれた恭弥にシャッターを切りたくなる衝動を抑えていると、不意に恭弥が立ち上がって何かの紙を持ってくる。


「ここにサイン書いて」

『……何の?』


危ない事じゃないよね…。


「雲雀家の養子申請書」

『うん。なんでそれに私のサインがいるのかな?』

「これからのために雲雀家の養子にするため」


…いきなり過ぎだし、そんな簡単に養子って申請できるの?

疑問に思ったことを口に出そうとすると先に恭弥の声が応接室に響く。


「例えば、今後誰かに素性を調べられた時とかどうするの。僕ら事情を知っている奴らや、赤ん坊や草食動物とは違うんだよ」

『それは…』


確かに今回みたいなことが起きたらどうすればいいのか分からない。

かと言って雲雀家の養子になってもそれは同じじゃ…。


「一応、この辺ではかなりの勢力を持ってるし“来訪者”の君をある程度は都合よくこっちに馴染ませれるだろう。幸いなことに、教養もかなりあるみたいだしね」

『確かに個人情報はどうしようかと悩んでいたけど、そっちに利益は無いんじゃ…』

「だからこそ、さっき試したんだよ。…もう終わらしたい。そのための協力は惜しまないって言っただろ」


こちらを見てくる目はまっすぐと私を射抜いていて、本気の度合いが伺える。

…私だって力になれるなら、なりたいよ。


『わかった。ここに書いたらいいんだよね』


差し出されたボールペンを持って、“桐谷 柚”と名前欄に書き込む。

…よし。

これでokか。

肩の力を抜きながら息を細く出し目を閉じる。

まだ、始まったばかりだ。


〜標的19 END〜


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