[携帯モード] [URL送信]

並盛中の日常/ある男子生徒の観察記録
#08

中学3年の1学期ってのはイベントで忙しい。
6月中旬に体育祭、下旬に修学旅行。
7月には期末試験もある。

現在は体育祭と修学旅行の準備を、平行して行っているってカンジだ。
学級委員とかは『一体何役掛け持ちなんだ』とツッコミたい程度には忙しそうで。
まぁ、俺も流石に人数勝負な部署に潜り込んでる。
人数多いと、タマにはサボることも可能かな…というあまり公言出来ない判断によるんだが。

……なんで牛柄くんも同じ部署にいるかな……。

「何でって言われても。
……俺は気付いたらこの部署だったんだし」

……思い返せば確かに、ランボさんが『絵を描きたい』って言ってたからなぁ。
看板作製は確かに希望に適っているとは言える。

まぁ、あれだ。
お前がランボさんになれば、ランボさんの希望も叶うんだから、なっちゃえば?

「…俺の意思で小さくなってる訳じゃないし」

ため息を付く牛柄くん。
お互い、ヤレヤレ…ってカンジで、看板の隅っこで絵の具を調合したり、バケツの水を交換したり…要するに雑用で時間を潰す。





ドン!

…本当に自分の意志で無いのか?
言ってた矢先に『ランボさん』になるなよ。

「あ、せとぐちだ!…ここ、がっこう?」

「……あぁ…ランボさん、ちょうど良かったな。
今、皆でお絵かきをしているんだ。ランボさんも手伝ってくれるか?」

折角なので手伝わせるか。
幸い(もしくはこれを想定して)デザインは子供でも手伝えるものだ。
緑をベースにして、クラスメート達のカラフルな手形で花畑を作る。
ちょうど、ベースが綺麗に出来上がったから、ランボさんの手形も入れてやろう。
小さい子供はこういうの好きそうだし。

その場に居たクラスメート達も心得たもので、俺がランボさんと話しはじめると、ランボさんの周囲にあった雑多な物を片付ける…バケツを倒されたり、ペンキをぶちまけたりしたら惨事だからな。

…慣れってすごいね。

「ガハハ!ランボさんはお絵かき得意だもんね!」

「そりゃ良かった。じゃあ手伝ってくれな?」

「わかった!」

小さい手の平にペトペトと絵の具を塗り、場所を指定して手形を押す。
単純作業だが、綺麗に押せればやっぱり嬉しい様で。
素直に小さな花弁を看板に彩る。

よしよし、本日のランボさんは非常に良い子だ。

ランボさんの現れるタイミングはマチマチだし、その時々で機嫌の起伏も結構ある。
誰かに泣かされてグズっていたり、ふて腐れていたり…ってのが割合多いが、単に暇そうにしていたり、お昼寝中だったりということもある。
前者は宥めるのに苦労して、後者は扱いが非常に楽だ。

…今の所、校内では100%の確率で俺が傍にいるときにランボさんになるっていう事に若干の疑問が残るが、牛柄くんの弁明によると、あくまでも偶然であり作為は存在しないらしい……本当かよ。

なんて事を、ツラツラと考えている内に5分経過。
爆音と共にランボさんは牛柄くんへ戻る。

……あ。
手、洗わせるの忘れた…けど。
……問題、無いよな?

今日はこれといった変貌(気絶してたり、怪我してたり)もなく、元に戻った牛柄くんは何と無く懐かしそうな表情をして看板を眺め、何かに対し納得している様だった。

……何なんだ?一体。





NEXT
十年前に戻ったランボさんは絵の具塗れの手の平を、ツナの部屋辺りでペトリ。
今も跡は残っていたり。
楽しかったり、ツナに叱られたりの当時の記憶が、現在の状況にリンクして思い出して…ってカンジですね。
夢主視点だと書ききれないので補足。

[*前へ][次へ#]

9/24ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!