並盛中の日常/ある男子生徒の観察記録
#03
アメを与えられたランボさんは、殊の外、大人しくしてくれた。
「ランボさんはブドウとアメが好きだもんね!」
そう言い、アメを頬張り、泣き腫らした小汚い顔に満面の笑顔を浮かべる。
…この幼児が本当にランボ・ボヴィーノなのかはわからないが、本当だとして『コレ』が『アレ』になるのか…と人類の神秘を思う。
『アレ』は日本男子には到底真似出来ない、フェミニスト全開の女好きナンパ男だったから、幼児期にはこんな普通に煩い子供なのに驚いた。
そんな俺とランボさんを遠巻きに眺めるクラスメート達。
『触らぬ神に祟りなし』とばかりに近寄る者は居ない。
友達がいの無い奴らめ!
…とも思うが、俺がそちら側だったら間違えなく同様だと、心の中でツッコミが入る。
「…ランボさんは何歳だ?」
「5さいになった!」
「…そっかぁ。5歳かぁ…」
たわいもない言葉のやり取りで時間を潰す俺とランボさん。
…あ、もしかして牛柄くんのケータイで連絡取れるかな?
緊急事態だ、鞄の中に有るであろうケータイを探すと、妙に大きいケータイが入っていた。
アドレスリストをチェックすると、何故か一つも登録されていない。
唯一、着信履歴が1件だけ残されていた。
…掛けてみるか?
登録されていない電話番号だから誰に掛かるか分からんが。
『もしもし〜?どうした〜こんな時間に?』
数回コールの後に繋がったのは、割合若そうな男性の声。
もう昼過ぎだが寝起きか?エライ間延びした喋り方。
「…すみません。俺、ランボ・ボヴィーノの同級生で瀬戸口と言います」
『…同級生?あれ?ランボに何かあったの?
…あ、俺はランボの日本での保護者で沢田綱吉と言います』
「…もしかしてツナさんですか!?」
『あ〜そう呼ぶ人も居るね』
ラッキー!ランボさんの探してるツナさんだった。
「あ、あのランボ・ボヴィーノが!その…小さく…なって…しまって…」
勢いで事情を話そうとして、その余りに非現実的な内容を言葉にするに従い、徐々に声が小さくなってしまう。
…言葉にして一層、荒唐無稽過ぎる内容だと実感してしまった。
『…あ…はい、分かった。大丈夫、信じるよ。
瀬戸口くんだったね、連絡ありがとう。
ランボはちょっと……特異体質でさ……たまに若返ってしまうんだ。
ほんの5分程度だけどね』
「…5分…ですか」
『うん。そう。
…もう、そろそろ元に戻ると思うけど…あ、ランボに代わって貰えますか?』
「あ、はい!…ランボさん、ツナさんだぞ」
言われ、ランボさんにケータイを渡す。
『ツナさん』の名にランボさんは嬉しそうに反応する。
「ツナ?ツナ?ランボさん、いまがっこうにいるの」
『あはは。ホントにランボだ。
ランボ…バズーカ使っちゃダメだろ?』
「ランボさんしらないもんね。つかってないもんね!」
『ランボ〜…まぁ、良いか。
あ、そこに居るお兄さんにお礼言うんだぞ?』
「わかったもんね!」
『あ、っと。もう時間が無いかな?ランボ、お兄さんに代わって?』
ツナさんに何か言われたのか、面白くなさそうにランボさんは俺にケータイを返して来た。
「あ、もしもし?俺に何か?」
『瀬戸口くん、これからもヨロシクね』
「…は?」
『ランボ、これからも小さくなることがあると思うけど、5分の辛抱と思って付き合ってやって?』
「…はい?」
『もし、元に戻らないような事があったら、連絡を貰えるかな?
後で連絡先を登録したケータイを届けるからさ?』
「…あ、あの?」
『お礼って訳ではないけど、そのケータイは使い放題で良いから。ヨロシクね』
「いや!あの!ちょっと!」
…俺が叫んだ時には通話は切られていて。
掛け直そうとした、その時、すぐ横で再びの爆音が上がった。
煙りが晴れると、そこには元のサイズの牛柄くんが居た。
…心なし、ズタボロになって机に突っ伏してるけど。
…多少、頭から血を流してる様な気もするけど。
まぁ、気のせい…ってことで。
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