並盛中の日常/ある男子生徒の観察記録
夏休み:需要と供給は常に不一致。
奇特な肉食女子は存外、大勢いらっしゃったようで。
先程から牛柄くんの周囲には、年上のお姉様方が鈴なり。
そりゃもう、入れ代わり立ち代わり。
松尾の方も結構な割合で、女の子がグループで声を掛けて来ている。
…凄いね。
それぞれにタイプが違うのも、傍観者として観察してて面白い。
牛柄くんには、自分に自信のあるカンジの年上のお姉様が『オイル塗って下さらない?』で、松尾には中高校生位のグループが『一緒にビーチバレーしませんか?』って言うパターン。
牛柄くんはそれに対して、何か上手いことあしらってお姉様方を追い払ってる…何で?
「俺は同年代の女の子と普通に遊びたいだけだもん…あのお姉さん達って……何か怖い…」
贅沢な。
……まぁ、言いたい事は何となく分かるが。
何か、狩人っぽいって言うか…正しく肉食獣って言うか。
牛柄くんを中坊とは思わずに逆ナンしに来てるから、そりゃもう色んな意味で積極的。
牛柄くんを喰う気満々なお姉様方を、牛柄くん自身は上手い事あしらっている様に見えるが…発言を聞くに本質は案外、ガキ?
何か外見と中身の一致しない残念な奴だなぁ…牛柄くんよ…。
さて、松尾は?と見遣れば。
あぁ…楽しそうにビーチバレーしてる。
って、おい!
そのスポーツはのんびり楽しくやるスポーツだ!
男同士のガチバトルじゃないんだぞ!?
テメェが超本気出すスポーツじゃない!
空気を読め!空気を!
……流石、松尾。
見事なKYっぷり。
いいや…ほっとこう。
……ともあれ、どちらもモテて何よりだ(実ってはいないけど)。
あいつらと違って、己が周囲に埋没する平々凡々な個性である事は、重々承知している。
俺はごく一般的なモブとして静かに過ごそう。
無駄な足掻きはしない方が、自身の精神衛生には良いだろう。
ぼんやりとそう思い、暇潰しの砂城制作に専念する。
…ああ、俺はこっちの方が性に合っている…しみじみ自分の性格の地味さを実感した。
「…松尾。アレ、どう思う?」
「……どうと言われてもな…ムカつく?」
「いや、ムカつくと言うより…何だかなぁ…ってカンジ?」
「……だな」
瀬戸口の造る砂のお城。
某ねずみーらんどのお城みたいな?
そんなカンジのお城。
超精巧で、大きいし…。
瀬戸口は熱中していて、まるで気付いていないけど、その制作現場は中々の混雑っぷり。
勿論、その城を写メったり、制作者を一目見ようとする人々なんだけど。
さっきから女の子達も瀬戸口に声を掛けたりしてるけど、まるで気付いて居ないみたい。
「…瀬戸口って何気に残念な性格してるよな」
「…だよね…モテてる事に、まるで気付いていないものね…」
END
そんな三者三様に残念な性格の男達。
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