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並盛中の日常/ある男子生徒の観察記録
一学期:期末試験

学生にとって、避けて通れない(通りたい)期末試験。
俺はまぁ、概ね平均点を全体的に取得するタイプなんだけど。
隣の席の牛柄くんは、得手不得手が非常にハッキリしているらしい。

…返された英語の答案を握り潰して机に突っ伏している。
その前の国語では点数順に呼ぶ教師だったが、かなり早い内に呼ばれていたし本人もケロリとしていた。

…言いたかないが、オマエ、まさかそのビジュアルで英語を赤点ってなくない?
どう見ても日本語より、そちら側の人間だろう?

「…日本人ってば、俺が英語を苦手と知ると皆そう言うけど!
俺、イタリア人だもん。母国語はイタリア語だもん。英語じゃないもん!」

…ああ。悪かった。
悪かったから、その赤点答案仕舞え。

「うえ〜ん…赤点…夏休みの補習ヤダよぅ…」

グスグス泣いてる緑の目は、ランボさんとこれが同一人物なんだよなぁ、と思い出させる。
しかし、15にもなって、『もん』とか『うえ〜ん』は辞めろ。
大人びた外見なだけに違和感が凄まじいぞ。

しかし、イタリア語と英語ってそんなに違うのか?

「…日本語よりはずっと近い言語かな…だけど単語がまるで違うのと、日本語の様にまるで違う言語なら意識も切り替えれるけど、中途半端に似通ってるせいで頭ん中ごっちゃになる…」

なるほど。
意外な落とし穴って感じだ。
握り潰した紙の隙間から見える解答は確かに英語ではない単語も散らばっている。
…イタリア語的には正答なのかも知れない。

「大体、俺、5歳になる頃からずっと日本にいるんだもん。殆ど日本人みたいなもんだもん」

…そのビジュアルで言われてもねぇ。
思わず溜め息混じりにそう返す。

「瀬戸口…酷い。自分が赤点無いからって冷た過ぎる」

だって、補習も追試もヤダし。
嫌いな教科を何度も追試するくらいなら俺はそれなりに頑張る。
…それなり以上はやらんが。
その原理からいえば、何度も試験を受けるお前は、俺より英語好きと言うことだな。

「ううぅ瀬戸口が意地悪だよう。何だよその理論」

まあ、せいぜい追試1回で済むように頑張るんだな。
俺は遠くから応援しとくから。

「…応援って…『頑張れ』って言うだけなんだろ?どうせ」

そうとも言う。
しょうがないだろ、教えるほどは賢くないから。俺。

…っと。
先生が呼んでる。俺の答案返却か。



……アレ?
………赤…点……?
…自己採点では70点ほどは一応あった筈…なんですが?

青ざめ、先生の顔を窺えば。

「途中から解答がズレているな」

『だが、まぁ、赤点は赤点だ…補習は受けるように』
先生の言葉に一層青ざめた。

…マジですか。
そして状況を察したらしい牛柄くんが、全力でキラキラ笑顔を見せているのに気づき、俺もまた、答案用紙を握り潰した。

…仲間を見つけて喜ぶな。牛柄。





END
#06より、ちょっとだけ後の日々。
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あきゅろす。
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