並盛中の日常/ある男子生徒の観察記録
一学期:部活2(夢主視点)
俺の部活動について疑念があるようだがな、牛柄くん。
そういうお前は幽霊部員なんだろうが。
「うん、まあそうだけど」
「俺より更に活動していないお前が言うな」
「……してるもん」
「…いいえ、していないわねぇ…ランボくん?」
「ヒィ!ぶ、部長!」
俺達の会話に介入して来たのは、A組の斎田…だっけ?
牛柄くんの反応を見るに文芸部の部長なのか?
…気配をさせずに牛柄くんの背後に立ち、うっすらと笑っている。
…すんごい怖いんですけど。
「って、部長!気配殺して来ないで下さい!何処のヒットマンですか!?」
…ヒットマンって…また変わった表現をするなぁ。
…あっさり後ろを捕られ、涙目の牛柄くんも情けないがな。
「会報の原稿出来たかしら?」
牛柄くんの発言をあっさり無視し、細い指を牛柄くんの首に絡ませ、そう囁く斎田はビジュアル的にはエロいが、実態はホラー並に怖い。
「あ、あの!部長!首!頸動脈!爪立てないで!」
…ああ。そうか。
エロい感じなのに、それがホラーっぽい要因か。
「…だから、原稿は出来たかしら…と聞いているのよ?
……ランボくん?締め切りは何時だったかしら?ねぇ?」
「………あ、あの!出来てます!出来てますよ!?
…………今日は持ってくるの忘れてしまいましたが!
明日には必ず!ええ!必ず持ってきます!!」
おお。
なんて分かりやすい言い訳。
…書いてないだろ…?お前。
「あら?そう?…明日ね…これ以上待たないわよ?」
「は、はい!勿論です!では、また明日!
あ!俺はこのあとちょっと用事が有りますのでこれで失礼します!」
…あ。逃げた。
斎田が訪問客なのに…残して去るなよ。
「まあ、ランボくんったら…そんな去り方したら、まるで私が悪役じゃない?」
『ねえ?瀬戸口くん?』
そう笑う斎田は、非常に楽しそうだった。
……同い年とは思えない、落ち着きと風格だ。
しかし…斎田、まるで高利貸のインテリ取立屋の様だったぞ…。
口調が穏やかなだけに、返って恐怖を煽るものがあった。
「牛柄くん…今日は徹夜かねぇ?」
斎田の発言には敢えてコメントを寄せず、そう呟く。
「さあ、どうかしら?
ランボくんって、書き出した時にはもうお話が脳内で完璧に出来上がっているらしくって、書き出すと凄いスピードなのよね。
…有り得ないわよ?1万字を2時間で仕上げた事もあるもの」
「1万字……って原稿用紙25枚?」
「実際には30枚分くらいかしら。改行とかで空白がある分、枚数が増えるものね。
…字数はテキストデータでのお話よ。彼はパソコン執筆派なの」
「パソコンでもとんでもなく早いよな…牛柄くんってどんなの書くんだ?」
「文章は美しいわね。
……大正・昭和初期の文豪風の趣があるんだけど……」
と、そこで斎田はため息。
演技掛かっているというか…気になる。
「……何と言うか…設定がおかしいのよね」
「おかしいって、どんな風に?」
「…マフィア最強のヒットマンを暗殺すべく、単身、来日する若きヒットマン…」
「別に変じゃないだろ。サスペンス?ミステリ?」
「……その最強のヒットマンが1歳の赤ん坊で、来日するヒットマンが5歳児でも?」
…うん。
…ごめん。
変だね、それ。
「他にも登場人物が個性的で、良くストーリーを破綻させないで纏めると感心するわ」
「参考までに……どんな個性的な登場人物が出るんだ?」
「そうね……
中学校の風紀委員長が常にトンファー携帯の危険人物だったり、
転校生の少年は爆弾魔でヘビースモーカー。
仕込み竹刀…強烈な風圧を掛けることで真剣になる?…を携える野球少年。
ああ、校医はあらゆる病原菌の保有者で暗殺者とかだったわね」
………どっからツッコんだら良いのか。
取り敢えず。
ヒットマンが、って言ってるのに舞台は中学校なんですか?
END
隠し副題『天才ランボさんの冒険記』。
誰も実話とは気付きません(笑)
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