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並盛中の日常/ある男子生徒の観察記録
一学期:修学旅行2

……具合悪い。
先程のダメージが回復しない俺。

なので、早速茶屋。
目の前では松尾と牛柄くんが串団子と抹茶パフェを美味そうに食べている。
……俺は気持ち悪くて烏龍茶のみだっていうのに。

「瀬戸口大丈夫?回復したら、次は資料館行こ?」

多少なりとも申し訳なさそうに…もしくは気の毒そうに、そう言う牛柄くん。こういう所は中学男子としては希少な、気遣いの出来る人種だよなぁ、と思う。

松尾はと言えば『大丈夫か?』と口でいいながらも、言うほど気にしている様子は無い。
うん、まぁ…そんなもんだ。
どちらかといえば、俺もこっちの部類だから文句も出ない。

「瀬戸口、ハンカチ濡らして来るから、ちょっと待っててね」

「…ああ、サンキューな」

デザートを食べるのを中断してそう言う牛柄くん。
松尾の反応を見ているだけに、そんな牛柄くんの気配りが感動的だ。





…ドゥン………。

やや離れた所から聞こえた爆発音。

……やっぱり『アレ』ですか?
江戸村的なイベントの効果音とかでなく?

「…松尾…頼む」

「うーす。回収してくるわぁ」

ああ、やっぱり松尾の耳にも、あの音は『アレ』なんだなぁ。

程なくして、松尾の小脇に抱えられてるランボさんの姿を視認する。
松尾…もう少し周囲の視線に配慮した連れ方しろよ。
グスグス泣いているランボさんを、そんな風に抱えていたら、まるで誘拐犯だぞ。

「見慣れない風景だったから、不安になったようでな。
走って何処かに行こうとしたから、止めた」

「…もう少し穏便に止めろよ…ランボさん、ほら、こっちに来い。お茶と団子があるぞ」

時間にすればあと2分程。
せめて泣き止ませてやりたい。
あの泣き顔を見るのが、何だかとても辛いんだよな…俺的に。
…これって何かの刷り込み?

「ランボさん、コイツきらい!」

「…まぁ、そう言うな。ランボさんがどっか行っちゃうんじゃないかって、心配だったんだ。
ほら、時間無いぞ。団子食べないのか?」

『その団子、俺のなんだけど』
って呟く松尾は放置。
昼メシ前の休憩で、串団子20本も頼むKYな奴の発言なんか知るものか。
しかし…既に半分を消化しといてその発言。
恐るべし。体育会系中学男子の胃袋。

いつもと違う光景に、ランボさんの目は不安げに移ろうが、目の前の菓子に多少なりとも心を揺らしたようだ。

「うううぅ…たべる。
ランボさんはアンコのがすきなの…せとぐちは?」

「……ん…ゴマかな…?」

「ゴマ…ってこれ!はい!」

嬉しそうに俺に団子の串を渡すランボさん。
割と意外だ。
…このくらいの子供って独占するもんじゃない?
オマケに『ランボさん』って…何て言うか…特にそういうとこが強そうじゃない?
3個のお菓子を与えられたら、両手に持って、更に口で銜えるっていうか。

…などと感心していたら、
「オマエはキライだからあげない!」
と、松尾に向かって言うランボさん。

あ、なるほど。
俺への親切っていうより、松尾への意地悪ってのがウエイト重いな。これ。
意外と粘着質なのか…俺の見えない所での松尾の対応が余程アレだったのか。

でも、ランボさん…この団子は本来、松尾のだから。

「あー良いぞー。俺はこっちのパフェを喰うから」

松尾も平然とそう返し、牛柄くんの食べかけだったパフェを食べはじめる。
鷹揚なのか、単に大雑把なのか。
…多分、後者だな。

意地悪が効かず、面白くなさそうなランボさん。
それでも団子を頬張れば、嬉しそうな表情に変わる。
やれやれ、良かった。

何とか制限時間に間に合った事に安堵の溜め息。
なんか最近では『5分間』という時間が時計を見ないでも判る様になってきた。
…慣れって凄いよねぇ…。

数秒後『ランボさん』は『牛柄くん』に戻ったのだが。

…牛柄くんは目の前でパフェを完食した松尾を見遣り、何となく悲しそうに眺めるばかりだった。





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何となく覚えているから文句も言えない。


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