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並盛中の日常/ある男子生徒の観察記録
一学期:修学旅行1

3泊4日の修学旅行。
都立中学である並盛中は日光ってのが定番だ。
勿論、今年も例年通りで、日光山内・江戸村・鬼怒川温泉等が大まかなコース。

…で、今回の旅行に於ける(俺にとっての)最大懸案事項が、牛柄くんが『ランボさん』になることが有るかって事なんだが。

僅か一ヶ月程度の統計だから、何のアテにもならないけれど。
牛柄くんがランボさんになるのは概ね3日に一度程度…週に2回ほどだ。

それを思えばこの旅行中に最低1回はソレが発生するということになる。
…願わくば…本当に願わくば。
………何事も無く修学旅行が終わります様に。

………どこの神に願うのが一番有効なのかは解らないけれどな。

日光って二社一寺を奉ってて、神様仏様盛り沢山なカンジだからなぁ…ああ、日本らしい。




そして…。
僅かながらに沈鬱な気分の俺を嘲笑うかのような快晴で迎えた、修学旅行一日目。
本日は江戸村で一日フリータイムだ。
園内限定で午後4時まではグループ単位で自由行動。

…なのだが。
中3男子の3人組で自由行動…って言われてもさ。
致命的に生態系からして別種の生き物の俺達。

俺はインドアの趣味人。
松尾は暇があれば運動していたい体育会系。
…牛柄くんは…分からん。
……強いて言えば街へ出て遊ぶ社交系?

とにかくも、息を合わせて共に行動するには難有りなチームワークだ。

試しに行きたいところを、それぞれ出して見れば、案の定、バラバラ。
俺は資料館で、松尾は忍者シリーズ制覇、牛柄くんは茶屋や演劇鑑賞…と。

……うん。
まるっきり足並みを揃える気が無いだろ。
5時間でそんなに廻れるかよ。

「まあ、さほど混んでいないし、並ばないように調整すれば大丈夫でしょ」

「忍者○○亭とかは大して時間掛からんだろ?」

「だよね。瀬戸口まずは、忍者○○亭行こ?」

何だよ、2人して。
耐久レースというか、廻る数に挑戦というか…ヤる気満々?
松尾はともかく、牛柄くんは比較的文化系の人間だと思っていたんだがなぁ。

…で、やって来ました『忍者○○亭』。
あれだよ、建物が傾斜してるやつ。
話には聞くけど、入るのは初めてだったりする。

遠近感の狂った背景や重力を無視した写真を撮ったりで、廊下を歩きながら感想を言い合う2人は楽しそうだ。

…と、ここまでは俺もそれなりに楽しんでいたわけだが。
建物の中でもそれなりのスペースを占める傾斜した部屋……。
一歩、中に足を踏み入れた所で、俺は壁に向かって倒れ込んだ。

………緩い坂道程度の傾斜が、ここまで三半規管に打撃を与えるとは。
………本気で気持ち悪い。グラグラする。

「…瀬戸口…大丈夫…で無いね」

「…お前は全然何とも無いのか…?」

「特にこれと言って?」

この傾斜した地面にへたりこむ俺の横で、絶妙のバランスでしゃがんでいる牛柄くん。
……器用な奴だな。

俺ほどでは無いにしても、松尾だって多少はふらついているってのに。

アレだ。
鈍いんだ。そうだろ?
…運動能力がとんでもなく発達しているって線はムカつくので却下だ。

壁づたいにズリズリと移動しながら、そんな事を考えていた。





NEXT
日光、行った事無いんだよね。
…これの為にガイドブック買っちゃったよ(笑)
修学旅行編…続きます。

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