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六道氏と雷牛
番外編「六道骸の苛立ち」

ボヴィーノのヒットマンで、ボンゴレの雷の守護者でもあるランボくん。
初めてお会いしたのは彼が5歳の頃。
尤もその時は、僕は幽閉の身でしたから、クロームを通してでしたが。

あの頃の彼は…そうですね、5歳という年齢ということを差し引いても騒がしく、欝陶しかったと記憶しています。
そして、アルコバレーノでもない、歳相応に無力な子供で。
そんな子供が、ボンゴレの守護者と言うのだから嘲笑ってしまった。

だからね、驚きましたよ?

月日を経て彼に逢った時の変貌には。

西洋人らしい長身で大人びた顔立ち。
印象的な碧の双眸、白い肌。
日系人である僕とは、種類の違う黒さを持つ柔らかい癖毛。
見てくれは甘く穏やかだというのに、口を開けば典型的なイタリア男で。



それでも仔牛はやっぱり仔牛。

いつも綱吉くん達に甘やかされるのを、当然のことの様に受け入れ、笑っている。
そんな子供で。

子供が子供として育った、そんな健やかさを見せる仔牛。

だけれど、彼はマフィアの子供。
その歪んだ世界に疑問を持たない愚かな子供。
人殺しを生業とすることに嫌悪も疑問も否定もない。
十代で既に多くの血に塗れているその手の平。

健やかな歪みを抱える子供。

それが、彼という存在だと…そう、思っていました。






「綱吉くん…謀りましたね?」

「…謀った…?随分不穏な言葉だね」

舌打ちを堪えるのが精一杯ですよ。

初めて会った頃から容貌にはさほど変化が見えないが、その内に抱える精神は大きく変貌を遂げた沢田綱吉。
そして、彼は『ドン・ボンゴレ』の名を持ち、あろう事か、この僕の身元保証人であり上司でもある。

「……ボヴィーノの仔牛の事です。何なんですか!あの子供は!」

「…何って言われてもね…ボヴィーノの秘蔵っ子にして、俺の守護者?」

『本人、まるで自覚が無いようだけどね』
そう言葉を繋ぐ沢田綱吉…と言うことは判っているんですね。
あの子供の心の有り様を。

コンプレックスと自己批判、そういったものに心を浸蝕されているということを。

「何故、放置しているのです?」

「…誤解がある。
断じて放置している訳ではないよ。
…俺じゃ駄目なんだ。情けないことにね」

そこに浮かぶ表情は苦笑と表現するには、あまりに重い微笑。

「俺やドン・ボヴィーノ、他にも彼に親しい人間が何を言おうと、彼は只の慰めや過大評価としか取らない。
……真実、彼を称賛しての言葉であってもね」

「そして、ああいう腹立たしい青年に育ったと?」

「…腹立たしいって酷いな。
……ランボが育った環境は、彼にとって才能を伸ばすという意味においては最良だった。
その一方で、ごく一般的な人間関係を育み損ねたってこと」



それは、幼い子供が体験するには十分過ぎる波乱。

5歳にしてボンゴレの守護者になり、リング争奪戦。
すぐ側にはアルコバレーノと呼ばれる奇跡の存在が。
そして、その奇跡の存在を自らの目標としてしまった。

特に幼い頃には、周囲に居るのは自身よりもずっと年上であったり、歳が近くとも既に才能を周囲に認められた者ばかり。

一方で、周囲に能力を示す方法を知らない己を自覚すれば、劣等感を持たずに成長する筈も無かった。
元々の負けず嫌いな性格も、劣等感を増長させる結果となったのだろう。



「ああ、でも。
…骸でも直ぐ判ってしまう程だったか…
本当は、もしかしたら…とも思っていたんだ」

僕『でも』とは失礼な。
そう思ったのを分かったのか、沢田綱吉は直ぐに言葉を繋げる。

「…クロームに懐いてるし、骸とは二人だけで仕事をしてもらった事も無かったから。
ほら、能力のタイプが違うからランボも得意分野でくらいは…とも思ったんだけど」

「僕が賞賛の言葉を掛けても、理解していませんでしたよ。
それどころか、言葉を裏返して解釈し謝ってくる始末です」

「…そう。
……このまま任務を続行するのに支障が有るようなら、パートナーを変更するよ?
守護者は出払っているから、ヴァリアーから誰か来てもらう事になるけど」

「変更は必要有りませんよ。
要するに、彼は卑屈なだけで、能力に問題は無いのでしょう?」

「それは絶対。骸がどんな戦略を立てても対応するよ、ランボは」

おやおや、随分な自信ですね。
まぁ、今夜になれば判ることですね。

綱吉くんの言葉がどれほどのものか…楽しみにしていましょうか。





END


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