六道氏と雷牛
#02
会議室を借り、六道氏と二人で打ち合わせをすることになったんだけど。
考えてみたら六道氏と二人での任務って初めて。
根っからのマフィアの子供だった俺と、マフィアの滅亡を望む六道氏って対極な感じで、ちょっとだけ苦手意識があったり。
特に嫌われているとか、好かれているとかが無くて、かえって距離感が掴めない…そんな感じ。
では、始めましょうか。と六道氏。
「まず、確認しておきますが…。
今回の任務は幹部格全員の殲滅及び薬物の完全押収。
…そしてこの薬物の影響下にある子供達のリスト確保となります」
「手順は、幹部殲滅とクスリの押収が同時進行、その後リストを確保する。
…という感じでいいですか?」
「…幹部を全て処理してしまうと、リスト確保に支障が出る可能性があります。
出来れば同時進行、ないしリスト確保を先にしたいところですが…」
「う〜ん…そうですねぇ。
では、殲滅・押収は本日の夜に行うとして、リスト確保はこれからやっちゃいましょうか?
ここの組織、データ内容をかなりパソコン上で管理している割に、セキュリティが甘かったので、リストも入手出来ると思うんですよ」
昨日、一昨日と覗いた時の感触ではリストは『存在』する。
幹部のスケジュールを押さえた時、今日の幹部会の予定を見つけたため、ボンゴレへの報告を今日に間に合わせるべく、詳細までは分析しきれなかったけど。
「……ボヴィーノにこれから再依頼するんですか?」
「え?…あ、いえ、俺がこれからハッキングしてデータを入手します。
幸い、ハッキングや解析用のソフトは持ってきてありますから、ここのパソコンを数台、貸して戴ければ1時間程でリストは取得出来ると思います。
…そうですね…リストの整理と欠落部のチェックまでで2時間位あれば何とか…今10時ですからこちらを出立するまでには間に合うかと」
「……ランボくん」
眉間に皺を寄せて六道氏がこちらを睨む。
あり?俺、何か怒らせるような事言いました?
「確認したいのですが…今回のボヴィーノへの調査依頼の内、どの程度が君の仕事だったのでしょう?」
「えっと?全部です?」
そういえば、必要無いから言わなかったよね、さっきは。
ボヴィーノとしての仕事だったから、調査者の氏名まではボンゴレ宛ての報告書には入れてないし。
でも、それが何か問題なのかなぁ?
今までの会話を思い出してみても特に思い付く事柄がない。
…でも、ちょっとだけ言い訳というか、補足した方がいいみたい?
「…データの解析は俺、割と得意だったんで。
ここの組織、若い連中が多いのも一因だと思うんですが、取引履歴とかの情報管理の殆どをパソコンでしていたんですよ。
で、必要な情報の大半はそれで回収出来たので、後はその裏付けを現地で確認するだけで済んだんです。
…セキュリティ管理の甘いパソコンなんて、誰でも入れる図書館みたいな物ですよね」
あはは、と言葉を繋いで、六道氏の様子を伺うと、六道氏は先程以上に渋顔を浮かべている。
……怒ってる?何で?
オドオドと六道氏の反応を窺っていると、突然、向かい合わせに座っていた六道氏が立ち上がり、テーブル一枚隔てて座っていた俺の方へツカツカと歩み寄ってきた。
そして、俺の座る椅子の真後ろへ立たれた。
何をされるのか見当も付かず、俺はそのまま六道氏を見上げる形となる。
「……あの…六道氏…?」
左右が色違いの不思議な瞳。その目を細め笑顔の形を作った顔。
あくまでもそれは形だけで、実際には笑ってなどいないのが、その気配からも判る。
どう対応したら良いのか判らずにいると、突然、左右のこめかみにゲンコツを当てられグリグリと小突かれる。
…結構、力が入っていて痛いんですけど。
…そして何故、俺は虐められているのでしょう?
「ランボくん。謙遜も過ぎれば、かえって不遜ですよ」
『分かっていない様ですから体罰です』
と言われて、何と返したら良いかまるで判らない。
「うううご、ごめんなさい?」
あんまりにも痛いから取り敢えず謝ってみるけど。
何に謝るべきかが判らないから、つい、疑問符付き。
『理由を理解しないで謝らない』
と返って怒らせる始末。
こめかみ、痛いです。
それからやっと体罰に飽きて、ゲンコツから解放されたときには、もう俺の緩い涙腺は涙を流す一歩前。
六道氏は何事も無かったかのように元の席に戻った。
……何なんですか、一体。
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