六道氏と雷牛
#01
あらゆる面で、随一を誇るイタリアン・マフィア、ボンゴレ。
そのボンゴレの守護者ともなると、本来は軍隊で言うところの将軍みたいなものだと思うのだけど、その更に上の(というか頂点の)ドン・ボンゴレが現場主義者で、自分で動いてしまうタイプの人の為か、守護者もそれに倣っている雰囲気がある。
結果、ボンゴレの守護者は常に世界中を駆け巡っていると言っても過言では無い程、アクティブな人達が揃ってしまっていた。
更に言うなら、その守護者の内、実に半数がボンゴレの人間とは言い難かったりする。
雲のヒバリさんは自身で別組織を持っているし、
霧のクロームさんはマフィア嫌いの六道氏と一心同体、
雷の俺に至っては別のマフィアのヒットマンと言う始末。
俺が言っちゃいけないんだろうけど、守護者の選択間違っていません…?
尤も、ドン・ボンゴレの言葉を借りると、視点が偏らないし、様々な立場や考え方をする人間が居る方が組織としては健全なのだと言う。
そんなドン・ボンゴレの考えにより、俺は今だに雷の守護者としての立場を頂いている。
俺の本籍もあくまでもボヴィーノで在ることを容認し、その一方で俺がボンゴレにも来やすい様に、ドン・ボンゴレはよくボヴィーノとの橋渡し役や簡単な仕事を割り振ってくださったりしている。
「こんにちわ〜!ボンゴレ〜!
この間、ご依頼を頂いていた調査の結果報告に参りました〜
……あっ!すみません!先客の方がいらっしゃったんですね」
ドン・ボンゴレの執務室への入室も守護者は常にフリーパス。
だから今日も何時もの習慣で入室すると、六道氏がそこに居た。
うわぁ、物凄く久し振りに遭遇した。(希少動物扱い)
「やあ、ランボ。元気そうだね。
…この間のって、北部地方の新興ファミリーの動向調査だよね」
ドン・ボンゴレは俺の謝罪に手を振りながら、俺の返答を促す。
一応、極秘調査だったんだけど、『話して良いよ』というドン・ボンゴレの言葉に、素直に従うことにする。
失礼します、と六道氏に頭を下げ言葉を繋いだ。
「はい、調査結果が出ましたので、ご報告します。
詳しくはこちらのメモリーカードに入れてありますが、組織の殆どがその地域の十代の子供達で、その子供達を手足にしているのが、2年ほど前まで悪質なクスリを売っていたファミリーの残党でした。
今はまだ、クスリのルートを安定確保するまでには至っていないようですが、徐々に勢力を拡大している状況にあります」
「……そう。同じ事を繰り返している、と見て良いんだね?」
「残念ながら。
……これはボンゴレのご依頼にはありませんでしたが、幹部格の人間全ての今後一週間のスケジュールも、併せて調査しておきました。
そちらも一緒にデータをファイルしてありますので、宜しければご確認ください」
「……うっわ。ランボ、完っ璧!これだけのデータを3日で仕上げたの!?ボヴィーノ凄すぎ」
ドン・ボンゴレは俺の渡したデータをパソコンで見て、そう言いながら六道氏を手招きして一緒に画面を眺める。
「…僕の予想通りでしたね…しかし本当に3日の仕事ですか?これが」
両者から手放しの絶賛を戴いてしまい、ちょっと照れてしまう。
今回の仕事はボヴィーノとして受けていたが、丁度、暇だったので全て俺が処理してしまった物だったから。
「ところで、資料によるとこのファミリーに制裁を考えるなら今日の夜が一番良さそうだけど。
………ランボ今日の夜は空いてる?」
「綱吉くん。ちょっと待ってください。この仕事はアルコバレーノを貸してくださいと言っておいた筈ですよ?」
ひどく慌ててボンゴレの言葉を遮る六道氏。
「だって『今日』となるとリボーンは無理。今、ロシアに居るから。
…骸もこれ、早急に片付けたいって言ってたじゃん。
ね、ランボどう?バイトしない?」
「はい!是非!
わぁい。これで猫のカリカリが買える♪」
「…カリカリ…?」
「あ、すみません。ペットフードのことです」
六道氏に睨まれて慌てて言葉を補正する。
普段、まるで接点が無いから、言葉遣いを気をつけないとこんなことになってしまう。
「綱吉くん……一応確認しますが、貴方のいう『バイト』はどんだけ安いんですか?」
「…失礼な。守護者割引で外注よりは安いけど、それなりだよ?
…ランボはさ、拾い物マニアなんだよ…一体、何十匹いるんだか」
小声で言葉を交わすボンゴレと六道氏…お二人とも、聞こえてますよ。
だってしょうがないじゃないですか、ランボさん家族多いんですもん。
頑張って稼がなきゃ。
「……その辺の事はまた改めて話すとして…骸、ランボと二人でよろしくね」
「あ、えっと…六道氏、よろしくお願いします」
今まで見ていたメモリーカードを六道氏に手渡しながら、そうボンゴレが言う。
六道氏は不満げではあるがそれを了承する形になった。
…当初、リボーンに依頼するつもりだったんだから、仕方ないか。
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