そして、僕らは秘密を共有する。
#07
昨夜、リボーンが俺の家に来てから丸一日。
リボーンの体調も大分回復したみたいで一安心。
食事も普通食を作っても良さそうなので、夕食は俺の好きな物を作ることになった。
………………。
ここに材料が揃っているのは、奇跡的なことなんだけど。
有るっていうことは、作るべきだと思うんだよね。俺は。
日本のママン、ありがとう!
ランボさんは頑張って例の品を作ってみたいと思います!
「…で?これは何だ?」
「お赤飯と鯛の尾頭付き。ちなみにもち米も小豆も塩も日本直輸入の逸品です」
「…ほぅ。その意味する所はなんだ?」
「オンナノコのお祝い」
「………………」
「無言でセーフティ外すのヤメテよ。
折角のお赤飯が本当に赤く染まっちゃうじゃん」
「遺言はそれだけか」
「うわぁ。恐いってば…ゴメンなさい。怒んないで」
リボーンてば本気で怒ってるし。
銃口が眉間に当てられています(セーフティは既に外されている)。
「…ちょっと前にね、おはぎを食べたくなって、日本のママンに作り方教えて貰おうと手紙を書いたら、レシピと材料を沢山送ってくれたの。
そのレシピの中にお赤飯もあって『お祝い事のときに作るのよ』って書いてあって…リボーンのアレって秘密だから日本のママンの代わりにランボさんが…と」
「……ふざけやがって」
俺の言葉に舌打ちでもしそうな程、表情を歪めリボーンはそう返してきた。
前にお赤飯を頂いたのは、5年前。
イーピンのお祝いの時に、日本に居合わせたんだよね。
当時、ランボさんは12歳。
その時には意味も判らない子供だったけど。
イーピンも俺も孤児だったから、日本のママンを本当の母親の様に慕っていた。
そのママンにお祝いをされて、イーピンはとても恥ずかしそうで、でもママンに心から喜ばれていることが判るから本当に嬉しそうで。
『日本のこのしきたりは正直、どうかと思っていたけれど、成長を喜ぶ親の心を直に触れる感じがとてもくすぐったいものね』
と言っていたイーピンの言葉は今でも忘れられない。
どうしても恥ずかしさが先に立ってしまうけれど、成長する喜びを共有するのって良いことだと思う。
「…ねぇ、リボーン?俺はふざけている訳ではないよ。
リボーンはさ、俺よりずっと大人で、色んな事を経験して来た人なのは知っている。
けど、その身体の年齢は俺より年下で、女の子なんだ。
アルコバレーノだったリボーンの身体が成長したことを喜ぶのは、そんなに可笑しいこと?
……大体さ、リボーンってば今回、俺の家で倒れたって自覚あるの?
冷たい雨に当たって熱を出して、おまけに貧血で倒れるほど無理をして。
いくら温厚なランボさんでも怒るよ?」
リボーン相手によく言ったもんだと思う。
でも、このタイミングを逃してリボーンが自分の身体を大事に扱わない癖を指摘できない方が俺としては嫌。
『だから、これは嫌がらせとお祝い両方だよ』
そう言葉を繋げば、流石のリボーンも言葉は無いようで。
静かに銃口は下ろされた。
「他にも蛤の潮汁、あと抹茶風味の水羊羹も作ったよ…好きだったろ?」
その言葉に返答は無いけれど。
リボーンは静かに、俺の作った料理に箸を伸ばす。
無言で空になった茶碗を差し出し、お代わりを要求するあたりがリボーンらしい。
……やれやれ。
今まで拾った生き物の中でピカイチで気難しいよ。
お代わりをよそい、
リボーンのために鯛を取り分けながら、そう思った。
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