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そして、僕らは秘密を共有する。
#05

朝も完全に空けた頃。
…リボーンが目覚めた。
…はっきり判る程に不機嫌です…。


予想はしていたけどさぁ……。
雨上がりの爽やかな朝だというのに、ランボさんのアジト限定でじっとり重たい空気で淀んでいるカンジ。

「……昨夜は迷惑を掛けた…悪かった…」

ぽつり、そう呟いたリボーン。
リボーンが謝ったよ?
俺に?
あんまりにもびっくりしすぎて返答に困る。

「…ランボ?どうした?」

あ、マジでフリーズしてました。
…っていうかさ、リボーンが俺のこと名前で呼んだ?
嘘!!初めてなんだけど!!

「…あ、いや、その…リボーン…が…無事で良かった…よ」

「…ああ」

「あ、そうだ!さっき食べたアイス以外にも果物もあるよ?
それともリゾットとかの方がいい?作るよ?」

「…いい。ランボ、取り合えず座れ」

このギクシャクした空間から逃げ出そうと、キッチンに向かおうとした俺の行動を察知して、リボーンに先手を打たれる。
イヤ〜!何かもうこのまま逃げたいよぅ。

「…ランボ。座れ」

二度目のリボーンの言葉に、渋々、ベッド横に置いてあった椅子に腰掛けながら、ふと疑問に思ったことを口にする。

「…俺の名前、何で呼んでくれるの?」

「俺は、恩のある人間に無礼な真似はしない」

リボーンらしい、その言葉。
何とも古いマフィアの象徴のような男。
仁義に厚く、礼を知り、裏切りを赦さない…そんな本来のイタリア・マフィアそのもののリボーン。

「…リボーンらしいね。」

「……俺は、俺でしかない。今も、昔も」

その言葉は『アルコバレーノ』であった過去を思うと含む意味はとても重い。
俺は幼かったから、『アルコバレーノ』の持っていた秘密は殆ど知らないのだけど。

アルコバレーノの呪いは『不老』。
成長することが無く、赤子のまま生き続ける。
そういったものだったと聞いている。

ちょうど俺がリボーンを追い、日本に来て1年も経たない頃に呪いが解け、それ以降は普通の子供と同様にリボーンの体は成長して行ったから、俺的にはその呪いそのものがピンとこない。

「…あのね、リボーンが秘密にしておきたいことを、無理に話す必要は無いよ?
俺は秘密を無理に聞きたいと思わないし、必要もないと思っているし」

「秘密と言うほどのものではい。ただ、話す機会が無いから話さないだけだ」

それでも、殆どの人が知らないだろう事柄を話すのは、リボーンにとっても苦行のようで、言葉は詰まる。

「…まず、経緯よりも事実から話そうか…この身体は女であること、その一方で俺の精神は男だということだ」

「…えっと…その………性同一性障害って呼ばれる障害を持っているということ?」

「良くそんな障害名、知っていたな。だが俺の場合は多少違う。
この精神と身体の乖離は、アルコバレーノの呪いに起因する、偶発的な理由に因るものだということ。
そして理由を自身で理解しているから、この身体を嫌悪したり、どうにかしようとは思っていない。
…まあ今までは第二次性徴前で男女の違いが殆どなかったから、というのもあるがな」

「…この事を知っている人は、どの位いるの?」

「アルコバレーノの呪いの事から全て知っているのはシャマルだけだ…あいつは主治医みたいなものだからな」

「ドクター・シャマルだけ?他のアルコバレーノの人達とかは?」

「…教えてはいない。薄々感づいている奴はいるかもしれないが、直接問われたことはない」

…そんなトップシークレット、なんでランボさんに話しちゃうんだよ?
そう思わず言葉を発しそうなって、思い止まる。

リボーンは『機会が無いから話さないだけ』と言った。
それは裏を返せば、他の皆にも話す用意はあるのだと、そういう事なのだろう。
今回、偶然にも俺が一番最初にその機会に恵まれた、ただそれだけの事…なんだと思う。

「…リボーンはさ、これからもずっと男として生活していくの?」

「…さあな…今はまだ決めていない…そうだな、取り敢えずはダメツナあたりに気付かれるまではこのままで行こうとは思っている」

ニヤリと笑うリボーン。
悪巧みというかサプライズ狙い?
自分の境遇すらも教え子をからかうネタにするってどうよ?
…俺、リボーンの教え子で無くて本当に良かったです…。






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