そして、僕らは秘密を共有する。
#04
取り敢えず。
リボーンご所望のアイスを渡し、傍に置いてあった椅子に座る。
…アイス、自分の分も用意しておいて良かった。
その後、一言も喋らないリボーン相手だとアイスでも食べていないと間が持たない。
黙々とアイスを食べるリボーンと俺。
…気まずい。
…非常に気まずい。
あもう!気まずいってば!
リボーン!読心術使えるんだろ!?
俺の困ってるの察してくれよ!?
「…五月蝿い…ちょっと待て」
アイスを食べながら、そう言うリボーン。
あ、本当に読心術使ってやがる。
「……いや、やっぱり…後でいい。
リボーンはそれ食べたら薬飲んで寝て。
そりゃ色々聞きたいけど、あんた病人だし、俺としても何かいろんなことがありすぎてキャパ超えてるカンジだし…」
深い溜息とともに、そう返すのが精一杯。
…何か疲れた。流石に。
「…悪かった…後で、話す」
本当に小声だったけど、リボーンはそう謝罪の言葉を言うと、薬を飲んで眠ってしまった。
マジで調子悪いんだなぁ…。
ここに来た時ほどではないけど、顔色はまだ青い。
しかし、このリボーンの体調不良は、風邪とアレ、どちらが主たる原因なのか…。
…風邪の方だったら良いんだけど。
流石のランボさんでも、女の子特有のアレまではどう看病していいか判りませんよ?
眠ってしまった相手に、問い掛けても答えが出る筈も無いけど。
…仕方ない。
暇だし、仕事でもして時間潰そう。
今の状況ではそれが一番建設的な行動のように思えた。
仕事といっても、あまり物音を立てたくないから、簡単な事務仕事に限定される。
あ、昨日ボスから預かった契約書の翻訳でもするかな?
期限はまだ先だけど、この位なら殆ど音を出さずに出来るし。
イタリア語を複数の言語に翻訳する仕事は、ボヴィーノでは主に俺に回ってくる。
なるべく同じ人間が翻訳するほうが齟齬が生じにくいというのが第一。
若い俺みたいのにも経験値を積ませようというのが第二。
…ボヴィーノって何故か理系の人が多くて、あんまりこの手の仕事に人気がないのが正直な所だけど。
カコカコとキーボードを叩きながら、たまにリボーンの氷嚢を替える。
そんなことを繰り返しているうちに、カーテン越しにも夜明けを感じる時間となっていた。
リボーンの熱も大分下がったし、顔色も大分良くなった…良かった。これ以上悪くなることは無さそう。
良かった、と思う反面、リボーンが回復した後のことを考えると憂鬱になる。
恐らくは殆どの人間には隠している秘密。
それをボンゴレの守護者ではあるけど、他ファミリーの人間である俺に知られた…ということ…。
……考えれば考えるほど、今日が自分の命日になりそうで泣きそうな気分になる。
ううっ!逃げ出したい!
逃げたいよぅ…ランボさんは死神の相手するほど強くないもん。
情けない事この上ないが、自身の実力を良く判っている常識人の俺は逃げることを真剣に検討してしまう。
でも。
横で眠っている可愛い女の子を見ると、そんな気分も萎える。
…どんなに可愛かろうが、この娘はリボーンなのに。
…リボーンなのに…可愛い…んだよねぇ。
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