そして、僕らは秘密を共有する。
なにもない休日
なんかさ、リボーンと二人で家に居るのって変な感じ。
相変わらずリボーンは月に一度、俺の家に来るけれど、意外と休みが重ならないから、こうやって一緒に居るのは珍しい。
まあ『居る』だけで、基本的にお互い不干渉だからあまり意味はないのだけれど。
今だって、リボーンは数学の専門書を読んでいて、俺は昼飯の準備しながら掃除とかしてるんだけど。
リボーンの横に積み上げられた本を眺めると…何て言うかさ…良く言えば多趣味?
学術専門書も異様に広範囲だし、それに混ざってマンガ雑誌や流行の児童小説、怪しげなオカルト本もある。
……ネット通販って便利だねぇ…これだけの本、全部届けて貰えるんだから。
…届け先を俺の家にするのは止めて欲しいけど。
あ、推理小説…発見。
これ、読みたいなって思っていたヤツだ。
リボーンに貸して貰おうかと思い、取り敢えず数ページ開いてみる。
………リボーン……。
性格悪。
登場人物紹介、犯人に丸印付けてるし。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「………暑い」
「……」
「………暑い…暑い…暑い」
「…あのさぁ…リボーン、煩いよアンタ」
『夏なんだから、暑いのは当たり前でしょ』
至極真っ当な事をほざく牛。
そんなテメエは上半身マッパで床に張り付いているだろうが。
「…るせぇ。大体なんでこの牛小屋にはクーラーが無いんだ」
「…牛小屋って言うな。しょうがないじゃん、このアパート古くて電力不足するんだもん」
ああ、そうな。
無駄にスペックの高いセキュリティシステムに電力取られて、室内の電化製品といえば照明を除けばパソコンと冷蔵庫だけだしな。
…テレビすら無いってどんな文明住宅だ。
「大体、天候操作はテメエの特技だろうが。温度を下げるなり雨を降らせるなりしろってんだ」
「………アンタさぁ…俺の技はあくまでも雷を俺に落とすだけ。雨雲呼んだりなんて出来る訳無いだろ?」
「っち!使えねぇ特技だな」
「いや、別にアンタの便不便の問題でないしさぁ…。
……そうだ、扇風機ならあるよ」
『だからその電力が無いんだろうが』
と言う間もなくアホ牛は扇風機を出しに行く。
…ツッコミも暑くて間に合わねぇ。
持ってきた扇風機を見れば、日本語のロゴが印刷されているもので…日本製じゃ電圧変換機まで必要になるシロモノじゃないか。
「ママンが俺の一人暮らしのお祝いにくれたヤツなんだ。
良いだろ?ちょっとクラシカルなデザインが可愛いよね。で、コンセントも入っていないから、当然動くわけは無いんだけど」
……『無いんだけど』って…動くのか?
コンセントを目で追えば…末端はアホ牛の手の中。
ああ、そうか……お前が電力源…と。
「ほ〜ら不思議♪スイッチを入れたら動くの〜」
……この阿呆牛はなんだってこんなに嬉しそうなんだ…?
しかし…何気にハイレベルな技だな。おい。
電圧等を考慮しないで、やみくもに電流を流せば機械は壊れるだろう。
問題無く動いている所を見ると、その辺を考えて力を使っていると言うことか?
…随分、力を使いこなす様になったようだ。
「少しは涼しい?これ今度の宴会芸にしようと思って開発したの」
これだけの技量を『宴会芸』だと?
……アホ牛。
やっぱりこいつはアホ牛だ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「リボーン、3時のおやつは何が良い?」
「ガレットを甘いソースで。そうだな…以前お前の作ったドリンクに入っていた蜂蜜がいい」
「…セージの蜂蜜ね。ところで、そば粉なんてレアアイテム、普通イタリアの独身男の家にあると思ってんの?」
「あるだろう?お前、料理の本でソバガキのページに付箋貼ってたし」
「……ソバガキ用に買ったんだもん…届いたばっかりなの何で知ってるかなぁ…」
「ああ、ついでにソバガキも食ってやる。後は白身魚の刺身に茄子田楽だ」
「…何でおやつの希望を聞いただけなのに、夕食メニューが決まるんだよ…?それに刺身に使える魚なんて冷蔵庫に無いんだけど」
「買ってくればいいだろう?」
「……誰が?」
「お前以外に居るのか?」
「……この暑い中…?
……行くけどさ……敢えて聞くけど、あんた何様?」
「知らないのか?」
「……敢えて言うなら最凶の居候様?」
「マフィア界最強の美少女ヒットマン様だ」
「…………なら、もう少し可愛い格好して俺の目を楽しませてよ…」
END
そんななにもない休日。
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