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川蝉の泣く音色





「茜ちゃんさ、最近に来てないんだ?」
「そうなんだよな。何か気に障るようなこと言ったのかな」

 バイト終わり、俺は雨雲の下で幼なじみの柚木金海と立ち話に花を咲かせていた。
 茜とは正反対のボーイッシュな柚木だが、一応は女である身、俺は彼女によく女のことを相談していた。
それに柚木は茜と顔を合わせたこともあるし、女心は女にしかわからないだろうから。

「何度かデートしたんでしょ?」
「まあそうなんだけど。初めてのデートは二人きり。その次は茜の父親とピクニックみたいな。
二人きりのときもあれば三人のときもあったな。
 半年の付き合いだが相変わらず何も進んでない」
「彼女、あんたのこと男として見てないんじゃない? ただの友達感覚とか」

 言われなくともそれくらいはそこはかとなく察してはいるが、もしかしたらただの父親思いな女かもしれない。
現に彼女の父親は病人だ。
 それを言うと彼女は、あたしにそう言って欲しかったのね、と腹を抱えながら笑いやがった。

「あ。そんな悲しいモテない男に朗報よ。いや朗報ではないかな。
 茜ちゃんって、髪の色脱色か何かしてるって言ってたよね? 珍しい髪の色の女の子がよくラブホテル街をうろちょろしてるって友達から聞いたことあるんだよね」

 もしかしたら茜ちゃんじゃない、その子、柚木は言うと急に険悪な表情になった。

「あのホテル街って売春が多発してるらしいんだよね」
「茜がしてるって言いたいのか」

 思わず睨み付けたことをすぐに後悔した。
 何も柚木はそこまで言っていない。

「わからないけど。とりあえず行ってみたら? 毎日のように見かけるって噂だから」
「ありがとう。でももしも……」

 茜が見ず知らずの男と歩いていたら何と声をかけたらいいかわからず、茜が売春に染まる姿を想像するだけでなんとも言えない気持ちになって、口ごもってしまう。


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あきゅろす。
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