川蝉の泣く音色
何故なら彼女はガードが固そうな見た目だからだ。
「じゃあちょっと待ってて。すぐ戻るから」
言って俺は厨房を抜け、業務員用の更衣室に急いだ。
毎日見ているけど、見飽きない彼女。
可愛らしくも凛とした美しい顔立ち、すらりと長い手足。
思えばいつも俺は彼女を目で追っていた。
一目惚れってやつかもしれない。
「もっとマシな服装で来ればよかったな」
バイトだからと適当な服で来たことを若干後悔したが、仕方ない。
フロアに戻ろうと厨房を抜けるとき、店長が昼飯にとサンドイッチをくれた。
「お待たせ。サンドイッチもらったからどっか行って食べようか」
「遠いところでもいいですか? 丘の上の川に行きたいんですけど」
丘の上の川? 車でも一時間はかかるのにどうしてわざわざ……。
幸運かどうかは微妙だが、俺がバイクで来ていたこともあり、俺たちは丘の上にある川へと向かった。
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