花火が綺麗だと、手を繋ぎながら見上げた夜空はどこかくすんでいたに違いない。汚染された空気を誤魔化すように、空高くで刹那の輝きを宿すそれは、やはり誤魔化すことは出来ても浄化は出来なかったらしい。
灰色の煙が靄のように漂う夜空は、まるで花火の美しさが嘘だったかのように思える。花火の死骸は漂い、花火はとうに消えている。
「別れよう」
恋なんて花火と同じだった。
刹那に花開き、散り、死骸として萎えた感情が残るだけ。
美しく咲き乱れていた瞬間を過ぎれば、あとは死ぬだけなのだ。
私の感情はとうに死んでしまっていて、死骸と成り果てていた。
「いつからだろうね。私はあなたを愛することをやめていた」
お互いを気遣いあっていた頃が花で、営みをやめなかった夜が愛の証なら、そんなもの、やっぱりとうの昔に死んでいる。
End.
10 0320